- 抗精神病薬の歴史
- 抗精神病薬の作用機序
- 統合失調症のグルタミン仮説
- くすりのトリセツ リスペリドン(リスパダール)
- くすりのトリセツ オランザピン(ジプレキサ)
- くすりのトリセツ アリピプラゾール(エビリファイ)
- 統合失調症の薬物治療
- 抗精神病薬の使用は心血管障害のリスク要因
- 向精神薬の”Choosing Wiselyキャンペーン”
抗精神病薬の歴史は
1950年代のクロルプロマジンの合成から始まります。
クロルプロマジンはフランスのローヌ・プーラン研究所で合成されました。
1952年2月に外科医のヘンリ医師が、
麻酔の併用薬としてクロルプロマジンを使ったところ
患者さんの精神状態に変化が見られました。
その変化から医師は、
もしかしたら精神科治療にクロルプロマジンは有用かもしれない
と、考えました。
1952年3月に躁病の患者さんにクロルプロマジンを投与しました。
これを皮切りに、統合失調症の患者さんにも使われるようになり
1953年には、クロルプロマジンの使用がフランス全土、
さらにはヨーロッパ全域にまで拡がりました。
クロルプロマジンの発見から5年後の1957年に
ハロペリドールは開発されました。
ハロペリドールはクロルプロマジンの50倍の力価を持っており
幻覚妄想などの症状に対する治療効果の高いお薬です。
クロルプロマジンやハロペリドールなどの
いわゆる第一世代の抗精神病薬には、副作用として
錐体外路症状が起きやすいという欠点がありました。
1971年錐体外路症状が少ない抗精神病薬としてクロザピンが
ヨーロッパで使用されるようになりました。
しかし、クロザピンの使用により致死的な副作用である
無顆粒球症が惹起されることが報告されました。
そのため1975年にクロザピンは生産が停止されました。
一方、クロザピンの効果を見直す動きもあり、
1989年にアメリカで、他の治療薬で効果が乏しい患者に限った
クロザピンの使用が再開されました。
1990年代にはいると、錐体外路症状が生じにくい新しい抗精神病薬が
次々と発売されました。
この時期に発売された抗精神病薬は第2世代抗精神病薬といわれています。
第2世代抗精神病薬は3つのタイプに大きく分けることができます。
- セロトニン2A受容体遮断作用が強いタイプ
- 多数の受容体を遮断し、ドパミンD2受容体への親和性が低いタイプ
- ドパミンD2受容体の部分作動薬
2009年日本でも治療抵抗性の統合失調症の患者さんにクロザピンが
使用可能になりました。
副作用が生じてもすぐに対応できるような仕組みがなされていることが
販売の条件になっています。
安全性を担保するために、医療機関や薬局は事前に
「クロザリル患者モニタリングサービス」への登録を済ませることが義務付けられています。
そこで白血球を含めた検査データが受診のたびにチェックされるシステムになっています。
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