胃の中に寄生しているピロリ菌は何を餌にしているのでしょうか。
胃は食物が入ってくる臓器です。ピロリ菌はその食物を餌にしているのでしょうか。少なからずその食物から直接栄養を得ている可能性はあります。しかし、胃の中の食物はまだ十分に分解されておらず、栄養分として利用するにはあまり向いていません。つまり、胃の中の食物から得る栄養分は限定的だと考えられます。
ピロリ菌は自分で必要な栄養分を作り出すことがあまり上手ではありません。そのため外部からの栄養にかなり依存しています。例えば、糖やアミノ酸の多くを外から取り込み、菌体をつくるための材料及びエネルギー源として利用しています。また、コレステロールを取り込み自らの膜脂質を強化するために利用しています。
Shimomura H, et al. (2009) Steroids mediate resistance to the bactericidal effect of phosphatidylcholines against Helicobacter pylori. FEMS Microbiol Lett 301: 84-94.
ピロリ菌の生息している場所は胃粘膜の粘液ゲル層です。栄養が多くある場所に生息していると予測できますから、おそらく胃粘液に含まれる成分から栄養分を得ているのでしょう。胃粘液の主成分は糖タンパク質やムチンですから、これらを栄養にしていると考えられています。コレステロールに関しては粘液ではなく胃粘膜の上皮細胞から得ているという報告がなされています。
Wunder C et al. (2006) Cholesterol glucosylation promotes immune evasion by Helicobacter pylori. Nat Med 12: 1030-1038
けれども、ピロリ菌が上皮細胞を餌にするために破壊しているわけではないようです。宿主が死んでしまっては菌自体の命も危ぶまれますので、宿主の命が脅かされるようなことはしないと考えられます。