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2014年5月4日日曜日

妊婦に禁忌の薬は本当に投与してはいけないのか






2014年4月産婦人科診療ガイドラインが改訂されました。



妊娠中の薬物投与について、産婦人科診療ガイドラインでは「添付文書上いわゆる禁忌の医薬品のうち、特定の状況下では妊娠中であっても投与が必須か、もしくは推奨される代表的医薬品は?」というクエスチョンを載せています。

添付文書は医薬品に関する唯一の公的な文書であり、保険医はその記載に従うことが義務付けられています。添付文書の「使用上の注意」の項の中には「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」という項目が設けられています。妊婦、産婦、授乳婦等への医薬品の投与にあたっては、その記載に留意する必要があるのです。この「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項目の記載内容が、添付文書における「妊娠と薬」に関する情報のすべてです。

添付文書は「妊娠と薬」に関する重要な情報源ではあるのですが、その内容に対しては様々な問題が指摘されています。

添付文書上妊婦に対して使用禁忌と読み取れる医薬品の多くは、以下を含んでいます。
・胎児への有害作用がヒトで証明されている医薬品ではない。・動物実験で示唆されるもののヒトでは胎児有害作用が否定的な医薬品。・より安全性が高いと確認されている代替医薬品の選択枝がある医薬品。・製造業者又は輸入業者が妊婦に投与してもらう必要がないと判断しただけの医薬品。

添付文書の記載が残念ながら必ずしも正確ではないのが現状です。
(国も万が一が起きた時、責任を取りたくないのでしょう)

こういった問題に加え、日本では「妊娠中に投与しないこと」と記載されている薬物が欧米と比較してかなり多いことが挙げられます。

添付文書通り杓子定規に従うと、妊婦禁忌の薬剤を飲み続けて治療をしなければならない病気にかかっている女性は妊娠自体が難しいということになります。

例えば、アザチオプリンやシクロスポリン、タクロリムス水和物といった免疫抑制薬が挙げられます。臓器移植後の患者さんにおいては移植臓器の拒絶反応を抑えるために、これらの免疫抑制薬を継続的に飲み続ける必要があります。
これら3剤については、明らかな催奇形性や胎児毒性は指摘されていません。ガイドラインにおいては臓器移植後、またはステロイド単独では効果が不十分な膠原病に対し、て妊娠中であっても投与が必須かもしくは推奨されるとしています。


最近では、インターネット経由で患者も実際の添付文書を目にすることができます。また、当研究会のようなブログでも、妊婦と薬に関する情報を手にすることができます。その際、「妊娠中は投与しないこと」と言う記載は、患者さんの混乱をきたすことも起こりえます。


妊娠中の投与については個々の症例において慎重に判断することが求められています。


妊婦と薬についてのお問い合せは・・・
■国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
厚生労働省事業として妊娠と医薬品に関する内外のデータを網羅的に集積しています。患者である女性自身が相談を申し込むことができます。妊娠後のみならず妊娠前からの相談も受け付けているので。
相談の具体的手順についてはホームページ参照してください。

あるいは、お電話でも可能です。

■虎の門病院「妊娠と薬相談外来」(完全予約制)
患者である女性自身に電話で予約してください。妊娠後のみならず妊娠前からの相談も受け付けています。