2014年9月10日ゼリア新薬工業は一般用医薬品では日本初の
月経前症候群(PMS)治療薬「プレフェミン」を発売します。
ダイレクトOTC(要指導医薬品)です。
西洋ハーブのチェストベリーの乾燥エキスが有効成分です。
日本初の月経前症候群治療薬・西洋ハーブ医薬品「プレフェミンⓇ」(要指導医薬品)新発売のお知らせ【ゼリア新薬】
http://prefemin.jp(プレフェミン ブランドサィト)
チェストベリーというハーブをご存知でしょうか。
女性の病気に対する改善効果があるとして、欧州では古くから愛用されているそうで、
欧州薬局方などの海外の公定書に収載されています。
チェストベリーはチェストツリーという植物の実です。
チェストツリーはくまつづら科の植物で和名をイタリアニンジンボク、
セイヨウニンジンボクといいます。
生薬名はケイレキ(荊瀝)です。
学名はVitex agnus-castus L.です。
また、挽いた種子を修道院で香辛料として使用していたことからMonk's pepperの別名もあります。
チェストベリーの成分と作用
小さい赤黒色の実で、乾燥して用います。
α-pinen、β-pinen、cineol、limonenなどの精油成分を多く含みます。
フラボノイド類 、配糖体、苦味質、アルカロイドも含みます。
試験管の中での研究ですが、プロラクチンの分泌を抑制するという報告があります。
Bundesinstitut fur Arzneimittel und Medizinprodukte(1998)The Complete German Commission E Monographs: Therapeutic Guide to Herbal Medicines. Thieme Medical Pub.
チェストベリーの安全性
妊娠中、授乳中の摂取は危険です。
適切に用いればおそらく安全と思われます。
但し、飲み続けるにしても3ヶ月から1年半くらいまでに留めましょう。
副作用は100人に2人から5人程度に起こるといわれています。
胃腸の不調、頭痛、吐き気、痒み、蕁麻疹、発赤、ニキビ、月経外出血の報告があります。
摂取中の脱毛、疲れ、動揺、頻脈、口渇も報告されています。
ほてりや乳房痛、月経周期の変化、筋腫の成長、体重増加もまれに報告されています。
チェストベリーはドパミンアゴニストと考えられ、プロラクチン分泌を抑制すると考えられています。
妊婦さんには、子宮収縮作用があるので、妊娠全期において使用を避けたほうが良いでしょう。
授乳中の方は母乳分泌に対する効果、副作用の詳細は不明なので、解明されるまでは
使用を避けた方がよいでしょう。
渡邊昌日本語監修(2007)ハーブ&サプリメント―natural standardによる有効性評価.産調出版株式会社.
Schellenberg R.(2001)Treatment for the premenstrual syndrome with agnus castus fruit extract: prospective, randomised, placebo controlled study.BMJ.20;322(7279):134-7.
チェストベリーとくすりの飲み合わせ
チェストベリーはドパミンアゴニストと考えられるので、
ドパミン拮抗薬との併用で、その作用を弱めることが考えられます。
ドパミンアゴニストとの併用では作用を強めることが考えられます。
経口避妊薬やホルモン代替療法、
または同様の作用があるハーブ・サプリメントとの併用で、
それらの作用に影響を与えることが考えられるます。
Meier B et al,.(2000)Pharmacological activities of Vitex agnus-castus extracts in vitro.Phytomedicine. ;7(5):373-81.
女性特有の病気の改善
月経前症候群に対してチェストベリー摂取で改善が見られるようです。
PMSの症状 、とくに乳房の痛みや圧痛、むくみ、便秘、イライラ、
気分の消沈や変調、怒り、頭痛がチェストベリーを飲むことで改善したという報告があります。
改善がみられるまでは4~12週間かかるとされています。
月経前症候群の女性128名を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験も行われています。
チェストツリー抽出物を40滴/日、月経6日前から月経までの間、6月経周期摂取させたところ
頭痛、落ち込み、胸の張りなどの症状が軽減したという報告があります。
Zamani M et al,.(2012)Therapeutic effect of Vitex agnus castus in patients with premenstrual syndrome.Acta Med Iran. ;50(2):101-6.
月経困難症に対してもチェストベリー摂取で改善が示されています。
続発性無月経、頻発月経、月経過多といった
月経異常を正常化したという知見についても報告があります。
プロゲステロンが少ない人が最も効果的なようです。
有意な改善がみられるまでに通常少なくとも8週間は要するようです。
無月経の人20人に果実抽出物を40粒/日与えて6ヶ月間追跡調査したところ、
研究を完了した15人中10人で月経周期が回復したという報告があります 。
Pharmacist’s Letterエディターズ 編(2007)健康食品データベース. 第一出版
マイケル マクガフィンら(2001)メディカルハーブ安全性ハンドブック.東京堂出版
なお、更年期障害には効果はないようです。