かぜの原因ウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。
ウイルスには抗生物質も効きません。
基本的に、自分の免疫力で自然に治るものです。
安静や水分・栄養を十分にとりましょう。
せき、鼻水、のどが痛い、熱があるなどの症状を
和らげるために薬を使います。
咳止め薬
咳止めは、異物が入ったら咳を出すという自然な反射まで
低下させる可能性があります。
使うのであれば必要に応じて短時間にすべき薬です。
デキストロメトルファン(メジコン)
グアイフェネシン(フストジル)が推奨されています。
一方、コデインはプラセボと差がなく効果もないので勧められません。
sexton DJ,et al. The common cold in adults: Treatment and prevention.uptodate;
Schroeder K , et al. (2012)Over-the-counter (OTC) medications for acute cough in children and adults in ambulatory settings.Cochrane Database Syst Rev.;(4):CD001831.
のどに、粘度の高い痰などの分泌物があると、咳を誘発するので
分泌物の粘度を減少させ、排出を簡単にする
ブロムヘキシン塩酸塩(ビソルボン)
アンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン)
カルボシステイン(ムコダイン)
を併用することもあります。
鼻水、鼻づまりに処方される薬
かぜによる鼻症状に対しては、
イプラトロピウム(アトロベント)や
クロモグリク酸(インタール)
の点鼻が有効とされています。
抗ヒスタミン薬は効果があまり期待できない割に
喉の渇きや眠気などの副作用がおおく、推奨されません。
鼻づまりに対しては、
ナファゾリン硝酸塩(プリビナ)
オキシメタゾリン塩酸塩(ナシビン)
塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン配合剤(コールタイジン)
などの血管収縮薬の点鼻投与が即効性もあり有効です。
しかし、使い続けると、リバウンドを来し
重症化することもあるので1日2~3会の使用に留めましょう。
解熱剤
解熱剤として安全性が最も高く、推奨されるのは
アセトアミノフェン(カロナール)です。
小児や妊婦への投与も問題ありません。
総合感冒薬(いわゆる風邪薬)
風邪の症状を和らげるための薬剤の配合剤として
PL顆粒や
ペレックス顆粒があります。
PL顆粒は
サリチルアミド 270mg(解熱薬)
アセトアミノフェン150mg(解熱薬)
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩13.5mg(第一世代抗ヒスタミン薬)
無水カフェイン60mg(眠気、だるさ改善薬)
が配合されています。
お分かりのように、咳止めは入っていません。
そのため、咳症状がひどい患者さんには適しません。
ペレックスは
第一世代抗ヒスタミン薬がクロルフェニラミンマレイン酸3mgで
無水カフェインは30mgでPL顆粒の半量になっています。
漢方薬
東洋医学の考えでは、かぜは、
急性期(発熱や、鼻や喉の局所症状がでてくる)
遷延期(全身症状は軽快して、痰がよくでて消化器症状がでる)
回復・予防期
の3つに分けて処方を考えます。
急性期
第一選択薬として麻黄剤と総称される以下の4方剤のうちどれかを使います。
- 麻黄湯
- 葛根湯
- 小青竜湯
- 麻黄附子細辛湯
早く治ることを期待して、治療開始日には
1回量を2~3時間間隔で服用します。
できるだけ暖かくして安静に寝ているようにしましょう。
麻黄剤に含まれるエフェドリンは局所的には鼻づまりを改善させ
全身的にはマイルドな、だるさ改善・覚醒作用をもっています。
抗ヒスタミン薬のような眠気や集中力の低下を来すようなことはありません。
なお、麻黄湯はインフルエンザに対する有効性も報告されています。
Saita M,et al(2011)The efficacy of ma-huang-tang (maoto) against influenza.Health,3:(5),300-303
遷延期
全身症状が良くなって、喉から下の気道炎症症状や
消化器症状が顕著になる時期です。
このころは、漢方では手に負えない時期で、
漢方治療が第一選択となる機会は少なくなります。
長引く咳には麦門冬湯が効果があると言われており
中枢性鎮咳薬との併用で強力な咳止め効果が得られます。
藤森勝也ほか.(2001)かぜ症候群後咳噺に対する麦門冬湯と臭化水素酸デキストロメトルファンの効果の比較(パイロット試験)
日東医誌, 51, p725
また、麻杏甘石湯は麻黄と甘草による咳止めと気管支を拡げる作用に加えて
杏仁による痰切り、咳止めの効果があるので
風邪に伴った気管支喘息に用いられます。
回復期・予防期
かぜが長引いたり、ぶり返したりしないように
免疫力を強化しないといけない時期です。
補中益気湯
六君子湯
十全大補湯
には、人参や黄耆を含む漢方方剤であり、
健胃・強壮・代謝促進・免疫調整効果を期待され
よく使われています。
抗生物質の使用
ウイルスには抗生物質は効きません。
風邪のほとんどはウイルスが原因なので
風邪には抗生物質は意味がありません。
しかし、5歳未満の子どもや65歳以上の高齢者、
喘息やCOPDなどの呼吸器疾患、心血管疾患、慢性腎不全、慢性肝不全、
糖尿病、悪性腫瘍、HIV感染者、免疫不全症などの基礎疾患を持つ人は
カゼに引き続き肺炎などの細菌感染症を併発・続発する可能性があるので、
早めの段階から抗生物質の使用を考えます。
この場合、インフルエンザ桿菌と肺炎球菌の感染を考慮しますが
耐性菌発生のリスクを念頭におきつつ薬を選択します。