ページ

2014年8月7日木曜日

女性の難病:リンパ脈管筋腫症



■LAM治療薬シロリムス(ラパリムス)
http://yakuza-14.blogspot.jp/2014/08/lam.html





リンパ脈管筋腫症(LAM)は若年女性がかかる難病です。
100万人あたり約1.2~2.3人と推測されています。
腫瘍細胞の一種のLAM細胞が肺や腎臓で以上に増殖する病気です。

肺の正常な細胞を壊してどんどん増えていき、肺に穴を開けてしまいます。
病気が進行すると呼吸ができなくなり、死んでしまいます。

治療には肺移植が試みられています。
日本では実施が難しく、行われている例は限られています。移植後の肺に再発することもあります。
他には、ホルモン療法が行われています。日本では半分近い患者さんに行われているようですが、効果があるかどうかよくわかっていません。

LAMの新しい治療の確立が切望されていました。
LAMは患者数が少なく、製薬企業がなかなか開発に動いてくれませんでしたが、2014年遂に新規治療薬が承認されました。







「息切れ」それはLAMかもしれません

リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis : LAM)は、平滑筋細胞に類似した腫瘍細胞(LAM細胞)が、肺、身体の中心リンパ系のリンパ節(主に後腹膜腔や骨盤腔)、などで増殖する希な病気です。日本でのLAMの有病率は300人程と推測されています。

ほぼ女性に限って発症し、妊娠可能な年齢の若い女性に発症します。30歳前後で病気に気づくことが多いといわれています。
最も多い自覚症状は、気胸や動いた時の息切れです。

その他、どのようなことがきっかけでLAMが分かるのでしょうか。
例えば、、
血痰が出て心配になって病院にくる。
健康診断で肺のレントゲンに異常がある。
お腹に水がたまっている。
婦人科健診でお腹や骨盤のなかに腫瘍がある(リンパ節のLAM)と指摘された。
LAMの20~30%の方には腎血管筋脂肪腫(腎AML)を合併することがあり、これに伴う血尿、腰背部痛などがきっかけで病院を受診し、LAMがあることを診断される場合もあります。

LAMに特有の症状

乳び胸水、乳び腹水、太もものリンパ浮腫、などのリンパ系の機能障害に基づく症状があります。

「乳び」とは、食べものの脂肪分が小腸から吸収され身体の中心を流れるリンパ流に注ぎこむことでできたミルク様の混濁した液です。
LAM細胞が増殖するところではリンパ管がたくさん増えています。
LAM細胞が増殖するとリンパの流れが停滞し、リンパ管がパンパンに膨れ上がります。
もし、胸腔内でリンパ管が破れれば乳び胸水、腹腔の中で破れれば乳び腹水になると考えられています。
時に乳びは、痰となって肺から出てくる(乳び喀痰)、尿に混ざる(乳び尿)、また、膣から漏れるような場合もあります。



LAMの原因は?

LAMには2つのパターンがると考えられています。
1つ目は、
結節性硬化症という遺伝病に伴って発生する場合(結節性硬化症に合併したLAM;TSC-LAM)です。

結節性硬化症は、TSC1 あるいはTSC2 という細胞増殖を抑制する遺伝子のどちらか一方に生まれつき異常があるため生じる病気です。
LAM細胞は、TSC1あるいはTSC2 のどちらか一方の遺伝子が完全に機能不全になったため腫瘍化した細胞と考えられています。
そのため、LAMは「ゆっくりと慢性に進行する腫瘍性疾患」とも言えます。
TSC-LAMではTSC1あるいはTSC2のどちらの異常でも起こります。
結節性硬化症は常染色体優性遺伝の病気であるため、子供に1/2の確率で遺伝します。結節性硬化症の患者さんは、脳、皮膚、心臓、肺、腎臓、などの様々な場所に病気が起こりますが、生じる病気の組み合わせは様々です。また、結節性硬化症の方でも皆がLAMを発症するわけではありません。

2つ目は
S-LAM(sporadic LAM)という単独で発生する場合です。
S-LAMでは主にTSC2の異常によると考えられています。
S-LAMは、遺伝する病気ではありません。


LAMの治療法
GnRH療法
LAMはほぼ女性に限って、しかも女性ホルモンがたくさん分泌される時期の妊娠可能年齢の女性に発症しています。
そのため、経験的に女性ホルモン(エストロゲン)を閉経レベルまで低下させる治療が行われています。
性腺刺激ホルモン誘導体(GnRH)という薬剤を4週間毎に皮下注射することにより、閉経レベルの女性ホルモン値に保ちます。
エストロゲンが低下して生理が止まりますので、偽閉経療法とも呼ばれます。

研究者によって評価は異なりますが、30~40%の患者さんで肺機能の低下を抑えることができたという報告があります。

対症療法
乳びの漏れがある場合には、
脂肪制限食などの食事指導、日常生活の活動度と乳びの漏れ具合との関連性を理解した生活の工夫、利尿剤の内服、などと組み合わせます。
乳び腹水や胸水はなくなりはしませんがなんとか我慢できる範囲内で落ち着きます。

肺に穴があき、肺機能が低下し、息を吐きづらいなどの症状には、
気管支拡張剤の吸入を行います。気管支をできるだけ広げて呼吸による空気の出入りをより円滑にすることで、運動時の息切れが軽くなります。
さらに肺機能が悪化すると、酸素吸入が必要になってきます。

肺移植
酸素吸入が必要となる頃は、肺移植登録申請を考える時期でもあります。
日本では肺移植を受けた方の約40%がLAMの患者さんです。
LAMは肺移植を必要とする病気の第1位にランクされています。