レスピア静注・経口液60mgは、
3mL中にカフェインクエン酸塩60mgを含有する静注及び経口のいずれでも投与可能な、
バイアル入りの水性の無菌製剤です。
未熟児無呼吸発作の治療に使用されます。
「無呼吸発作」は次のように定義されています。
①呼吸停止が20秒以上続くもの。
②呼吸停止が20秒以内であっても、徐脈(脈拍が遅くなる)やチアノーゼを伴うもの。
未熟児無呼吸発作は脳の中の呼吸中枢が未熟なために起こります。
28週未満で生まれた赤ちゃんはほぼ100%、30週台前半で生まれた赤ちゃんで50%前後、
35~36週で生まれてきた赤ちゃんでも5~10%の割合で無呼吸発作を起こします。
また、出生体重が低いほどその発症頻度は高くなるとされ、
国内における赤ちゃんの数は、16,000~26,000 人と推定されています。
成熟に伴ってだんだんと消失していくもので、ある意味「生理的」なものです。
しかし、
無呼吸発作が発現し自然回復しないものは心停止に陥るので、
何か手をつかって呼吸させてあげる必要があります。
また、無呼吸発作が発現すると、赤ちゃんは低換気となり、低酸素症や徐脈が起こります。
これらは発達途上にある脳に障害をもたらしたり、生命や長期的な成長に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
無呼吸発作を放置しておくことは、低酸素による悪影響を脳に与えたり、
原因疾患の治療を長引かせることにもなりますので、正しい対応が必要です。
国内の未熟児無呼吸発作の治療法は、
まず一般療法として、体温の調節、低濃度酸素投与や物理学的刺激療法が行われます。、
これで十分にコントロールできない場合には薬物療法として、
アミノフィリン及びテオフィリンなどのメチルキサンチン系製剤などが投与されます。
呼吸管理としてnasal CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法、
nasal DPAP(呼気吸気変換方式経鼻的持続陽圧)療法、
機械的人工換気療法なども行われています。
しかし、これらの治療方法には一長一短があります。
中でも人工呼吸器による機械的人工換気療法は慢性肺疾患の誘発や、
長期挿管による感染、咽頭・気管の狭窄など、予後を大きく左右する合併症の増加が懸念されます。
そのため、機械的人工換気療法による呼吸管理の前に、まず薬物療法を行うことが一般的です。
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無水カフェイン製剤のレスピアは、直接的な延髄呼吸中枢興奮作用、
間接的な呼吸誘発反射の増強作用などにより呼吸促進を示す薬剤です。
外国では、カフェインクエン酸塩の未熟児無呼吸発作に対する有効性及び安全性について、
エビデンスレベルの高い多くの報告がなされています。
アメリカではCAFCITの名前で発売されています。
カフェインクエン酸塩が、未熟児無呼吸発作に対する第一選択薬として普及しており、
その効能・効果及び用法・用量は広く認知されています。
また、カフェインクエン酸塩は、小児の必要不可欠医薬品のリストとして、
WHO より公表されている「Model List of Essential Medicinesfor Children」に、
未熟児無呼吸発作の治療薬として唯一記載されている薬剤です。
つまり、未熟児無呼吸発作に対する世界の標準治療薬だといえます。
CAFCIT Injection, CAFCIT Oral solution(FDA)
WHO.Model List of Essential Medicines for Cildren. 4th List (April 2013)
レスピアは、国内において販売されているメチルキサンチン系製剤に比べ、以下の特長があります。
これらの特徴により緊急性を要するNICU(新生児集中治療室)の医療現場では、
安心して使用できる利便性の高い薬剤であるといえます。また、長期投与も可能です。
・安全性が高い(治療域血中濃度と安全域血中濃度が離れており、個体内変動が少ない)。
・投与後5年の長期の安全性(予後)が確認されている。
・1日1回の投与で安定した血中カフェイン濃度の維持が可能である。
・同一製剤で静脈内投与と経口投与が可能な液剤(バイアル)である。
用法・用量
初回投与:通常、カフェインクエン酸塩として20mg/kgを30分かけて静脈内投与する。
維持投与:初回投与から24 時間後以降に、通常、カフェインクエン酸塩として5mg/kgを1日1回、
10 分かけて静脈内投与、又は経口投与する。
なお、症状に応じて、10 mg/kgまで増量できる。
安全性
カフェインはテオフィリンやアミノフィリンと基本骨格が類似していることから
同様の有害事象が起こるものと推測されます。
心血管系障害(頻脈、動悸等)、中枢神経系障害(易刺激性、振戦等)、胃腸障害(嘔吐、腹部膨満等)、
血糖値異常、電解質異常等。
国内第Ⅲ相臨床試験では認められていませんが、米国の臨床試験では6例の壊死性腸炎が報告されています。
発現壊死性腸炎は、早産児に認められる重篤な疾患で、死亡率も高い疾患です。
壊死性腸炎又はその疑いがある赤ちゃんには、投与しない。
また、壊死性腸炎が疑われる事象が発現した場合には、速やかに投与を中止して、適切な治療を行わなければなりません。