鉄欠乏性貧血は、慢性腎臓病においてよくある合併症です。心血管疾患の発症リスクを高め、死亡率の上昇にも関与します。そのため、慢性腎臓病患者における鉄欠乏性貧血に関して、cardio-renal anemia (CRA)syndromeという新たな疾患概念が提唱されるようになっています。
CRA症候群(ブログ:井蛙内科開業医/診療録)
医薬ジャーナル 2006年9月号(Vol.42 No.9)
あらためて、腎性貧血の是正が慢性腎不全の患者における重要な治療の一つとして位置づけられるようになってきました。
2014年、新規経口高リン血症治療薬のクエン酸第二鉄水和物(商品名リオナ錠250mg)が発売されました。新規リン吸着剤であり、消化管内で鉄とリン酸が結合し体内へのリンの吸収を抑制することにより、血清リン濃度を低下させる効果があります。
クエン酸第二鉄水和物は、鉄がリンを吸着する作用を利用した薬剤ですが、鉄分の補充は鉄欠乏性貧血に有効であることから、理論的に考えて血中リン濃度の是正だけでなく、腎性貧血の改善効果も期待できます。
これを、検証した報告が米国腎臓財団(NKF)の年会でなされました。
透析導入前の慢性腎臓病患者さんにクエン酸第二鉄を12週間投与したところ、
トランスフェリン飽和度が開始前の22%から32%に増加していました。
(プラセボ21%→20%)
血中フェリチン値は開始前116ng/mLから189ng/mLへと上昇しました。
ヘモグロビン値は開始前10.5g/dLから11.0g/dLに増加していました。
(プラセボ10.6g/dL→10.4g/dL)
これら結果から、クエン酸第二鉄製剤が腎性貧血を改善すること、ひいてはエリスロポエチン製剤の使用量を減らすことができる可能性を示唆しています。