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2015年1月31日土曜日

悪性黒色腫治療薬 ベムラフェニブ(ゼルボラフ錠)





悪性黒色腫は、メラニン産生細胞(メラノサイト)に由来する悪性腫瘍と考えられています。

メラノーマ(ほくろのがん) - 日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa12/


悪性黒色腫の発生には、遺伝的要因や環境要因などが複雑に関与しています。
悪性黒色腫における「がん遺伝子」というのが、最近の研究でわかってきました。

悪性黒色腫の約50%の人はBRAF V600変異という遺伝子変異がおきていることがわかってきました。


Nature 2002; 417: 949-54
http://www.nature.com/nature/journal/v417/n6892/full/nature00766.html





細胞が増殖するとき、細胞の外から細胞の中にある核へ信号が伝えられます。
その信号を伝える中継の役目をしているのがBRAFというタンパク質です。

正常な細胞では、BRAFが信号の伝達をコントロールして、細胞外上に増えないようにしているのですが、BRAFを作る遺伝子に異常が出てしまうと、BRAFが正常にはたらかなくなってしまい、細胞の増殖が制御不能になります。こうして、細胞がガン化してしまいます。


ベムラフェニブは、BRAF V600 変異型のセリン/スレオニンキナーゼを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。






ベムラフェニブを使える人の条件

ベムラフェニブは、BRAF V600 変異がなければ、効果はゼロなので、この変異のない人には使用することができません。毒にしかなりません。

BRAF V600 変異は病院で簡単に検査することができます。
癌組織からゲノムDNAを抽出し、BRAF V600 変異検出キットを用いてリアルタイムPCR法という測定方法により検出します。


手術によって切ることが出来る人は、手術を優先します。



安全性について

ベムラフェニブを使用した人に、新たに癌がみられたという報告があります。

癌の治療のために薬を飲んでいるのに、別の癌になってしまうというのは、なんとも言いがたいものがありますね。
早期に発見できれば、切除可能なものもあるので、皮膚の状態など注意しておく必要があります。

もし、有棘細胞癌(皮膚の扁平上皮癌)又は新たな原発性悪性黒色腫を早期に発見できた場合には、外科的切除等の適切な処置を行った上で、減量・休薬することなく治療の継続が可能です。


その他の副作用には
皮膚障害、過敏症、QT/QTc間隔延長、光線過敏症、肝機能障害、眼障害(ブドウ膜炎等)及び骨髄抑制があります。



その他の注意 空腹時にのみましょう。

この薬は脂によく馴染みます。そのため、食後に服用すると、食事の刺激で分泌された胆汁酸によって薬の溶解性が増し、消化管での吸収量が増加してしまいます。


食事の影響を避けるため、食事の 1 時間前から食後 2 時間までの間の服用は避けたほうが望ましいです。




[効能・効果]
BRAF 遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫

[用法・用量]
 通常、成人にはベムラフェニブとして 1 回 960mg を 1 日 2 回経口投与する。

[承認条件]
1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

[警 告]
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

[禁 忌]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

2015年1月26日月曜日

乾癬治療薬 コセンティクス皮下注(セクキヌマブ)





乾癬とは

乾癬は、炎症性の皮膚の病気です。
赤い発疹、表皮が盛り上がり、白いフケのようなものができます。

乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まって活性化しています。
毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。

また表皮の細胞が、健康な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わるので
生産が過剰な状態になっています。
過剰に生産された表皮の細胞は厚く積み上がり、
フケ(鱗屑)となってはがれ落ちていきます。


乾癬 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/


乾癬は症状により、

  • 尋常性乾癬、
  • 関節症性乾癬/乾癬性関節炎、
  • 滴状乾癬、
  • 乾癬性紅皮症、
  • 膿疱性乾癬

の 5 つの病型に分類されます。

尋常性乾癬は皮膚表面に局所的に現れます。、
関節症性乾癬は皮膚局所以外にに炎症性関節炎を伴う疾患です。

一般的な治療方法として、
軽症から中等症の患者に対しては、
副腎皮質ステロイド、ビタミン D3誘導体の外用剤及びこれらの併用療法、
中等症から重症の患者に対しては光線療法、光線化学療法及び
シクロスポリン、エトレチナート等による全身療法が行われます。

また、これらの既存治療で効果不十分な場合の治療薬として、
抗 TNFα 抗体製剤であるインフリキシマブ及びアダリムマブ並びに
抗 IL-12/23 抗体製剤であるウステキヌマブ
が承認されています。


乾癬の病態形成及び局所炎症の維持・増幅に、
炎症誘発性サイトカインである IL-17A が関与していると考えられています。


Di Cesare A et al,(2009) J Invest Dermatol, 129: 1339-1350
http://www.nature.com/jid/journal/v129/n6/full/jid200959a.html

Weaver CT et al,(2013) Annu RevPathol Mech Dis, 8: 477-512
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3965671/

Iwakura Y et al,(2011) Immunity, 34: 149-162
http://www.cell.com/immunity/abstract/S1074-7613(11)00050-1




セクキヌマブの作用機序

2014年に承認されたセクキヌマブ(コセンティクス)は
IL-17A に高い親和性で結合し、IL-17A が
IL-17 受容体に結合を阻害することにより、
その生物活性を中和することから、乾癬の治療薬として開発が進められた
新しい作用機序をもつ乾癬治療薬です。


IL-17A の主要な産生細胞であるヘルパーT17 細胞の生存及び
IL-17A 産生にはIL-23 が関与することが知られています。

Weaver CT et al,(2007) Annu Rev Immunol, 25: 821-852
http://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev.immunol.25.022106.141557


IL23によってヘルパーT17細胞の生存維持・増殖の誘導がおこなわれます。

ヘルパーT17細胞がIL-22とIL-17Aを産生して、
ケラチノサイトの増殖や炎症反応が高められます。

すなわち、
乾癬の病態形成には Th17/IL-23/IL-17A の経路が
重要な役割を果たすと考えられます。


セクキヌマブは、
IL-17A と IL-17RA との結合を阻害して、
IL-17A により誘発される炎症誘発の流れを断ち切ることで、
乾癬に対して有効性を示すと考えられています。





[販 売 名]
コセンティクス皮下注150mgシリンジ
コセンティクス皮下注用150mg

[一 般 名]
セクキヌマブ(遺伝子組換え)


[効能・効果]
既存治療で効果不十分な下記疾患
 尋常性乾癬、関節症性乾癬

[用法・用量]
通常、成人にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、
1 回 300 mg を、初回、1 週後、2 週後、3 週後、4 週後に皮下投与し、
以降、4 週間の間隔で皮下投与する。

また、体重60kg以下の場合、1 回 150 mg を投与することができる。




スマイルケア食の選び方と分類





関連:新しい介護食品「スマイルケア食」とは




スマイルケア食の分類


2015年1月24日土曜日

新しい介護食品「スマイルケア食」とは





これまでいわゆる介護食品とされてきたものは、
その範囲が明確ではありませんでした。

狭い意味で
噛むこと、飲み込むことが低下した方が利用する食品、
広い意味では
病気にまで至らない高齢者の方も含め幅広く利用される食品
を対象としていて、

介護食品を考える上でどこまでの範囲を対象としているのか明確ではありませんでした。
さらに数も多くどれを選んでよいのかわからない状態でした。


これでは、利用者に不便だということで、
2014年利用者の視点から捉え直す「新しい介護食品」の考え方が整理されました。

この「新しい介護食品」をスマイルケア食といいます。


新しい介護食品(スマイルケア食)情報(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo/jyouhou.html



スマイルケア食の考え方

今までですと「介護食品」は
「介護されている人が食べるもの」というイメージでした。

しかし、介護は必要としなくとも、
噛んだり飲み込んだりすることが苦手な方も
いらっしゃいます。
そのような方たちにも、手軽に手に取れる商品。
それがスマイルケア食なのです。

【対象者】
原則、在宅の高齢者や障害者の方であって、
  • 噛むこと、飲み込むことが難しく、栄養状態が良くない人
  • 噛むこと、飲み込むことが難しいけれど栄養状態は良い人
  • 噛むこと、飲み込むことに問題はないけれど栄養状態が良くない人

さらに、今は問題ないけれど上の3つに移行する恐れのある人も含みます。

【内容】
  • 単品としての加工食品(レトルト食品など)
  • 個々の食品が組み合わされた料理
  • 料理を組み合わしたもの(配食、宅食サービス、弁当)

【配慮すべき点】
  • 美しさ
  • QOL(生活の質)の向上
  • 低栄養の改善
  • 見た目の美しさ
  • 食べやすさ
  • 入手のしやすさ
  • 食べる楽しみ
  • コストへの配慮

【対象外】
  • 治療食、病院食
  • 形状がカプセルや錠剤のもの




関連:スマイルケア食の選び方と分類



2015年1月18日日曜日

ベピオゲルとディフェリンゲルは同時に使えるの?





にきび(尋常性ざ瘡)の効能・効果を持つベピオゲルは、

同様に尋常性ざ瘡の効能・効果を有するクリンダマイシンリン酸エステル等の抗菌剤やアダパレン外用剤(ディフェリンゲル)との同時使用が考えられます。


海外で承認されている過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの配合剤そして過酸化ベンゾイルとアダパレンの配合剤の添付文書等には、過酸化ベンゾイルがクリンダマイシン及びアダパレンの吸収に大きく影響することは確認されていません。


BenzaClin(5%過酸化ベンゾイル及び1%クリンダマイシンを含有するゲル剤)
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2009/050756s034lbl.pdf
Epiduo(2.5%過酸化ベンゾイル及び0.1%アダパレンを含有するゲル剤)
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2013/022320s004lbl.pdf


以上から、
過酸化ベンゾイルと、外用抗菌やアダパレン外用剤を同時に使うことによる、相互作用が生じる可能性は大きくないと考えられます。


なお、ゲル剤は製剤学的理由により混合することはできませんので注意が必要です。


使い方の目安としては、先に過酸化ベンゾイルを塗り、クリンダマイシンは後に、あまり塗り広げないようにするのがよいでしょう。

(担当医師の考えもありますので、塗る順序は医師の支持に従ってください)



関連:にきび治療薬 過酸化ベンゾイル(ベピオゲル2.5%)



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にきび治療薬 過酸化ベンゾイル(ベピオゲル2.5%)






にきび(尋常性ざ瘡)の原因は

皮脂が多く出ること、
男性ホルモンの影響、
毛穴の入り口(毛包漏斗部)の角化異常、
アクネ菌の増殖

などがあります。



過酸化ベンゾイルは、
にきび、特に炎症を伴う赤ニキビ、の原因となるアクネ菌に対して抗菌作用を持っています。


米国皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドラインや
欧州皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドラインに
にきびに対する塗り薬として掲載されています。

米国皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドライン
J Am Acad Dermatol. 2007 Apr;56(4):651-63. Epub 2007 Feb 5.
http://www.jaad.org/article/S0190-9622(06)02346-2/pdf

欧州皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドライン
J Eur Acad Dermatol Venereol 26: 1-29, 2012
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1468-3083.2011.04374.x/pdf



2015年1月時点では過酸化ベンゾイルの塗り薬は40以上の国で承認されています。


米国皮膚科学会のガイドラインでは、にきびに対して塗り薬を使うことがスタンダードな治療とされています。

過酸化ベンゾイルは、レチノイド外用剤や外用抗菌剤とともに質の高いエビデンスがあるとされています。

さらに、推奨レベルA(質の高いエビデンスによる一致した裏付けあり)とされ、にきびに対する治療効果が証明された薬剤として認められています。

過酸化ベンゾイルは、抗菌剤とは異なる殺菌作用をもっています。

そのため、抗菌剤が効かなくなったアクネ菌の除菌や耐性菌を増やさないことを目的として、抗菌剤の塗り薬との併用が推奨されています。


欧州皮膚科学会のガイドラインでは、軽症から中等症の炎症性皮疹に対しては、過酸化ベンゾイルとアダパレンとの配合剤や過酸化ベンゾイルとクリンダマイシン外用剤との配合剤が最も推奨されています。

次に過酸化ベンゾイル、アゼライン酸又はレチノイド外用剤の単剤治療か、アダパレンと内服抗菌剤の併用治療が推奨されています。

非炎症性皮疹(黒ニキビや白ニキビ)に対しては、過酸化ベンゾイルはアダパレンに次に推奨されています。

このように、過酸化ベンゾイルは、欧米でもにきびの治療薬として承認され、スタンダードな治療薬として位置付けられています。



日本でにきびに使用できる薬は欧米に比べて少ないです。

過酸化ベンゾイルが承認される前は炎症性皮疹の治療といえば、アダパレン(ディフィリンゲル)、抗菌剤の塗り薬又は内服抗菌剤の使用に限定されていました。

アダパレンは、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」に対しては禁忌とされ、使用することができません。

また、皮膚の乾燥、皮膚不快感、皮膚が剥がれたり等の副作用が多く報告されています。

抗菌剤を長期間使用すると抗菌剤が効かない、薬剤耐性菌が出現すると問題視されています。

耐性菌発生の抑制の観点からも過酸化ベンゾイルの承認が望まれています。

K Nakase, et al(2012)First report of high levels of clindamycin-resistant Propionibacterium acnes carrying erm(X) in Japanese patients with acne vulgaris.J Dermatol 39: 794-796
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1346-8138.2011.01423.x/pdf




過酸化ベンゾイルの作用機序

過酸化ベンゾイルがアクネ菌に対しどのような機序で抗菌作用を示しているかはよくわかっていません。

一説によると、過酸化ベンゾイルが分解して安息香酸という物質になる過程で生じる酸化ベンゾイルラジカルやフェニルラジカルがアクネ菌の細胞壁や細胞膜、そしてDNAを破壊することで抗菌的に作用していると考えられています。

過酸化ベンゾイルには抗菌作用の他に、毛穴の入り口の角層を除去する作用があると考えられています。




安全性

臨床試験での有害事象の多くは、薬剤に塗った部分にかゆみや、炎症が生じるなどの軽度なものでした。

必要に応じて休薬等をすることにより回復しました。

しかし、アメリカにおいて米国食品医薬品局は、過酸化ベンゾイル又はサリチル酸を含む一部の
一般用のにきび治療薬に対して、重篤な過敏性反応に関する注意喚起を発出したことがあります。

この原因が有効成分の過酸化ベンゾイルやサリチル酸、基剤成分又は有効成分及び基剤成分の組み合わせのいずれによるものであるかは特定されていません。

FDA warns of rare but serious hypersensitivity reactions with certain over-the-counter topical acne products Drug Safety Communication

http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM402663.pdf
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm400923.htm



ベピオゲル2.5%

[効能・効果]  尋常性ざ瘡

[用法・用量]1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布する。


2015年4月上市予定

関連:ベピオゲルとディフィリンゲルは同時に使えるの?

    
    クリンダマイシン1%-過酸化ベンゾイル3%ゲル(デュアック配合ゲル)


   ベピオゲルやデュアック配合ゲルが効かない?

2015年1月15日木曜日

タケキャブとタケプロンのちがい



プロトンポンプのはたらきを抑えて胃酸の分泌を抑制する点はどちらも同じです


適応症と投与期間が違います。


タケプロンには吻合部潰瘍やZollinger-Elison症候群、非びらん性胃食道逆流症の適応がありますが、タケキャブにはありません。



また、タケプロンは逆流性食道炎の投与期間が8週までとなっていますが、タケキャブではそれが、4週間までに短縮されています。





酸による影響の違い




タケプロンは酸による活性化を受けなければ効果を発揮できません。



しかし、タケプロンはその酸によって効果を失ってしまいます。



そのため、タケプロンは長く留まることができません。



一定の効果を得るためにはある程度高いレベルで血中濃度が維持されていなくてはなりません。





一方、タケキャブは酸による活性化を必要としません。



さらに、タケキャブは酸に安定なので、プロトンポンプの存在する分泌細管に長時間存在することができます。



高濃度に集積するため、新たに分泌細管に発現するプロトンポンプをすぐに阻害することができます。





結果、早く強い効果につながるのです。


2015年1月6日火曜日

がん性悪臭の特効薬 ロゼックスゲル 0.75%(メトロニダゾール)





がん性悪臭

がんによる皮膚潰瘍は、乳癌、頭頸部癌、舌癌、歯肉癌、皮膚扁平上皮癌等のがん細胞が皮膚表面への浸潤してきたり、がんが皮膚へ転移したりすることによって起こります。

そして、皮膚潰瘍部から特有の不快なにおい(がん性悪臭)がしてくることが知られています。
がん性悪臭は、患者さん本人の精神的苦痛や生活の質を著しく損なう可能性も報告されています。


がん性悪臭の原因

皮膚潰瘍で増殖した嫌気性菌が産生するプトレシンやカダベリンが主な原因です。

がんの進行期における抗悪性腫瘍剤治療等により免疫抑制状態が続くことで、浸出液や出血を伴う皮膚潰瘍部位に嫌気性菌(Bacteroidesfragilis、Prevotella 属、Fusobacterium nucleatum、Clostridium perfringens、嫌気性球菌等)が感染・増殖すると考えられています。



がん性悪臭の軽減と嫌気性菌の消失には関連があることが報告されています。
国内外の診療ガイドライン等において、がん性悪臭に対する対症療法として、嫌気性菌に対する抗菌活性を有するメトロニダゾールの外用剤による処置が推奨されています。

Ashford R et al,(1984)DOUBLE-BLIND TRIAL OF METRONIDAZOLE IN MALODOROUS ULCERATING TUMOURS. Lancet, 1(8388): 1232-1233,
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673684917100

Berger AM et al, Principles and practice of palliative care and supportive oncology 3rd edition, 250-251, 2007
http://books.google.co.jp/books/about/Principles_and_practice_of_palliative_ca.html?id=LngD6RFXY_AC


WHO, Symptom relief in terminal illness: 95-96, 1998
http://whqlibdoc.who.int/publications/1998/9241545070_eng.pdf


イギリスでは、メトロニダゾール 0.75%含有ゲル剤(販売名:Metrogel0.75%)が「がん性皮膚潰瘍に伴う悪臭の軽減」の適応で承認されています。

日本では、ロゼックスゲル承認前は、メトロニダゾールの経口剤を用いて調製した外用剤が、院内製剤としてがん性悪臭に対して使用されていました。

院内製剤は法的位置付けがあいまいで経済性が高いとは言いがたく、安全性・有効性が確立されておらず、また労働安全の整備が不十分だったり、院内製剤の品質保証体制が不十分など多くの課題を抱えています。

そのため特定非営利活動法人 日本緩和医療学会及び一般社団法人 日本緩和医療薬学会から、メトロニダゾールの外用剤について開発の要望書が提出されていました。



メトロニダゾール外用剤の効果について

 乳がんによるがん性皮膚潰瘍がある方で感染があり皮膚潰瘍から悪臭のある患者さんに、ロゼックスゲルを 1 日 1~2 回(1 日 30g まで)、患部に適量を塗14日間塗ったところ、「においがない」「においはあるが不快ではない」と回答した人の割合は9割以上でした。


さらに、嫌気性菌は検出されませんでした。



ロゼックスゲル 0.75%

[効能・効果]
がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減

[用法・用量]
症状及び病巣の広さに応じて適量を使用する。
潰瘍面を清拭後、1 日 1~2 回ガーゼ等にのばして貼付するか、
患部に直接塗布しその上をガーゼ等で保護する。

[承認条件]
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。



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