以下の4つの項目が骨粗鬆症の診断や薬物治療の開始基準に用いられています。
- FRAX
- 骨密度
- 大腿骨近位部骨折の家族歴
- 既存骨折の有無と種類
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」から
骨折リスク評価ツールであるFRAXが骨粗鬆症の薬物治療開始基準に取り入れられています。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版
FRAX WHO骨折リスク評価ツール
FRAXは単独では採用してはいけない
FRAXは単独では採用されていない点に注意が必要です。
FRAXが用いられるのは、
まだ骨粗鬆症性骨折が発生していない段階であり
骨密度測定値が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の80%未満
である場合です。
つまり、骨密度を測定して「グレーゾーン」に該当した場合の
追加情報として用いられます。
その際のFRAXのカットオフ値は
骨粗鬆症性骨折の10年以内発生確率が15%とされています。
(脊椎骨折、大腿骨近位部骨折、前腕骨骨折、上腕骨骨折)
15%がカットオフ値とされる根拠は
複数の医療機関において、2006年のガイドラインに基づいて
薬物治療を受けている骨粗鬆患者の主要骨粗鬆症骨折確率が
約15%だったからです。
FRAXの数値は年齢に依存するところが大きいので
FRAXの使用は50歳以上75歳未満に限るとされています。
骨密度と大腿骨近位部骨折
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」では
骨密度がYAM80%未満である場合には、FRAXと並んで
「両親いずれかの大腿骨近位部骨折」という家族歴がある場合も
薬物治療を検討することを提案しています。
骨粗鬆症は骨強度の低下によって骨折リスクが上昇した状態であり
骨強度は7割が骨密度、残りの3割が骨質で決定されるといわれています。
骨粗鬆症の診断は骨折リスクの評価に基づくものであり、
骨密度の測定は骨粗鬆症の診断に必須なものです。
既存骨折の有無と種類
骨粗鬆症性骨折がまだ発生していない場合は、YAM70%未満の症例を骨粗鬆症と診断します。
一方で椎体骨折か大腿骨近位部骨折を既に起こしている場合には
骨密度の測定結果にかかわらず骨粗鬆症と診断します。
この理由は、骨折を有するということは骨密度とは独立した因子として、
骨折リスクを有意に上昇させるからです。
椎体骨や大腿部近位部以外に非外傷性骨折がある場合には、
骨密度がYAM80%未満の症例に限り骨粗鬆症と診断します。
日本骨代謝学会(2013)原発性骨粗鬆症の診断基準;Osteoporosis Japan vol. 21 no. 1