高濃度ビタミンC点滴療法が、
がん治療法の一つとして注目されています。
大量のビタミンCを点滴で投与する治療法です。
この治療法は、副作用が少ないことに加えて
一部の化学療法や放射線療法と併用が可能といわれています。
点滴療法研究会ホームページ
しかし、詳細な作用機序や、どのようながんに有効であるかは解明されていません。
臨床試験はまだ十分に行われていません。
リンパ腫などの悪性腫瘍に明らかに効果があるというレベルには
まだ到達していません(2014年)
日本では
東海大学の川田先生の研究室で臨床試験が実施されています。
再発悪性リンパ腫症例を対象に
高濃度ビタミンC療法の安全性と血中濃度の上昇が確認されています。
Kawada H,et al(2014)Phase I Clinical Trial of Intravenous l-ascorbic Acid Following Salvage Chemotherapy for Relapsed B-cell non-Hodgkinʼs Lymphoma.Tokai J Exp Clin Med.; 39(3),p.111-115
がんにビタミンCが効果があるのではないかと考えられた歴史は古く
1970年代に末期がん患者さんにビタミンCを
経口投与と静脈内投与が試みられています。
しかし、この研究では、効果が否定されました。
そして長い間歴史の闇に忘れ去られていました。
Moertel CG,et al(1985)High-dose vitamin C versus placebo in the treatment of patients with advanced cancer who have had no prior chemotherapy. A randomized double-blind comparison. N Engl J Med.312(3):137-41
近年、ビタミンCを点滴すると
経口投与した時に比べ70倍の血中濃度上昇がみられることが分かりました。
ビタミンCは高濃度になると
鉄などの微量な金属とフェントン反応を起こし過酸化水素が生成します。
鉄などの微量な金属とフェントン反応を起こし過酸化水素が生成します。
この過酸化水素が、ある種の腫瘍細胞を選択的に死滅させることが報告されました。
正常細胞は過酸化酸素の影響は受けません。
なぜかというと、正常細胞はカタラーゼという酵素を作り出し
過酸化水素を中和するからです。
一方、がん細胞の多くはこのカタラーゼが欠乏しているので
過酸化水素を中和できずに、細胞内ミトコンドリアや糖代謝が障害され、
細胞が死んでしまうと考えられています。。
Padayatty SJ,et al(2004)Vitamin C pharmacokinetics: implications for oral and intravenous use.Ann Intern Med.;140(7):533-7.
Chen Q, et al(2005)Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: Action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues.Proc Natl Acad Sci U S A. ;102(38):13604-9.
ビタミンCというと活性酸素を除去する抗酸化作用が
まず頭に浮かぶと思われます。
しかし、高濃度ビタミンC療法では、
ビタミンCが活性酸素を発生させるプロオキシダントとしての性質を利用したものなのです。
水野 芳春
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