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2014年7月29日火曜日

パロチン販売中止




パロチンが販売中止となるそうです。


パロチン販売中止及び経過措置のお知らせ(あすか製薬)
http://www.aska-pharma.co.jp/eccube/html/upload/save_file/info_deri_parotin_201411.pdf



この薬は、唾液腺ホルモン製剤というお薬です。白内障や手荒れの治療に用いられていました。


1968年に販売され、1990年に胃下垂症、筋無力症、歯槽膿漏症、腰痛、変形性関節症に効果が無いとして、厚生労働省に効能効果を現在の「進行性指掌角皮症、初期老人性白内障」に改められた経緯があります。


唾液腺ホルモンというなんとも怪しい成分ですが、あやしいです。



様々な噂は絶えません。




日本では動物が唾液腺からホルモンを分泌する? 宮千代加藤内科医院(仙台市)のホームページ
http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/parochin-01.html
どんなに詳しい内分泌学の本を見ても、英文の内分泌学の本を見ても、唾液腺がホルモンを分泌するとは書いていない。唾液腺は唾液を分泌する外分泌腺である。


「パロチンはあります!」とオガタさん(2)  遠隔画像診断医やすきーの日記
http://yiwasaki.com/wp/post-16723-16723.html

•パロチンは存在しません
•パロチンと若返りには何の関係もない(オガタさんと老化研究の関係はありますが)




今回の販売中止の原因は、この怪しさが指摘されたからではありません。



単純に原料調達が難しくなったからだそうです。


この薬は、ウシの唾液腺をすり潰して粉末にして乾かしたものを使っていました。


しかし、狂牛病が発生したことで、安全面を考慮し、発症した国のウシを医薬品の原料には使うことができなくなりました。


なんとか、ここまで原料を調達してきたものの、これ以上継続して調達するのが難しくなったようで、販売中止に至ったみたいです。



代わりに何を使えばいいの?


効果の是非はこの際おいておいて、白内障に使用されていた患者さんの代わりの薬としては何があるでしょうか。



白内障の薬は点眼薬がほとんどですが、唯一になってしまった飲み薬にチオプロニン「チオラ錠」があります。



チオプロニンは膜機能障害あるいはタンパク質凝集などの白内障進行の原因となる各種の変化を抑制することにより、白内障の進行を防止するものと考えられています。




進行性指掌角皮症、いわゆる手荒れに使われていたかたに、代わる飲み薬はステロイド剤か漢方の温経湯あたりでしょうか。




巷にあふれる怪しい商品


美容目的の健康食品などでパロチンを謳ったものがあります。


ほんとうに安全だと思いますか?


医薬品メーカーですら安全な原材料を供給することができないのです。


どこの馬の骨、もといウシの唾液腺かわからないものを摂取して健康になると思いますか?


少なくとも狂牛病のリスクがあることは理解した上で摂取してください。





精神科でもらえる薬が減らされるのか





精神科にかかっておられる患者さんから
「10月から薬がもらえなくなるのか」という質問を頂きました。

「大丈夫です。そんなことはありません」と回答しました。が、かなり不安らしく説明にかなりかかってしまいました。


メディア等の情報で誤解をされている方が多数いらっしゃるんだろうなと思います。


「精神科で薬がもらえなくなる」というのは、「向精神薬の多剤投与への制限」のことだと思います。
日本が海外と比べて向精神薬の処方剤数が多いことが問題視された結果、2014年4月に改定が行われました。
(急に制度を変えては現場が混乱するので、実際に実施されるのは2014年10月からです)

具体的には、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬を多剤処方した場合の減算規定が新設されました。 
今回の改定で「3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬または4種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合」処方料は20点、処方せん料は30点となります。
今までは処方料は29点と42点、処方せん料は40点と68点でした。


つまり、どこにも薬が減らされる、もらえなくなるとはなっていないのです。


向精神薬をたくさん処方すると、病院の「儲けが減る」だけです。
(患者さんにしてみれば、安くなるのですけどね)


もちろん病院は儲けが減るのを嫌がるので、薬を減らそうとするでしょう。
ですが、処方をしなくなることはないでしょう。


また、厚生局に届出を提出することや精神科専門医であるでことなどの条件をクリアすれば、このペナルティを回避することができます。
私の近所の精神科でも、ペナルティを回避できるそうです。

向精神薬を専門に扱っている精神科に通っておられるのであれば、心配いらないことなのです。




一番困るのは、内科で安易に眠剤や抗不安薬を乱発しているところでしょう。
将来は精神科以外では向精神薬を処方できなくなるのではないでしょうか。


向精神薬の処方制限についての解説(井出草平) - 個人 - Yahoo!ニュースhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/idesohei/20140311-00033462/

「抗不安薬や睡眠薬などの向精神薬を数多く処方した場合、診療報酬を原則認めない仕組み」と書いてあるが、これは間違いである。 今回の改定は、所定の種類以上の向精神薬を処方した場合に、病院・クリニック・薬局の収入が減額されるようにペナルティが課されるというものだ。


多剤併用禁止の不思議 - 精神科医の本音日記 
http://d.hatena.ne.jp/satochan8/20140401/1396364644
向精神薬の多剤併用が制限される事になった。効果の証明されてない安易な併用療法が過量服薬による事故を招いていることが社会問題化しているからであろうが、現場の混乱は目に見えている。


向精神薬 多剤処方を制限…診療報酬認めず(内科開業医のお勉強日記)
http://kaigyoi.blogspot.jp/2014/03/blog-post_8664.html
多医療機関受診患者が大きく問題となるだろう。精神科外では、基本的には、向精神薬多剤処方はできないということを周知してもらわねば。

3位じゃ駄目なんです!(続き) ハヤノヤクヒン
http://hayanoya.exblog.jp/m2014-03-01/
今回の多剤投与規制は役所が考えたにしては割と妥当なラインに落ち着いているように思います。一番割を食うのは大量の睡眠薬を要求する患者(たいてい自己負担無し)なので、これを減らす役には立つかも知れません。今度は薬目的の複数医療機関同時受診が問題になるかも知れませんが、それはまた別の規制によって修正されていくことでしょう。


2014年7月25日金曜日

抗結核薬デラマニド (デルティバ錠50mg)




デラマニドは、大塚製薬株式会社が開発した抗結核薬です。ニトロ-ジヒドロイミダゾ-オキサゾール誘導体に分類されます。


作用機序

作用機序は、抗酸菌に特異的なミコール酸の生合成を阻害することにより抗結核作用を示すとされています。
同様にミコール酸合成阻害作用を有するイソニアジドは休眠型結核菌に作用しないことが知られていますが、デラマニドについてはどうなのでしょうか。

イソニアジドは、結核菌が有するKatG酵素により代謝され、NADと結合し、ミコール酸合成経路の重要な酵素の一つであるInhAを抑制することにより、ミコール酸のすべてのサブクラス(アルファ、メトキシ、ケト)の合成を阻害することが報告されています。
KatGは酸素依存的に活性を示すことが明らかになっています。結核患者由来の肺組織の乾酪壊死層(嫌気部位)の結核菌の遺伝子発現量解析から、KatG の発現が低下していることが確認されていることを踏まえると、嫌気状態である乾酪壊死層の菌体内ではKatGによるイソニアジドの代謝が低下し、イソニアジドが活性化されないことにより、イソニアジドが休眠型結核菌に抗菌活性を示さないと考えられています。

デラマニドは、ミコール酸のサブクラスのうち、メトキシ及びケトの産生を阻害し、アルファミコール酸及び非極性脂肪酸に対する阻害は認められませんでした。つまりイソニアジドとは異なる作用点によりミコール酸合成を阻害していると考えられます。
そしてデラマニドの活性化に必要な酵素は酸素非依存的なRv3547と考えられています。したがってデラマニドは休眠型結核菌内でも活性化されることにより、休眠菌にも効果を示すと考えられます。

デラマニドを作用させることでミコール酸合成経路の中間体であるハイドロキシミコール酸が蓄積します。
このことから、デラマニドはハイドロキシミコール酸からメトキシミコール酸の生合成を行うMmaA3(Rv0643c)及びハイドロキシミコール酸からケトミコール酸の生合成を行う酵素の反応を阻害していると考えられます。



デラマニドは、既存の抗結核薬に感受性及び耐性を示す結核菌株のいずれに対しても抗結核作用を示します。さらに既存の抗結核薬との交叉耐性は認められていません。


Vilcheze C and Jacobs WR,(2007)The Mechanism of Isoniazid Killing: Clarity Through the Scope of Genetics. Annu Rev Microbiol, 61: 35-50, 

Zabinski RF and Blanchard JS,(1997)The Requirement for Manganese and Oxygen in the Isoniazid-Dependent Inactivation of Mycobacterium tuberculosis Enoyl Reductase. Journal of the American Chemical Society, 119(9): 2331-2332,




結核治療の現状

結核の標準治療は、リファンピシン、イソニアジド、エタンブトール及びピラジナミドの4剤併用による2カ月間の強化療法に続きリファンピシン及びイソニアジドの併用による4カ月の維持療法を行うとされています。薬が効けば治癒率は90%とされています。一方、薬が効きにくくなっている多剤耐性肺結核患者では、最適な治療プログラムを行った場合でも治癒率は50~70%とされ、死亡率は25%と報告されています。

2008 年にWHOが発表したガイドラインでは、多剤耐性肺結核はリファンピシン及びイソニアジドに耐性を示すことから、多剤耐性肺結核患者に対して、両薬剤を含む標準治療が使用できないことから第1選択薬であるエサンブトール及びピラジナミドに第2選択薬である注射用抗結核薬のカナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン又はストレプトマイシンのいずれか1剤及びフルオロキノロン系抗菌薬レボフロキサシン、モキシフロキサシン又はオフロキサシンのいずれか1剤を加えた4剤での治療法を推奨しています。

しかし、これら4剤のいずれかが薬剤耐性又は副作用等の理由により使用できない場合にはその他の第2選択薬パラアミノサリチル酸、サイクロセリン、terizidone、エチオナミド又はプロチオナミドより1 剤以上を追加して治療を行うこととされています。
ただ、使用可能な薬剤は限られているのが現状です。また、多剤耐性肺結核の治療期間は、注射用抗結核薬を含めた強化療法期間を少なくとも6カ月設け、培養陰性化後18カ月間治療を継続することとされています。日本において、2008年に日本結核病学会治療委員会が発表した提言では、リファンピシン及びイソニアジドに耐性の結核に対して、ピラジナミド、エサンブトール及びストレプトマイシン等の注射用抗結核薬及びフルオロキノロン系抗菌薬を含む治療が推奨されています。

日本では、年間110~120例の多剤耐性肺結核患者が発生しているとされています。
また第一選択薬であるイソニアジド及びリファンピシンに加えてカナマイシン等の注射用抗結核薬及びフルオロキノロン系抗菌薬に対しても耐性を示す超多剤耐性肺結核の多剤耐性肺結核全体に占める割合が諸外国よりも高いことが報告されています。

World Health Organization (WHO). Global Tuberculosis Control 2010. Geneva: WHO; 2010.

Orenstein EW et al,(2009) Treatment outcomes among patients with multidrug-resistant tuberculosis: systematic review and meta-analysis. Lancet Infect
Dis.; 9(3): 153-161.



安全性:QT 延長について

添付文書の警告欄に「本剤の投与によりQT 延長があらわれるおそれがあるので、投与開始前及び投与中は定期的に心電図検査等を行い、リスクとベネフィットを考慮して本剤の投与を慎重に判断すること」と注意喚起がなされています。
臨床試験においてQT延長が認められた例がありました。その例では急性心筋梗塞及び冠動脈疾患が認められたので、冠動脈疾患を有する患者には、慎重に投与する必要があります。QT延長について投与前の注意や投与中の検査による確認が必要です。
日本ではデラマニドの投与対象となる患者は高齢者が比較的多いことが推測されます。QT延長リスクが高い人たちです。十分な注意喚起が必要でしょう。


Responsible Access Program(RAP)

抗結核薬の不適切な使用による耐性菌の発生リスクを防止し、本剤の安全性確保を確実に遂行する必要があることから、適正使用に関連する対策として、納入制限
を伴うResponsible Access Program(RAP)が実施されます。

RAPとは、
① 適格性確認システムによる薬剤供給適否の判断
② 全例調査による確実な安全性情報収集
③ 医療従事者及び患者への情報提供
④ 添付文書での注意喚起
から構成されるプログラムのことです。

①の適格性確認システムによる薬剤供給適否の判断については、以下のとおり実施されるようです。
1)患者の同意取得後、本剤投与の適格性を判断するために必要な情報(施設名、使用予定症例等)について、医師が患者登録用のサーバに入力する。 
2)患者登録用サーバに登録された内容に基づき、本剤を使用した際の有効性、安全性の懸念を第三者委員会へ諮問する(第三者委員会は,日本結核病学会治療委員会作成の使用指針及び添付文書を基にした第三者委員会内規に従い評価する)。第三者委員会からの使用に関する適否及び助言を得た後,申請者において、薬剤供給の適否を判断する。 
3)薬剤供給が「適」と判断された場合には、当該施設での全例調査の依頼を申請者より実施するとともに、本剤の適正使用に関する情報を提供した上で、薬剤の供給を行う。 
4)本剤投与継続の適否について、90日ごとに使用経過報告(喀痰塗抹培養結果、薬剤感受性結果、併用薬剤)を医師より入手し、第三者委員会で評価する。第三者委員会は、培養陰性化が得られておらず耐性化のリスクが高い症例について、本剤使用中止の助言を行う。




デラマニドは、多剤耐性結核を適応疾患として承認されました。今後も、他の薬剤が使用可能になる可能性が高いくなっています。これらの新薬は、広く使用した結果、予期しない副作用や薬剤相互作用などが経験される可能性があります。その臨床情報を集積、分析することにより、効果と副作用の面で既存の抗結核薬に劣らないと判断され、使用対象が拡大される可能性もあります。そのためには、発売当初からの適正な使用と、使用症例についての情報の集積とその分析が必須であると考えられます。

2014年7月22日火曜日

カナグル錠 粉砕可否





カナグル錠は粉砕等できるかどうか
MRさんにきいてみました。

カナグル錠の粉砕
有効性・安全性・品質を保証できないので推奨されないとのことでした。

粉砕後のデータを教えてもらいました。
40±2℃、褐色のガラス瓶で3ヶ月保存したとき。
性状、純度試験、含量、水分量に変化は認められませんでした。

25±2℃、75%±5%RH、褐色ガラス瓶で3ヶ月保存した時。
性状、純度試験、含量、水分量に変化は認められませんでした。

成行温湿度、白色蛍光灯下、開放シャーレで保存したとき。
曝光4日(約20万lx・h)で変色が認められました。
試験開始時白色だったものが、60万lx・h、120万lx・h曝光時に微黄色になりました。
また、純度試験において、120万lx・h曝光時分解物が認められました。


一包化の可否について

無包装状態での安定性データを教えてもらいました。

40±2℃、褐色のガラス瓶で3ヶ月保存したとき。
性状、純度試験、含量、水分量に変化は認められませんでした。

25±2℃、75%±5%RH、褐色ガラス瓶で1ヶ月保存した時。
水分量の増加と硬度の減少(74Nから49N)が認められました。

成行温湿度、D65ランプ、開放シャーレで120万lx・h曝光時。
性状、純度試験、溶出性、含量、水分、硬度に変化は認められませんでした。



簡易懸濁について

簡易懸濁法は有効性・安全性のデータがないのでお勧めできないとのことでした。

簡易懸濁の製剤学的データは以下のとおりです。

約55℃の微温湯20mLに10分間で崩壊懸濁しました。
懸濁液は8Fr.の経管チューブを40mLの水でフラッシングするとチューブ内に僅かな残渣が認められました。

2014年7月18日金曜日

アムロジピン内用ゼリーは液剤






アムロジン錠2.5mg(先発品)を
後発品のアムロジン内用ゼリー2.5mgに変更調剤できるでしょうか


後発医薬品の使用促進の一環として、

平成22年4月1日より、

一定の要件の下において、


処方せんに記載された医薬品について
保険薬局において処方医に事前に確認することなく
含量違い又は類似する別剤形の後発医薬品に変更して
調剤することが認められています。

類似する別剤形の医薬品とは、
内服薬であって、次の各号に掲げる分類の範囲内の他の医薬品をいうものであること。
ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤 
イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。) 
ウ 液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る。)

処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について(保医発0305第12号)



これには、類似する別剤形の医薬品としてゼリー剤の記載はありません。

それでは、ゼリー剤は、ア、イ、ウのどれに該当するのでしょうか。


調べ方は簡単です。
薬価基準収載医薬品コード(別名:厚生省コード、薬価コード)を見れば一目瞭然です。
薬価基準収載医薬品コードとは、薬価基準収載医薬品に付けられる12桁のコードです。
医薬品の成分、剤形、銘柄等を表しています。
12桁の中のアルファベット1字が剤形を表しています。
(内服薬の場合、A-E:散剤、F-L:錠剤、M-P:カプセル、Q-S:液剤、T,X:その他)

例)アムロジピン内用ゼリー2.5mg「アスカ」:2171022Q1046
 アルファベットは「Q」なので、液剤に該当します。


つまり、内用ゼリー剤は、錠剤の類似する別剤形の医薬品として変更調剤できません。
疑義照会が必要です。


同様の理由で、
ボナロンゼリー35mg(先発品)を
後発品のアレンドロン酸錠35mgへ変更調剤することはできません。
疑義照会が必要です。


では、ODフィルムはどの剤形になるでしょうか。

アムロジピンODフィルム2.5mg「QQ」:2171022F3307
「F」ですので、錠剤と同じ扱いになります。


2014年7月17日木曜日

女性のミカタ エクオール



日常の食生活で大豆製品を多く摂取する日本人は、欧米人に比べ、
更年期障害の症状が軽く、乳がんや骨粗鬆症の罹患率が低いとされていました。

大豆に含まれる成分の中でも、
特にフラボノイドの一種である大豆イソフラボンは、
種々の生活習慣病に対する予防効果を持つ化合物として期待されています。

大豆イソフラボンの主要な成分として
ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインなどがあげられます。

ダイゼインは腸内の細菌叢によりエクオールへと変換され、
体内に吸収されます。

また、エクオールにはS体とR体という性質が異なる2つのタイプが存在します。

ヒトの腸内細菌叢ではS-エクオールのみが産生されます。

しかしすべてのヒトがエクオール産生菌を保持しているわけではありません。

西洋人では約70%、日本人では約50%はつくり出すことができないとされています。


Setchell らは、
2002 年に大豆摂取による更年期の諸症状の改善に関与する主な物質が
エクオールであるという“Equol hypothesis”を提唱し、
エクオールは大きな注目を集めました。

実際に疫学調査からエクオール産生者は非産生者に比べ、
乳がんの発症リスクの軽減や閉経後の骨密度低下に対する
保護効果が高いことが報告されています。


Yamamoto S,et al (2003)Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan. J Natl CancerInst 95, 906-913

Setchell KD, et al (2006) Method of defining equol-producer status and its frequency among vegetarians. J Nutr 36, 2188-2193

Arai Y,et al (2000) Comparison of isoflavones among dietary intake, plasma concentration and urinary excretion for accurate estimation of phytoestrogen intake. J Epidemiol 10, 127-135

Setchell KD, et al (2002) The clinical importance of the metabolite equol-a clue to the effectiveness of soy and its isoflavones. J Nutr 132, 3577-3584


エクオールについて

女性ホルモン(エストロゲン)は
エストロゲン受容体に結合することで、生理機能を発揮します。

エストロゲン受容体には2つのサブタイプ(αとβ)が存在します。

エストロゲン受容体αとエストロゲン受容体βは
互いに異なる作用を示します。

大豆イソフラボンはエストロゲンと形が似ているので
エストロゲンと同様にエストロゲン受容体に結合します。

ダイゼインはエストロゲン受容体αよりβに対してよく結合します。

エクオールはダイゼインよりもさらにβに対し結合します。

Setchell KD, et al(2005) S-equol, a potent ligand for estrogen receptor β, is the exclusive enantiomeric form of the soy isoflavone metabolite produced by human intestinal bacterial flora. Am J Clin Nutr 81, 1072-1079



エクオールと乳がん

乳がん細胞には2つの種類が存在します。

エストロゲン受容体を発現して
エストロゲン依存的に発生・進展する
エストロゲン受容体陽性乳がんと、

エストロゲン受容体を発現せずに
エストロゲン非依存的に発生・進展する
エストロゲン受容体陰性乳がんです。

エストロゲン受容体陽性乳がんにおいて、
エストロゲンがエストロゲン受容体αを介して乳がん細胞の増殖を促進させます。

一方、エストロゲン受容体βは乳がん細胞の増殖を抑制します。

エクオールはエストロゲン受容体αよりもエストロゲン受容体βに強く作用するので、
乳がんではエストロゲンの様に作用せず、
エストロゲンの作用を抑制すると考えられます。

また、エクオールはダイゼインやゲニステインに比べ
乳腺組織に蓄積しやすいため
乳がんに対して他のイソフラボンよりも抗がん作用を発揮すると期待されます。

Maubach J, et al, (2003) Quantitation of soy-derived phytoestrogens in human breast tissue and biological fluids by high-performance liquid chromatography. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 784, 137-144



エクオールと骨粗鬆症

エストロゲン濃度の減少が閉経後の骨粗鬆症発症の最大の原因であるといわれています。

大豆摂取は閉経後の女性の骨密度低下を抑制します。大

豆摂取による骨密度はエクオール産生者の方が非産生者に比べ高いという報告があります。

Magee PJ (2011) Is equol production beneficial to health? Proc Nutr Soc 70, 10-18



エクオール含有食品の閉経後女性の骨代謝に対する影響を調査した二重盲検試験によると、
試験開始から2年後にエクオール含有食品を摂取した女性では
プラセボ群と比較して、骨密度の低下が抑制されることが報告されています。

Ishimi Y (2010) Dietary equol and bone metabolism in postmenopausal Japanese women and osteoporotic mice. J Nutr 40, 1373S-1376S

これらのことから、エストロゲン量の低下した更年期の女性の骨組織では、
エクオールがエストロゲンの代替物質として機能すると考えられます。



エクオールと肥満・糖尿病

閉経女性ではエストロゲンが減少すると、レプチンが減少して、
脂質代謝が異常となり肥満になりやすいといわれています。

肥満では血中の炎症性サイトカインのレベルが上昇しており、
これら炎症性サイトカインがインスリンシグナルを阻害し、
インスリン抵抗性を引き起こすことで糖尿病の発症リスクを増大させます。

ヒトにおいて大豆食品やイソフラボンを多く摂取していると、
肥満の女性や閉経後の女性で2型糖尿病発症リスクが低減するという報告があります。

さらに、大豆の摂取は、
特にエクオール非産生能の肥満女性において血糖値と
悪玉コレステロール値を顕著に減少させるという報告もあります。

Thorp AA, et al, (2008) Soy food consumption does not lower LDL cholesterol in either equol or nonequol producers. Am J Clin Nutr 88, 298-304

その他、
エクオールはエストロゲン受容体βを介した肥満や
糖尿病の予防効果をもつ可能性を示唆する報告が多くあります。




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2014年7月16日水曜日

ヘルパンギーナは予防が第一





ヘルパンギーナ(herpangina)は別名、水疱性口峡炎といいます。夏かぜの特殊型です。コクサッキーウイルスA群ウイルスというエンテロウイルスにより起こります。

初夏から秋にかけて多いです。潜伏期間は2~4日、乳幼児に多く見られます。症状は、38~40℃の高熱、喉が痛くなり食欲も落ちます。食事が摂れないほど喉が痛くなることもあります。全身倦怠感、吐き気、手足が痛くなったりもします。

喉は赤くなり、唇やくちのまわりに1~5mm大の水疱が出てくることもあります。熱は1~4日間続くことがあります。

これら症状は1週間以内に良くなります。



〇予防のポイントは、
(1)最も大切なのは「手洗い」です。
特に排便後、また調理や食事の前には石けんと流水で十分に手を洗いましょう。
(2)保育所などで便を処理する時は、使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用し、処理後は石けんと流水で十分に手を洗いましょう。
(3)洗濯物は日光で乾かしましょう。



治療の原則

原因がウイルスなので、抗生物質は効きません

特異的な抗ウイルス療法もありません。
対症療法が基本です。


<家庭で行う対症療法>

熱に対しては、氷枕や、脇の下に氷を当てるなどして冷やします。

体温を上げることで、身体はウイルスと戦っていますので、無理に下げる必要はありませんが、しんどいようならば市販の解熱剤を用いて様子を見ます。

夏に起こりやすく、脱水には十分注意が必要です。
水を欲しがらなくても、定期的に飲ませるようにしましょう。
その際には、ただの水ではなく病者用の経口補水液(OS-1)を飲ませるようにしましょう。

症状のある間は安静にさせます。入浴も症状が消失するまで中止します。

食事は、消化のよい物を選び、発熱下痢等がある場合には上に書いてあるように水分を多く摂らせます。
口内炎などの炎症がある場合には出来る限り刺激性のあるものは避けましょう。



<医療機関での対症療法>

解熱剤:
高熱に対しては、解熱剤で対応します。
乳児にはポンタールシロップ3~6mLを1日量として3回に分けて内服します。
用時では小児用バファリンまたは、アセトアミノフェンを投与します。
また、氷嚢、氷枕を用い、水分を多めに摂らせます。

鎮痛剤、鎮痙剤:不眠や興奮あるいは熱性痙攣の既往がある場合にはフェノバールエリキシルを投与します。
痙攣を既に起こしている場合は10%フェノバールを5mg/kg筋注します。

輸液:
嘔吐、高熱による水分喪失、食欲不振による水分摂取量の低下による脱水がみられるときにはソリタT3あるいはKN3Bを点滴静注します。

その他:
口腔粘膜の潰瘍で痛みを訴えるときにはキシロカインゼリーを少量塗布します。




原因ウイルスの確定まで行う必要はありません。

原因ウイルスの確定が必要なのは、特効薬としての抗ウイルス剤が開発され、 市販されている場合です。
ヘルパンギーナの治療法としては、発熱や食欲不振への対症療法しかなく、特に有効な予防法があるわけではありません。
エンテロウイルスは迅速抗原検出キットはまだ開発されていません。
一般的には流行期や臨床症状による診断で十分なことがほとんどです。

エンテロウイルス感染は多彩な症状を示します。ヘルパンギーナの場合、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎を合併する場合があります。その点は注意が必要です。




○国立感染症研究所感染症疫学センター
○厚生労働省「わかりやすい感染症Q&A」




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2014年7月15日火曜日

尋常性乾癬治療配合外用剤「ドボベット軟膏」





尋常性乾癬治療の配合外用剤「ドボベット軟膏」承認取得のお知らせ(協和キリン)


ドボベット軟膏は活性型ビタミンD3であるカルシポトリオール水和物(ドボネックス)と副腎皮質ホルモンであるベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロン-DP)の配合外用剤です。尋常性乾癬治療に使用されます。


乾癬の治療は、外用療法、光線療法、免疫抑制薬や生物学的製剤などの全身療法に大別されます。


外用療法が乾癬治療の基本です。
活性型ビタミンD3外用薬やステロイド外用薬の単独または併用による治療が行われています。併用療法は異なる作用
点をもつ両者の効果を期待できるとともに、副作用を軽減することができます。海外では、活性型ビタミンD3外用薬とステロイド外用薬の合剤が発売されその有用性も報告されています。日本では2014年にようやくドボベット軟膏が承認され、使用できるようになりました。


外用療法では、患者さんのアドヒアランス低下が問題視されます。つまり、患者さんが薬を毎日塗ってくれないのです。アドヒアランスを向上させる一つの手法として、混合処方がなされます。

活性型ビタミンD3外用薬とステロイド外用薬を混ぜていました。
しかし、両剤に関しては安易に混合すべきではありません。
なぜかというと、活性型ビタミンD3外用薬は酸性の基剤中では失活することが知られているからです。著しく酸性に
傾いているようなステロイド外用薬との混合は避けなければなりません。


ドボベットは、この点を独自の製剤技術でクリアしています。



活性型ビタミンD3外用薬で気をつけることは血中カルシウム濃度です。
活性型ビタミンD3 外用薬は、全身的な副作用は起こしにくいとはいえ、経皮吸収に伴う高カシウム血症のリスクが常にあることは覚えておくべきでしょう。とくに皮疹の強い患者さんですと、薬剤の透過性が亢進しています。傷口に擦り込むようなものですから当然ですよね。
もちろん、皮疹が軽快すると外用薬の使用量が減ってくるため、高カルシウム血症のリスクも結果的に低くなります。

高カルシウム血症の臨床症状は、主に傾眠傾向と脱水です。


皮膚科Q&A 乾癬(日本皮膚科学会)

2014年7月14日月曜日

処方箋に記名と押印しなくてはならない理由





処方箋への記入等については、薬剤師法(昭和 35 年法律第 146 号)第 26 条により、薬剤師は、調剤したときは、その処方箋に、調剤済みの旨、調剤年月日等を記入し、かつ、記名と押印し、又は署名しなければならないと規定されています。これは、以下の理由によるものです。


・薬剤師は、医師と独立した立場で、薬学的観点から患者の状態を対面で確認し、処方内容を適切にチェックした上で調剤を行うことで、患者が複数の医療機関を受診した時でも「重複投薬の防止」や、「相互作用の確認」など適切な服薬管理と説明を行う役割と責任を負っている。

・特に、処方箋により調剤される薬剤は、その効能・効果等において人体に対する作用が著しく、重篤な副作用が生じるおそれがあるため、こうした薬剤師の役割と責任の下で、それぞれの調剤に最終的な責任を有する薬剤師が誰であるかを明確にする必要がある(健康被害が生じた際には、これを処方した医師や調剤した薬剤師の刑事的な責任等が問われる場合もある)。




薬局では、記名の代わりに「調剤済み」と彫ってある名前入りのスタンプを使っておられるところがほとんどだと思います。

このスタンプの取扱について平成26年7月10日厚生労働省医薬食品局総務課より事務連絡が出されました。


薬局において調剤した薬剤師は、調剤済みである旨及び調剤した薬剤師の氏名が入ったスタンプを処方箋に押した場合は、調剤した薬剤師の氏名の記名を行ったものとして取扱い、この記名を別途しなくても差し支えない。

ただし、処方箋中に薬剤師氏名の記入欄があり、この記入欄への記名に代えて上記のスタンプを利用する場合は、この記入欄の近くにスタンプを押すなど、調剤した薬剤師が容易に分かるようにすること。

また、薬剤師の氏名の記名に代えて上記のスタンプを利用する場合であっても、調剤した薬剤師による押印は省略できない。

2014年7月12日土曜日

ツイートまとめ 院内処方やめました



2014年7月10日木曜日

フェントステープの使い方





フェントステープは
1日1回張替え型のフェンタニルクエン酸塩経皮吸収製剤で、中等度から高度の慢性疼痛および、がん性疼痛治療に使用します。

フェントステープは、他のオピオイド製剤から切り替えて使用します。

初回貼付用量は、換算表に基いて切替前に使用していたオピオイド製剤の用量から過量投与にならないように適切な用量を選択します。初回貼付後少なくとも2日間は増量を行ってはいけません。


他のオピオイド鎮痛剤からフェントスに初めて切り替える場合、フェンタニルの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまでに時間を要します。



切り替え方は以下のとおりです。

■1日1回徐放性製剤(オキシコンチン、カディアンなど)から切替
徐放性製剤投与12時間後にフェントスを貼ります。

■1日2回徐放性製剤(MSコンチン、タペンタなど)から切替
徐放性製剤投与と同時にフェントスを貼ります。

■1日4~6回速効製剤(オプソ、オキノーム、アンペックなど)から切替
速効製剤投与と同時にフェントスを貼り、4~6時間後に速効製剤を投与します。

■持続点滴から切替
フェントスを貼付して6時間まで持続点滴を行います。


2014年7月9日水曜日

クレナフィン爪外用液 10% 塗る爪水虫治療薬





世界初の爪水虫の塗り薬「クレナフィン爪外用液 10%」が2014年秋ごろ登場予定です。

クレナフィン.jp(科研製薬) 医療関係者向け
http://clenafin.jp/press.html

爪真菌症に対して外用で治療効果を得ることが期待できます。
経口抗真菌薬で認められている肝障害等の全身性の副作用を回避できます。
血漿中への移行も低いことから、薬物相互作用を回避できる可能性が高いと考えられます。
爪真菌症における新たな治療選択肢となり得ると考えられます。


2014年7月4日金曜日

なんで高齢者は薬を飲んでくれないの






高齢者の服薬アドヒアランス不良の原因

※アドヒアランス adherence
 患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること



  • 認知機能の低下(管理不能、不理解、飲み忘れ)
  • 視力低下
  • ADL低下(服薬作業不能)
  • 病識欠如
  • 医療不信
  • 薬物副作用に対する恐れ
  • 服薬サポーターの不在
  • 薬剤数の多さ
  • 服薬回数の多さ



服薬アドヒアランスを向上させるための工夫


  • 薬の量を減らす 
  • 服薬方法を単純にする 
  • 薬効、服薬方法の教育 
  • 家族、サポーターの協力依頼 
  • 身体機能評価(視力、張力、ADL) 
  • 薬物副作用に対する説明並びに対策 
  • 薬物剤形の工夫 
  • 長期投与を避ける 
  • 残薬のチェック 
  • 薬剤一包化 
  • ピルボックス、おくすりカレンダーの利用 
  • 医師と薬剤師の綿密な連携 


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2014年7月3日木曜日

高齢者薬物治療の原則





  • 初期投与量は原則、成人の1/2から1/3とする 
  • 腎機能、肝機能に配慮する 
  • 患者持参の検査結果などでeGFR、血清アルブミン値をチェックする 
  • 長年使用している薬剤でも臓器機能の変化によって投与量を調整す


他施設の処方薬チェック

複数の医療機関で発行されている薬剤をチェックすることで副作用を防止する。


腎・肝機能のチェック

高齢者のほとんどは腎障害や肝臓機能障害が存在すると考えます
禁止薬や用量のチェックを怠らないようにします。


自律神経機能のチェック

高齢者は自律神経機能が障害されている例が多いです。
そのため抗コリン薬やβ遮断薬などの自律神経に作用する薬剤は
その用量と適応に十分配慮しなくてはなりません。


新薬登場時のRMPのチェック

新薬における承認審査情報や大規模臨床試験では
殆どの場合高齢者は対象から除外されています。
そのため、高齢者での安全性が十分に確認されていない場合が多いです。
市販後に起こりうる可能性のある有害事象を予見するため
RMPをチェックすることが重要です。






2014年7月2日水曜日

高齢者の病気と薬




老年症候群

歳を取るにつれて、心身の機能が衰えてきます。
そのことで現れてくる身体的精神的症状や疾患を総称して
老年症候群といいます。

老年症候群の特徴は、
高齢者特有の様々な原因や症状が
連鎖的に関連して悪循環を引き起こすことです。

例えば、
骨粗鬆症で骨折すると、寝たきりになります。
そうすると食欲低下し低栄養状態になります。
筋肉が低下し、動けなくなります。
動かないので食欲が落ちます・・・という具合に悪循環がおきます。

老年症候群の主な症状は、
認知症、せん妄、不眠、尿漏れ、筋力低下、腰痛、膝関節痛、食欲不振などです。

これらの症状に対し多くの薬が処方されています。

高齢者への処方の定番といえば
睡眠薬、抗不安薬、過活動膀胱治療薬、胃薬、湿布などです。

しかし、老年症候群は薬で悪化したり表在化するする場合があるので
注意が必要です。






生活習慣病
高齢者は長年積み重ねてきた生活習慣の蓄積によって、
高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症など
いわゆる生活習慣病の合併頻度は高くなっています。

高齢者に処方される薬のほとんどが
生活習慣病治療薬と言っても過言ではありません。

例えばCA拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、スタチンは
非常によく見る処方です。

また、狭心症や心房細動など冠動脈疾患、脳血管疾患予備軍では
抗血小板薬が標準治療になっています。

抗血小板薬が処方されている高齢者も非常に多いです。




病気の数が増えると薬が増える
薬が増えると副作用も増える
高齢者では飲んでいる薬の数が1日7種類以上というのは珍しくありません。

注意が必要なのは、複数の医療機関を受診している場合です。

もらった薬がダブってたということはよくあります。

また、A病院の薬とB病院の薬の飲み合わせが悪く、副作用が出たりすることもあります。

高齢者は特にお薬手帳の活用が薦められるます。

飲み合わせの悪い薬はないか、
腎障害、緑内障などの病気の人が飲んではいけない薬がないかなどの
薬剤師によるチェックが不可欠です。





さよなら ベノジール





ベノジールとシベノールを間違えて怒られたのは良い思い出です。

協和発酵キリンの睡眠薬「ベノジールカプセル10・15」の販売が2014年8月で終了するようです。

ベノジール 販売中止について(協和発酵キリン)


ベノジールは一般名フルラゼパムといいます。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。長時間作用型に分類され、夜に何度も起きてしまうような人に使われます。特徴はREM睡眠への影響がなく自然な眠りをもたらすことらしいです。


1975年に発売され2014年まで39年愛されてきた薬です。
ベノジールには10mgという低用量があるのが特徴です。薬の量を調節しないといけない高齢者には使い勝手がそこそこよいそうです。ドラールを減らしたいなぁというときに切り替えたり。


フルラゼパムには共和薬品からダルメートという薬が存在します。(後発品ではない)
切り替えるとすれば、ダルメートなのですが、ダルメートには10mgという規格がありません。どうするのでしょうか。ドラール15の半錠とか増えるのかな。


今回の販売中止の理由はよく分かりませんが、
推測するに2014年診療報酬改定の影響があるのかもしれません。
向精神薬の多剤処方制限です。
処方量の減少を見込んで撤退したのかもしれません。



2014年7月1日火曜日

高齢者とクスリ 高齢者の特徴







一人で多くの疾患を併せ持っている

高血圧の患者さんでは糖尿病や慢性腎臓病をいっしょに患っていたり、
あるいは腰痛や膝関節症、骨粗鬆症を併せ持っている場合が多いです。

合併している疾患についても十分に把握しておく必要があります。




重症化しやすい

高齢者は体質が脆くなっています。
脱水、かぜ、などちょっとしたことで腎障害や心臓疾患などの
持病が悪化しやすく、命を落としかねません。





服薬の自己管理が難しくなる

物忘れや多くなり、薬を飲んだかどうか把握出来にくくなります。
薬物管理においても家族やヘルパーさんの介助が必要になります。




生活機能が衰える

歩行、排尿、排便などの生活機能が急速に衰えます。


疾患において典型的な症状ばかりではありません

病気の症状が、一般的なものから逸脱している場合があります。
そのため、お医者さんもしばしば病気を見逃すことがあります。
例えば、心筋梗塞では一般に胸の痛みを訴えて受診しますが、
高齢者では腹痛や食欲不振で病院を受診される場合があります。




複数の医療機関を受診しています

複数の医療機関を受診しています。
そして、そこで多くの薬を処方されています。
そのため、様々な施設からの処方薬をきちんと把握しておく必要があります。




腎臓や肝臓の機能低下

腎機能、肝機能が低下していきます。
副作用が生じやすく、また、消えにくいです。




医療に対する考え方も多種多様

薬を指示通り服薬している人もいれば、
しばしば飲み忘れる人もいます。