2015年3月18日水曜日

肝臓病のかゆみ治療薬 ナルフラフィン塩酸塩 (レミッチ、ノピコール)



ナルフラフィン塩酸塩は東レ株式会社によって合成されました。
選択的κオピオイド受容体作動薬に分類されるお薬です。

レミッチというお薬がありますが、これはノピコールとまったく同じ成分のお薬です。
作っている会社は同じなのですが販売している会社が違うので名前が違っています。ややこしいですね。

レミッチ、ノピコールともに軟カプセル剤です。


血液透析患者さんの痒みや、慢性肝疾患患者さんの痒みに対して使用される薬です。

簡単に言うと、「痒み止め」です。



慢性肝疾患患者さんでは、痒みを訴える人が多くいるようです。
しかし、肝臓とかゆみの関係は十分に解明されていません。


一説にはμオピオイド受容体の関与している可能性が以下の理由によって示唆されています。


胆汁うっ滞の症状を呈する肝疾患でかゆみが生じることが多いとう報告があります。

蜂須賀淳一,肝疾患のかゆみ治療, MB Derma, 173: 21-26, 2010


胆汁うっ滞を伴う代表的な疾患である原発性胆汁性肝硬変患者さんの血液を調べてみると、かゆみを訴えていた患者さんほどβエンドルフィン及びエンドモルフィン-1 という物質の血中濃度が高値を示していました。

βエンドルフィン及びエンドモルフィン-1はμオピオイド受容体作動性の内因性オピオイドとして知られています。


胆汁うっ滞を呈する患者さんの痒みに対してμオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン及びナルトレキソンが有効であることが報告されています。

Bergasa NV, Alling DW. Talbot TL, et al: Effects of naloxone infusions in patients with the pruritus of cholestasis. Ann Intern Med 123: 161-167, 1995

Wolfhagen FHJ et al,Oral naltrexone treatment for cholestatic pruritus: A double-blind, placebo-controlled study. Gastroenterology, 113: 1264-1269, 1997

Terg R et al,Efficacy and safety of oral naltrexone treatment for pruritus of cholestasis, a crossover, double blind, placebo-controlled study. J Hepatol, 37: 717-722, 2002


また、原発性胆汁性肝硬変の患者さんにに限らず、肝炎や腹水を伴う肝硬変患者さんにおいても、μオピオイド受容体作動性の内因性オピオイドの血漿中濃度が高値であることが報告されています

Thornton JR et al,Plasma leucine enkephalin is increased in liver disease.. Gut, 30: 1392-1395,1989


ナルフラフィンの作用機序

ナルフラフィンは、κオピオイド受容体アゴニストです。

κオピオイド受容体アゴニストはμオピオイド受容体とは反対の作用を示します。

つまり、κ受容体を活性させると痒みに対し抑制的にはたらきます。

Pan ZZ,μ-Opposing actions of the κ-opioid receptor. Trends Pharmacol Sci, 19: 94-98, 1998


μ受容体とκ受容体はお互い、シーソーのようにバランスを取り合っています。

バランスが保たれていれば痒みは起きないのですが、バランスが崩れ、μ受容体の活性が強くなると痒みを生じます。



痒みがあるときに、ナルフラフィンを投与するとκ受容体の活性作用により、μ受容体との活性のバランスがとれかゆみが収まると考えられています。




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