肺高血圧症は、予後があまり良くない病気の一つです。
心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の内膜と中膜が厚くなり、血液が通りにくくなってしまい肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。
1991年発症後の平均生存期間は未治療の場合2.8年と報告されていました。
日本においては1999年のプロスタグランジンI2(静注用フローラン)持続静注療法の認可によって、肺高血圧治療に画期的成果が得られるようになりました。
フローランは最も肺高血圧の状態を改善させる薬剤となっています。
しかし、フローランの持続静注療法は中心静脈から持続投与しないといけません。高温条件下では不安定になるといった問題点もあります。そこで、内服薬の開発が期待されていました。
1999年のプロスタグランジンI2誘導体のベラプロストが原発性肺高血圧症に対して適応となったのを皮切りに、
2005年にエンドセリン拮抗薬ボセンタン(トラクリア)が、
2008年にはホスホジエステラーゼ5阻害薬シルデナフィル(レバチオ)が登場しました。
その後も続き、
長時間作用型のプロスタグランジンI2誘導体ベラプロスト徐放薬(ケアロードLA)、
ホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィル(アドシルカ)、
エンドセリン拮抗薬アンブリセンタン(ヴォリブリス)
も発売されました。
これら内服薬は、3剤併用療法(プロスタグランジンI2誘導体、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、エンドセリン拮抗薬)がスタンダードとなっています。フローランの持続静注療法には及びませんが、平均肺動脈圧をかなり改善させることができるようになりQOLも格段に良くなってきています。