2015年4月9日木曜日

トラマールの1日1回製剤 ワントラム錠 100mg


トラマール(トラマドール塩酸塩)は選択的 μ オピオイド受容体作動作用及びモノアミン再取り込み阻害作用を有する薬剤で鎮痛作用を示します。


即放性の経口剤のトラマールは 2010 年 7 月に「軽度から中等度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」の効能・効果で承認され、2013 年 6 月には「慢性疼痛」の効能・効果が追加されています。


2015年3月トラマドール塩酸塩を有効成分とする1回の投与で1日間鎮痛作用が持続する経口徐放性製剤として、ワントラム錠が承認されました。

経口持続性鎮痛剤(トラマドール塩酸塩1日1回製剤)「ワントラム®錠100mg」の製造販売承認を取得しました(日本新薬)
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/company_profile/news.php?id=2560



ワントラム錠は、なぜ1日1回投与でよいのか。


ワントラム錠は 1 錠中にトラマドール塩酸塩100 mg を含有する徐放性のフィルムコーティング錠です。

ワントラム錠には効果が長く続くような製剤の工夫がされています。

体の中で成分がゆっくり溶け出すように制御する添加剤を用いた内核と即放性の外層からなる二層構造です。

製剤が水と接触すると徐々に表面が膨張することにより薬剤を溶出し、徐放性を実現しています。



がん性疼痛及び慢性疼痛の新たな選択肢

トラマドール塩酸塩は、がん性疼痛に対する治療において WHO方式がん疼痛治療法の 3 段階除痛ラダーで第 2 段階に位置づけられている弱オピオイド鎮痛薬です。

がんの痛みからの解放―WHO方式がん疼痛治療法
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また、慢性疼痛に対する治療においては、第一選択薬の非オピオイド鎮痛剤や鎮痛補助剤では鎮痛効果不十分な非がん性慢性疼痛に対し最初から投与可能なオピオイド鎮痛剤として位置づけられています。




がん性疼痛の治療においては、決められた時間に徐放性製剤を投与し、用量調節や突然くる痛みに対しては同一成分の即放性製剤が適しているとされています。

同一成分の徐放性製剤と即放性製剤を目的に応じて使い分けることで、より良好な痛みの管理が可能となるとされています。

医療用麻薬適正使用ガイダンス作成検討委員会, 医療用麻薬適正使用ガイダンス, 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課, 2012
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/2012iryo_tekisei_guide.pdf




慢性疼痛に対するオピオイド治療においては徐放性製剤の定時投与が基本とされています。

Kalso E et al,(2003) Recommendations for using opioids in chronic non-cancer pain.Eur J Pain, 7: 381-386,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12935789



トラマドール塩酸塩製剤はすでに即放性製剤(トラマール)が、がん性疼痛及び慢性疼痛のいずれに対しても効能・効果を有する薬剤として承認を取得しています。


そして、即放性製剤と同様の有効性と安全性を有する1 日 1 回投与の経口徐放性製剤であるワントラム錠は患者さんの利便性の向上及び服薬アドヒアランスの向上が期待できます。

また、がん性疼痛治療においては用途に応じた即放性製剤との使い分けが可能となることから、がん性疼痛及び慢性疼痛のいずれの治療においても新たな選択肢になると考えられます。




△ワントラム錠 100mg

[効能・効果] 
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛

 疼痛を伴う各種癌
 慢性疼痛 

[用法・用量] 
通常、成人にはトラマドール塩酸塩として 100~300 mg を 1 日 1 回経口投与する。
なお、症状に応じて適宜増減する。
ただし、1 日 400 mg を超えないこ ととする。