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2014年12月27日土曜日

非定型抗精神病薬ルラシドン





ルラシドンは大日本住友製薬が創製した非定型抗精神病薬です。
海外での製品名は「LATUDA:ラツーダ」です。

2010年10月にアメリカで成人の統合失調症の適応で承認されています。

これまでにカナダとスイス、ヨーロッパ、オーストラリアでも承認を取得しています。
スイスでは武田薬品提携し2013年9月に発売しています。


日本では2015年統合失調症の適応で申請予定です。


ルラシドンの特徴


ルラシドンとその他抗精神病薬の受容体親和性

Ishibashi T, et al(2010)Pharmacological profile of lurasidone, a novel antipsychotic agent with potent 5-hydroxytryptamine 7 (5-HT7) and 5-HT1A receptor activity.J Pharmacol Exp Ther.;334(1):171-81.


非定型抗精神病薬のオランザピン、リスペリドン、クロザピンは
D2受容体よりも5-HT2A受容体に高い結合親和性を有することを特徴としています。


ルラシドンはドパミンD2受容体と5-HT2A受容体に高い結合親和性をもっています。

ルラシドンはドパミンD2受容体と5-HT2A受容体に対して同程度の親和性をもっています。

この点が、他の非定型抗精神病薬との違いであり特徴です。




ルラシドンは、5-HT7受容体、5-HT1A受容体、α2C受容体にも高い結合親和性をもっています。
これらの受容体に対する作用が薬の効果に関与していると考えられています。


また、ルラシドンは、D1受容体および 5-HT2C受容体に対して、結合親和性は高くありません。


さらに以下の受容体などには結合しないといわれています。

  • 5-HT3、5-HT4 受容体、
  • アドレナリン β1、β2 受容体、
  • アデノシン A1、A2受容体、
  • コレシストキニン CCKA、CCKB受容体、
  • GABA-A受容体、
  • AMPA受容体、
  • カイニン酸受容体、
  • NMDA 受容体、
  • グルタミン酸受容体、
  • ベンゾジアゼピン受容体、
  • ニコチン受容体、
  • オピオイド受容体、
  • シグマ受容体、
  • L 型 Ca チャネル、
  • N 型 Ca チャネル、
  • 5-HT 取り込み部位、ドパミン取り込み部位



ルラシドンはD2L受容体および 5-HT7受容体に対して、
競合的なアンタゴニストとして働きます。

また、5-HT1A受容体の部分アゴニストでもあります。

5-HT1A受容体アゴニスト、5-HT7受容体アンタゴニストは
不安やうつ症状に関与していることが報告されています。

つまり、ルラシドンも同様に、うつ・不安の改善といった作用があると考えられています。


Millan MJ (2000) Improving the treatment of schizophrenia: focus on serotonin (5-HT)1A receptors. J Pharmacol Exp Ther 295: 853-861.
http://jpet.aspetjournals.org/content/295/3/853.long

Shimizu H, et al (1987). Pharmacological properties of SM-3997: A new anxioselective anxiolytics candidate. Jpn J Pharmacol 45:493-500.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jphs1951/45/4/45_4_493/_pdf

Wesolowska A, et al (2006) Effect of the selective 5-HT7 receptor antagonist SB 269970 in animal models of anxiety and depression.Neuropharmacology 51: 578-586.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028390806001237

Sallinen J, et al (2007) Pharmacological characterization and CNS effects of a novel highly selective alpha2C-adrenoceptors antagonist JP-1302. Br J Pharmacol 150: 391-402. 


オランザピン、リスペリドン、クロザピンは H1受容体に高い結合親和性を示します。
オランザピンおよびクロザピンはムスカリン受容体に対しても結合親和性を持っています。

しかし、ルラシドンは他の第二世代の抗精神病薬と異なり、
H1受容体、ムスカリン受容体に対して結合親和性をもっていません。

5-HT2C受容体に対しても結合親和性は高くありません。


非定型抗精神病薬には体重増加作用という副作用が知られています。
この副作用にH1受容体、5-HT2C受容体が関与していると考えられています。


Reynolds GP, et al (2006) The 5-HT2C receptor and antipsychotic-induced weight gain ? mechanisms and genetics. J Psychopharmacol 20(4 Suppl): 15-18. 


ルラシドンがこれらの受容体に対し、結合親和性が低ことは、
体重増加の副作用が少ないと考えられます。

この点は、近年の臨床試験の結果において確認されています。

Meyer JM, et al (2009) Lurasidone: a new drug in development for schizophrenia. Expert Opin Investig Drugs 18: 1-12. 



また、ムスカリン M1受容体拮抗作用は認知障害との関連が懸念されています。
特に高齢者などで特に重篤な問題となる可能性があります。

ルラシドンのムスカリン受容体に対し親和性を有していない点は、
高齢者にも投与可能な抗精神病薬として期待されています。


ルラシドンはα1受容体に対する結合親和性は高くありません。、
そのため、α1受容体を介した起立性低血圧などの副作用(ふらつき)は
ほとんどないと考えられています。



抗精神病薬による錐体外路症状(extrapyramidal symptoms, EPS)は、
黒質線条体ドパミン神経を介して惹起されると考えられています。

ハロペリドールのような定型抗精神病薬でリスクが高いといわれています。

ルラシドンはクロザピンと同様に、非定型抗精神病薬であり
定型抗精神病薬と比べて EPS 発現リスクは少ないと考えられています。

また、
5-HT1A受容体アゴニストが、D2受容体アンタゴニストによるカタレプシー惹起作用を
軽減したとの報告があることから、

5-HT1A 受容体に部分アゴニストとして働くルラシドンには EPS の軽減作用も
併せ持つのではと期待されるています。



ルラシドンの安全性について

ルラシドンは、他の非定型抗精神病薬の場合と同様の副作用リスクを有しています。

臨床試験で多くみられた副作用は
アカシジア、傾眠、鎮静、吐き気、不眠、嘔吐でした。

アカシジア、傾眠やめまいの発生率は用量依存的に増加しました。

また、ジストニア、振戦、パーキンソンおよび唾液分泌過多などの
錐体外路症状(EPS)も用量依存的に増加する傾向にありました。
これらの有害事象は、ルラシドン120mg/日投与群で最も高い頻度で発生しています。

EPSの発生率は、ハロペリドール10mgよりも少ないという報告もあります。

吐き気や嘔吐はルラシドンで特徴的な副作用です。

血中脂質、グルコースおよびHbA1cに対する影響はほぼ無いか、限定的だといわれています。


Latuda Assessment report(EMA)


Latuda Medication Guide(FDA)

2014年12月18日木曜日

難病の患者に対する医療等に関する法律



2014年5月30日付で
「難病の患者に対する医療等に関する法律」が公布されました。

一部の規定を除き、2015年1月1日より施行されます。

これまで、難病患者に対する医療費助成は、
法律に基づかない特定疾患治療研究事業として実施されてきました。

「難病の患者に対する医療等に関する法律」により
その費用に消費税の収入を充てることができるようにするなど、
公平かつ安定的な制度が確立されました。

さらに基本方針の策定、調査及び研究の推進、
療養生活環境整備事業の実施等の措置を講じたものになります。


現行の特定疾患治療研究事業においては
56疾患が医療費助成の対象となっていましたが
新しい難病医療費助成制度では約300疾病へ対象疾病が拡大されます。

まず、2015年1月1日から、指定難病110疾病が対象となります。

さらに、指定難病が検討され、2015年夏から残りの疾病に関しても
医療費助成が開始される予定です。


新しい難病医療費助成制度により受給者数も約78万人(平成23年度)から
約150万人に上ると試算されています。



新しい難病医療費助成制度では、これまでと大きく変更される点があります。






患者さん

難病認定を受けられた患者さんは、
都道府県から医療受給者証とあわせて「自己負担上限額管理票」が交付されます。

患者さんは難病治療のたびに、
医療受給者証と自己負担上限額管理票を病院や薬局へ持参します。
そこで、その機関が徴収した額を各機関において管理票に記入してもらいます。

自己負担上限額に達した場合は、その月においてそれ以上の自己負担がなくなります。


自己負担の累積額が月間自己負担上限額まで達した場合には、
その旨をその時に受診した指定医療機関に確認してもらいます。









詳しくはお住まいの市町村窓口へお問い合わせください。

難病患者支援(東京都福祉保健局)


医療機関

薬局

医療受給は、都道府県知事の指定を受けた
指定医療機関における医療のみが対象となります。

これまで、委託契約を締結していた薬局も、
改めて指定医療機関の指定を受けていただく必要があります。

また、医療費の自己負担の制度が変わりますので、
これまでは契約がなかった薬局でも指定を受けることが必要となる場合があります。


指定の要件
  • 保険薬局であること。
  • 次の欠格要件に該当しないこと。
①申請者(役員も含む。)が、禁固刑以上の刑に処せられ、その執行を受けることがなくなった日を経過していない。 
②申請者が、児童福祉法その他国民の保健医療に関する法律により罰金刑に処せられ、その執行を受けることがなくなった日を経過していない。等
申請手続き
各都道府県薬剤師会及び市区町村窓口までお問い合せください。





病院・診療所

医療受給は、都道府県知事の指定を受けた
指定医療機関における医療のみが対象となります。

指定の要件

難病指定医:(新規申請用及び更新申請用の診断書のいずれも作成可能です。)
以下の(1)(2)の要件を満たした上で、(3)又は(4)のどちらかを満たすこと
(1) 診断又は治療に5年以上従事した経験を有すること 
(2) 診断書を作成するのに必要な知識と技能を有すること 
(3) 学会が認定する専門医の資格を有すること 
(4) 指定難病の診断及び治療に従事した経験があり、今後、知事が行う研修を平成29年3月31日までに受ける意思のあること

協力難病指定医:(更新申請用の診断書のみを作成可能です。)
以下の(5)(6)(7)の要件を満たすこと
ただし、(6)(7)の内容は、難病指定医の(2)(4)の内容とは異なる予定です。
(5) 診断又は治療に5年以上従事した経験を有すること 
(6) 診断書を作成するのに必要な知識と技能を有すること 
(7) 知事が行う研修を修了したこと


医療機関や医師の指定医療機関(6年ごとの更新)・
指定医(5年ごとの更新)の申請手続きが必要となります。

「指定医療機関」では、対象患者の指定難病に係る医療を実施するとともに、
自己負担上限額を管理するため患者が持参する管理票に記入することになります。

また、対象患者の新規認定・更新認定に必要な診断書は「指定医」が作成します。








詳しい制度の内容や指定難病一覧は厚生労働省または難病情報センターの
ホームページを参照してください。



難病対策(厚生労働省)

難病情報センター

RMPを活用できない薬剤師は淘汰される





医薬品の安全性を確保するためには、市販後だけでなく、
開発段階から市販後までの全般にわたり
常にリスクを適切に管理する方策を検討することが重要です。

これを受け、医薬品のリスク低減を図るため、
「医薬品安全性監視計画」に「リスク最小化計画」を加えた
「医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)」が
2013年4月より導入されました。

RMP策定のための指針、様式、提出等の取扱いが厚生労働省より示されています。

RMPとは
RMPとは個別の医薬品ごとに、以下の3つをまとめて文書化したものです。
①安全性検討事項  
 重要な関連性が明らか、又は疑われるリスクや不足情報を特定する。 

②医薬品安全性監視活動  
 市販後のリスクについて情報収集活動を行う 

③リスク最小化活動 
 医療関係者への情報提供や使用条件の設定等の医薬品のリスクを低減するための取り組み。


「医薬品安全性監視活動」と「リスク最小化活動」には、
通常の活動と追加の活動の2種類があります。

通常の活動とは、
全ての医薬品に共通して製造販売業者が実施する活動のことです。
具体的には、副作用情報の収集、添付文書による情報提供等を指します。

追加の活動とは、
医薬品の特性を踏まえ、特定の医薬品に実施される活動のことです。
市販直後調査、使用成績調査、製造販売後臨床試験、
適正使用のための資材による情報提供等を指します。




RMPは、医薬品の開発段階、承認審査時から市販後の全ての期間において、
ベネフィットとリスクの評価・見直しを行うものです。

これを薬剤師が活用することで
これまで以上に明確な見通しを持った市販後の安全対策の実施が可能となり、
薬物治療の安全対策をより質の高いものとすることが期待されています。

医薬品リスク管理計画書記載事例(医薬品医療機器情報機構)



RMPを情報源として活用する
RMPには目新しい情報が記載されているのではありません。

リスクとその対策が整理された情報源なのです。



これまでは、添付文書やインタビューフォーム、
承認審査結果報告書などを照会しなければ分からなかった情報が
RMPには実在するリスクとして特定されています。

また、臨床試験の結果から薬理学的な根拠を踏まえ
プラセボと実薬群でのリスク頻度と潜在的なリスクが明示されています。

つまり、RMPから薬剤師は効率的にリスクを把握できるのです。

また、医薬品情報を収集しリスクを評価してきた薬剤師にとっては
RMPによって自らが導き出した答えの確認ができるのです。

薬物治療のベネフィット・リスクバランスを最適化するための情報を
RMPから読み取る薬剤師が今後求められてくるでしょう。



チーム医療で活かすRMP
あなたの薬局は、新しい薬が処方されたらそれっきりになっていませんか?

薬局内で新規採用品をどのように使うか話しあいましょう。

この話し合いにRMPが役立ちます。

RMPを使って具体的な安全対策を立案するのです。

近年、多くの薬剤師の活躍により
在宅チーム医療の一員として薬剤師も認められるようになってきました。

この在宅チーム医療における薬の安全対策の立案に薬剤師は
もっと積極的になるべきです。

対策が必要なリスクに対しては、
使用制限、定期的な検査、患者教育など推奨される事項を医師に提案します。

チームミーティングの場でリスク管理について話し合います。

チームでリスク管理をフォローアップし、
医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャー、栄養士などが協力して
プランを立てて安全対策を実践していきます。

安全対策を以前のように医師個人の努力や頑張りで担う時代は終わりました。

ミスが起きれば医師個人が責任が問われるので心理的・身体的負担が大きく
やがては医療崩壊が起きるからです。

医療の質を保つためには、在宅医療チームでマネジメントしていくことが重要です。



2014年12月11日木曜日

カンデサルタン2mgと12mgの薬価は、先発品の50%ではないのか



2014年12月12日
AG(オーソライズドジェネリック)以外のブロプレス後発品が
薬価収載されました。

新規後発品の薬価算定方式は、
初めて後発品が収載される場合においては

先発品の60%もしくは、
10品目を超える場合には先発品の50%の薬価となります。

今回収載されたカンデサルタン製剤は
先発品のブロプレス8mgの薬価は135.60です。

10を超える品目が収載されました。

したがいまして、カンデサルタン8mgの薬価は
先発品の50%ですので、67.80となります。





しかし、表を見てお分かりのように
2mgと12mgは対薬価費が50%以下となっています。

なぜなのでしょうか、


それは、「規格間調整」が適応されたからです。


後発医薬品のある先発医薬品とは



後発医薬品の置換え率の計算には以下の式を使用します。

後発医薬品の数量シェア(置換え率)
=〔後発医薬品の数量〕/(〔後発医薬品のある先発医薬品の数量〕+〔後発医薬品の数量〕)


「後発医薬品のある先発医薬品」や「後発医薬品」は
何が該当するのでしょうか。

これらの分類は誰が決めるのかというと
厚生労働省が決めます。

厚生労働省のホームページにすべて掲載されています。

調べ方を紹介いたしましょう。


まず、厚生労働省の該当ページにアクセスします。





ページの下の方に
「後発医薬品のある先発医薬品」や「後発医薬品」の解説が書いてあります。

そして、医薬品リストのExcelファイルやPDFファイルのリンクが有ります。




各先発医薬品における後発医薬品の有無及び後発医薬品について、
1:後発医薬品がない先発医薬品 

2:後発医薬品がある先発医薬品 

3:後発医薬品

として分類しています。


1や2、3の分類の番号は医薬品リストの
「各先発医薬品における後発医薬品の有無に関する情報」に記載してあります。
(下図の赤い部分)
リストの備考欄には「後発医薬品がない先発医薬品」が
「後発医薬品がない先発医薬品」に変わるタイミングが記載してあります。


このリストは、薬価収載の度に更新されます。


後発医薬品の置換え率の計算には「2」と「3」を使用します。

後発医薬品の数量シェア(置換え率)
=〔3で分類される品目の数量〕/(〔2で分類される品目の数量〕+〔3で分類される品目の数量〕)



「後発医薬品のある先発医薬品」が増えるタイミング

2014年12月10日水曜日

こどもがRSウイルスに感染したら





RSウイルスはカゼのウイルスだった!

RSウイルスは、冬に流行するカゼの原因となるウイルスの一つです。
昔から存在していましたが、見つけることができませんでした。
近年、検査技術が発達してきたため、感染がわかるようになったのです。

大人や小学生以上のお子さんが感染しても単なるカゼで終わることが多いです。

しかし、乳幼児では悪化すると肺炎や細気管支炎を起こす可能性があります。
入院が必要になることもあります。

また、1度かかっても免疫がつきにくいので
何度もかかってしまいます。


重症化しやすい人
  • 生後6ヶ月以下の赤ちゃん
  • お年寄り
  • 心臓や肺の病気を持っている人
  • 免疫力が弱まっている人  など


RSウイルスに感染するとでてくる症状

  • 喉の痛みや腫れ
  • 鼻水、鼻づまり
  • 発熱(38~39℃)
  • ゼイゼイ、ヒューヒュー息苦しい
  • 急性中耳炎

カゼに似た症状から始まります。
悪化すると肺炎や細気管支炎になることがあります。

高熱、咳がひどい息苦しそうなどの
症状がある場合は早めにお医者さんの診察を受けましょう。



RSウイルスはどこからやってくるのか

RSウイルスはどこにでもいます。
寒く、乾燥してくると感染しやすくなります。

飛沫感染
くしゃに、せきから唾液が飛び
それを吸い込むことで伝染ります。

接触感染
唾液や鼻水などがついたものを触ることで伝染ります。



RSウイルスの検査

RSウイルス感染症は症状だけでは
他の感染症と見分けがつかない場合があります。

鼻の奥を綿棒で拭った液や鼻水を吸い取って検査をすることで、
病院ですぐにRSウイルスに感染しているかどうかを調べることができます

しかし、この検査は乳児など一部の患者さんしか受けることができません。





RSウイルスの治療

ウイルスをやっつける特効薬はありません。
症状を緩和させる対症療法だけです。
安静にして、自分の免疫力でウイルスに打ち勝つしかありません。

症状によって去痰薬(痰をのどから出しやすくする薬)や
気管支拡張剤(狭くなった気道を広げて呼吸をしやすくする薬)などを使います。

また、最近の感染が疑われる場合には抗菌薬を使います。
症状が重い場合には、酸素投与、輸液、ステロイド投与などを行います。





RSウイルス感染症が重症化しやすい

早産児や、生まれつき呼吸器や心臓に病気を持っている赤ちゃん、
2歳以下の免疫不全症やダウン症の赤ちゃんへは
重症化を防ぐための注射薬を投与することができます。



こどもがRSウイルスに感染したら何をしてあげるのがよいか。

室内の湿度を保つことが大切です。
空気が乾燥しないように注意しましょう。

安静と水分補給が重要です。

呼吸が苦しそうなときは背中をやさしくたたいたり、
からだを起こすように抱っこしてあげてください。

母乳やミルクをあまり飲まない時は1回量を少なくして
何回にも分けて飲ませましょう。

飲んだ量やおしっこの回数をメモしておくと
診察時の参考になります。


ゼイゼイ、ヒューヒューして息が苦しそうだったり
胸やおなかを動かしながら呼吸をしている。
顔色が良くない、母乳やミルクを飲まないなどの
症状があれば、お医者さんの診察を受けましょう。



RSウイルスの感染予防

石鹸による手洗い
うがい

これがテッパン!
お母さんが感染源になることがあります。
家族みんなで手洗い、うがい。




家族の中に既に感染している人がいるときは。

タオルや洗面器、食器の共用は避ける。
調理や食事の前、鼻をかんだ後などは手をしっかり洗う。
生後6ヶ月以下の赤ちゃんには風邪を引いている人を近づけないようにします。
赤ちゃんのお世話をする前には手をしっかり洗いましょう。
ドアノブや手すり、おもちゃなどは
できるだけこまめに消毒用エタノールなどで消毒します。


RSウイルス感染症に関するQ&A(厚生労働省)

ソフトサンティアを販売する眼科






ソフトサンティアは病院や診療所で処方する薬ではありません。
薬局やドラッグストアで購入する一般用医薬品です。

医療機関の受付で一般用医薬品を販売することはできません。


医薬品の販売制度(厚生労働省)


医薬品等の販売は医薬品医療機器等法で規定されています。


医薬品を販売するためには、
薬局開設又は医薬品販売業の許可が必要です。


許可等を取得すれば法律上は可能となりますが、
許可をとることはできるのでしょうか。

医療法人が行うことのできる業務の範囲が定められており、
その中に医薬品の販売業等は含まれていないため、
許可等を取得することは難しいと考えられます。


医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について 総第5号・指第9号 平成5年2月3日(厚生省健康政策局総務課長 通知)



先日、眼科を受診したところ、そこで、驚くべきものを目撃しました。

受付に「ソフトサンティア1本150円」のPOPがあるではないですか。
一応、保健所及び厚生局に通報しておきました。


ネット等で検索してみると、ソフトサンティアを処方されたというのをみかけます。


お医者さんも勘違いされている方も多く、ソフトサンティアは保険適応されていないだけで、医療機関で販売できると。

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/blog/meguro/201212/528339.html




ちなみに
コンタクトレンズやサプリメントは販売可能です。

医療機関におけるコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売について 平成26年8月28日(厚生省健康政策局総務課長 事務連絡)
医療機関においてコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売を行うことは、当該販売が、患者のために、療養の向上を目的として行われるものである限り、以前から可能ですので、適切に取扱われますよう、お願いいたします。


【補足】
ソフトサンティアの医院での販売は昔は可能でした。
平成21年6月1日に法律の改正があり販売方法が変わったため
販売できなくなりました。




医療の犯罪―1000人の医師の証言
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2014年12月8日月曜日

プロゲステロン経腟投与剤(ルティナス腟錠 100 mg)





ルティナス腟錠は、プロゲステロンを有効成分とする
外用黄体ホルモン剤です。
アメリカのフェリング・ファーマシューティカルズ社が開発しました。

日本国内では50万人近い人が不妊治療を受けられているといわれています。
生殖補助医療は、難治性不妊症に対する重要な治療法と位置付けられています。
生殖補助医療では排卵を誘発させるために調節卵巣刺激という方法を行います。
ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト又は
ゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニスト製剤を用いた
ホルモン管理による卵巣刺激法が最も一般的な方法です。

しかし、この方法は投与時に黄体機能不全が生じてしまいます。
そのため、プロゲステロンを投与して黄体補充を行う必要があります。
そうすることで妊娠率が向上することが期待されています。

調節卵巣刺激法 日産婦誌62巻 9 号

プロゲステロン経腟投与剤は注射剤に比べて、
標的臓器である子宮にプロゲステロンを効果的に投与できます。
さらに、患者さん自身により投与でき、痛みを伴わない等のメリットがあります。

ルティナス腟錠は
生殖補助医療における黄体補充に関する効能・効果で、
2014 年 6 月現在、アメリカ、イギリスなど36ヵ国で使用されています。



プロゲステロン
プロゲステロンは、卵胞から卵が排出された後に卵巣黄体から分泌されるホルモンです。
プロゲステロンは卵胞ホルモンの作用により増殖した子宮内膜に作用します。

プロゲステロンは内膜間質細胞を、
卵の発育に必要な物質を含んだ細胞に転換させるはらきをしています。

胚が子宮内膜に着床すると、
プロゲステロンのはたらきで内膜細胞をさらに膨大させ、
栄養豊富な脱落膜を形成させます。

その後、出産まで妊娠を維持させます。



プロゲステロンのはたらきについて以下の論文報告があります。

動物実験ですがプロゲステロンの皮下投与により子宮腺が発達しました。また、妊娠ラットの卵巣を切除後、プロゲステロンを皮下投与することにより、妊娠が継続されました。
Kumar N et al.(2000)Nestorone: a progestin with a unique pharmacological profile. Steroids 65: 629-636 
http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0039128X00001197

プロゲステロンが子宮筋の自動収縮力を抑制することが報告されています。Anderson L et al.,The effect of progesterone on myometrial contractility, potassium channels, and tocolytic efficacy. Reprod Sci 16:1052-1061 
http://rsx.sagepub.com/content/16/11/1052.long


生殖補助医療におけるプロゲストロンのはたらき
不妊治療には、排卵誘発、卵管手術、人工授精に加えて、
体外受精等の生殖補助医療が行われています。



生殖補助医療は不妊治療の重要な選択肢のひとつです。

生殖補助医療は難治性不妊症に対する治療法と位置付けられています。

近年、生殖補助医療で生まれてくる赤ちゃんが増えてきています。
2010年度には生殖補助医療による出生児数が
総出生児数の2.7%を占めるに至ったという報告があります。

齋藤英和ら、(2012)日本産科婦人科学会雑誌 64:2110-40


生殖補助医療における調節卵巣刺激では、
ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト又は 
ゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニスト製剤を用いた
ホルモン管理による卵巣刺激法が最も一般的です。

ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストにより
内因性黄体ホルモン(プロゲステロン)の放出刺激が抑制されるので、
卵巣からのプロゲステロンの放出は期待できません。

また、ゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストを使用した場合でも、
アゴニストを投与した場合ほど長期間黄体ホルモンは抑制されませんが、
妊娠維持に必要なプロゲステロンを産生するほどの
急速な黄体ホルモンの回復は期待できません。


このように生殖補助医療において、
治療上妊娠に関与するホルモン分泌の抑制管理を薬剤により行っています。
そのため、胚移植後の着床、妊娠の維持のためには、
外因性のプロゲステロンによるホルモン補充や
hCG(ヒト絨毛性性腺刺激)ホルモン投与による黄体の賦活化が必要です。


しかし、ヒト絨毛性性腺刺激投与による黄体賦活では 
OHSS(卵巣過剰刺激症候群) の発現が懸念されています。

そのため外因性プロゲステロンの投与が、
生殖補助医療における黄体補充療法として国内外で有用な治療法の一つとされています。


膣錠が承認される以前、国内で承認されているプロゲステロン製剤は、注射剤のみでした。

プロゲステロン注射剤による治療では、
治療を受けている女性が連日通院しなくてはなりませんでした。
これは時間的負担がとてもかかるものでした。
さらに連日投与による注射部位疼痛や神経損傷・筋短縮症の危険性等の
身体的負担を強いものでした。

中山アヤコら,(2005)中小病院における院内製剤の品質評価-プロゲステロン膣坐剤-  医療薬学 31(10):802-7

中山アヤコら,(2006)プロゲステロン膣坐剤の有効性と日内変動を考慮した投与設計  医療薬学 32:375-82, 2006


海外ではプロゲステロン経口剤も市販されています。
しかし経口剤では有効血中濃度を得ることが難しく、
注射剤や経腟投与剤と比べて着床率及び妊娠率が低いとの報告もあります。

Smitz J et al.,(1992)A prospective randomized comparison of intramuscular or intravaginal natural progesterone as a luteal phase and early pregnancy supplement. Hum Reprod 7:168-75,



ルティナス膣錠は、
1錠中に有効成分としてプロゲステロン 100 mg を含有する発泡性の腟錠です。

投与方法は1日2回または3回、専用のアプリケータを使って腟内に挿入します。

プロゲステロンの腟内投与では、
子宮内膜組織中プロゲステロン濃度が、
血清中プロゲステロン濃度より高値を示すため、
経口投与や筋肉内投与と比べて、
妊娠をより維持しやすい身体に近づけることができます。


Bulletti C et al.,(1997) Targeted drug delivery in gynaecology: the first uterine pass effect.HumReprod 12:1073-9,


腟内投与では、注射筋肉内投与と比べて頻回の通院が不要になります。
簡便で痛み我慢しないで済みます。
患者さんの時間的及び身体的負担を軽減することができます。

プロゲステロン経腟投与剤は不妊治療において高い有用性が期待できる製剤です。


安全性

卵巣過剰刺激症候群には注意しましょう。

生殖補助医療の調節卵巣刺激は多数の卵を得ることが目的でおこなわれます。
多発卵胞発育を起こさせるので、OHSSを発生しやすい状態になっています。
ルティナス膣錠が直接の原因かは不明ですが、
臨床試験での発生報告があります。

早期に発見して対応することが大切です。
薬による卵巣過剰刺激症候群は原因となった薬を中止することにより
改善することが多いので、
不妊治療中に
「おなかが張る」、
「はき気がする」、
「急に体重が増えた」、
「尿量が少なくなる」などの
症状に気がついた場合は、速やかに医師・薬剤師に連絡しましょう。 



生殖補助医療スケジュール例