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2014年5月30日金曜日

おねしょを叱るのは、逆効果





なぜ、おねしょをしてしまうのか

睡眠中は、尿量を少なくする「抗利尿ホルモン」が脳から分泌されます。そのホルモンのおかげで、尿はたくさんはたまりません。また、尿をためておく膀胱は成長とともに大きくなります。しかし、成長には個人差があります。
抗利尿ホルモンを作る力が未熟だったり、膀胱が大きくなっていなかったりするとおねしょが起こります。
原因によって、「抗利尿ホルモンの分泌が少ないタイプ」「膀胱が小さいタイプ」「その両方が見られるタイプ(混合タイプ)」の3つに分けられます。


おねしょは自然に治る

ほとんどのおねしょは、年齢が上がるにつれて自然になくなります。
一般に小学校低学年で10~15%、高学年で約5%の子供におねしょがみられるといわれています。小学生になったのにおねしょが治らないと、焦る必要はありません。しかし、なかには抗利尿ホルモンを作れない病気が隠れていたり、日中も漏らしてしまう場合は、膀胱の働きに問題があるケースもあります。また、小学校では野外活動や修学旅行などお泊り行事などもあるので本人も気にするようになります。6歳を過ぎても続く場合は、一度小児科に相談してみるとよいでしょう。


家庭でできるおねしょ対策

抗利尿ホルモンの分泌には、深く長い睡眠が必要です。夜更かしをせず、規則正しい睡眠を習慣にしましょう。

夕方以降は水分を摂取しすぎないようにします。また、お菓子や塩辛い食事を夜摂ると喉が渇きやすくなるので気をつけましょう。必ず寝る前にはおしっこをする習慣付けを行いましょう。

膀胱はトレーニングで大きくなります。幼児期は、おもらしをしないようにこまめにトイレに行かせがちです。そのため膀胱が十分に大きくなっていないことがあるのです。小学生になると平日の授業中はおしっこを我慢する機会が多くなりますが、休日にも日中は我慢する練習をさせるのもよいでしょう。トイレに行きたくなった時に、「もうちょっと我慢できる?」と軽く促してみましょう。

身体が冷えると尿量が増えます。冬は寝る前に入浴したり、寝具を温めたりして体が冷えないようにしましょう。暑い夏でも、エアコンをガンガンきかせた部屋では寝かさないようにしましょう。

成功回数が多くなれば、子供も親も自信がついてきます。弧度には決してプレッシャーをかけないように!


おねしょの治療

病院で何らかの治療が必要と判断される場合、まず規則正しい睡眠習慣、適切な水分摂取、膀胱トレーニングなどの生活指導が行われます。その効果を見ながら、必要に応じて薬による治療が検討されます。タイプに合わせて、抗利尿ホルモン剤や膀胱の働きを整える抗コリン剤などが使われます。正しく使えば大きな副作用のないお薬です。


おねしょが再発したら

時々おねしょがみられる程度であれば気にする必要はありません。もし、再び習慣的におねしょをするようになってしまった場合は、病気の可能性を疑い医師に相談しましょう。


おむつを使うとおねしょが長引くのはウソ

おむつを使うことでおねしょが長引くことはありません。子供が安心して気持よく眠ることが大切です。選択する負担も減り、親の精神衛生上よいことですので子供が嫌がらなければ使ったほうがよいです。


おねしょとの上手なつきあいかた

子供を夜中に起こしてトイレに活かせるのだけは絶対にやってはいけません。睡眠のリズムが崩れて抗利尿ホルモンを作る力の発達が悪くなります。おねしょの改善には逆効果です。
おねしょは生理現象です。叱ったり怒ったりしてもなくなりません。子供の劣等感を強くするだけです。絶対叱らないでください。おねしょは成長と関係しています。生活習慣の改善効果が現れるのは、数ヶ月から数年先のことです。焦りは禁物です。

おねしょとは「起こさず、怒らず、焦らず」付き合っていきましょう。



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2014年5月29日木曜日

ラコールNF配合経腸用半固形剤





ラコールNF配合経腸用半固形剤は、イーエヌ大塚製薬株式会社が開発した半固形化した経腸栄養剤です。既に承認されている経腸栄養剤の「ラコールNF配合経腸用液」と有効成分の種類及び含量は同一です。

なぜ、半固形なのか?

近年、臨床の現場では液体の経腸栄養剤に増粘剤(とろみ剤)を加え、半固形に調製して胃ろうから短時間で投与する方法がとられることがあります。

半固形製剤を調整する場合、安定性など疑問視されることや、一点の品質を担保することが困難であり、半固形化された製品を望む声が多くありました。

液状の栄養剤を摂っていると、胃が運動しなくても腸へ流れていくので、次第に胃が怠けてくるようになります。そこで、半固形の経腸栄養剤を投与することにより、胃が本来有している機能的な運動を引き起こさせることができます。
また、液状の経腸栄養剤では誤嚥性の肺炎や下痢が多く見られます。半固形にすることでこれらの発現を低下することが期待されています。


ラコールNF配合経腸用半固形剤の特徴

300~400kcalを5~10分で投与することが可能です・投与にかかる時間を大幅に短縮することができる製剤です。投与時間が減るということは、患者さんの負担が減るだけでなく、介護する人の負担も減らせます。

注意点

ある程度、自分の胃で消化しなくてはならないので、胃や食道を摘出した人には使えません。

粘度が高いので、経鼻チューブなどの細いカテーテルは使うことができません。


ラコールNF配合経腸用液との違い

  性状
液  :微茶白色の乳液
半固形:微褐白色のゲル  

  粘度
液  :5.51~6.52 mPa・s(25℃)
半固形:6500~12500 mPa・s(20℃)

  pH
液  :6.0~7.2 
半固形:5.8~6.3 

2014年5月27日火曜日

薬価基準収載のスケジュール





医薬品の薬価基準収載の時期やスケジュールは
「医療用医薬品の薬価基準収載等に係る取扱いについて」
(2014年2月12日付 医政発0212第6号、保発0212第9号)において示されています。



新医薬品・・・年 4 回(緊急収載を除き)

       標準月:2月(薬価改定年度は4月)、5月、8月、11月


報告品目、
新キット製品・・・年2回(5月、11月)


後発医薬品・・・年2回(6月、12月)


参考:
薬価基準制度の概要(病気の勉強は面白い)

http://byoukinobenkyou-interesting.blogspot.jp/2016/01/blog-post_51.html


■収載までの流れ

まずメーカーが「承認申請」を行います。

薬事・食品衛生審議会の医薬品第一・第二部会または薬事分科会で審査されます。
そこで、承認してもいいか話し合われ、よければ承認が「了承」されます。


承認了承の後(標準では)1~2ヶ月で承認されます。
適応拡大や効能効果追加に関しては、薬価収載はありませんので、承認時点で使用できます。


承認後90日以内に薬価収載されます。


原則、薬価収載後3ヶ月以内に製造販売し医療機関に供給されます。



注意したい点が一つあります。
承認了承の時点で、マスコミ等から報道がありますが、
「承認了承」と「承認」を勘違いしないことです。

勘違いのため、効能効果追加において、
承認了承の時点で早まって使用しているケースが見られます。
ブログやツイッターなどで「承認」と「承認了承」を混同して
誤った情報を流しているところもありましたので注意が必要です。

最近の話だと、ジャヌビア・グラクティブ、ネシーナの適応拡大。
平成26年4月25日に承認了承されましたが、
実際に承認されたのは5月23日でした。
あるブログでは4月の時点で「他の糖尿病薬との併用に関する制限がなくなった」とフライング。
気をつけましょう。




2014年5月21日水曜日

肺がん治療薬の変遷





2002年ゲフィチニブ(イレッサ)が承認されました。
そして2004年、EGFR遺伝子変異が発見され10年余りが経過しました。

現在、EGFR遺伝子変異陽性肺がんのオーダーメード医療が進展しています。
日本において2013年にエルロチニブ(タルセバ)がEGFR遺伝子変異陽性肺がんの初回治療に適応が拡大されました。
2014年1月には、次世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のアファチニブ(ジオトリフ)が承認されました。

アファチニブは耐性2次変異T790MおよびErbB受容体ファミリーを不可逆的に阻害します。LUX-Lung3試験では、初回治療においてアファチニブ群ではシスプラチン/ペメトレキセド群と比較して、無増悪生存期間を有意に改善しました。

今後は、エルロチニブとアファチニブの使い分けが臨床上の議論になるでしょう。

Sequist LV, at al(2013)Phase III Study of Afatinib or Cisplatin Plus Pemetrexed in Patients With Metastatic Lung Adenocarcinoma With EGFR Mutations:J Clin Oncol. ;31(27):3327-3334


2007年、EML4-ALK融合遺伝子が発見されました。
2012年にはALK阻害薬クリゾチニブ(ザーコリ)が承認されました。

第二世代ALK阻害薬として、CH5424802(アレクチニブ)、LDK378などが開発中です。

アレクチニブはクリゾチニブに比べ、選択的でより強いALK抑制効果を有し、耐性二次変異に対しても効果を有します。国内で実施された治験では化学療法前治療歴のあるALK陽性肺がんにおいて、奏効率94%、1年無増悪生存期間83%と良好な抗腫瘍効果が得られています。

Seto T, et al(2013) CH5424802 (RO5424802) for patients with ALK-rearranged advanced non-small-cell lung cancer (AF-001JP study): a single-arm, open-label, phase 1-2 study.:Lancet Oncol. Jun;14(7):590-8.

今後、新しい分子標的薬の登場によって肺がん治療はますます進歩していきます。

フォシーガ錠(ダパグリフロジン)の一包化




フォシーガ錠の一包化はメーカーは推奨していないそうです。

「推奨しています」なんて言うメーカーはいないと思いますが。

以下の、過酷試験のデータを参考に医療者側で判断することになります。


温度 25℃
湿度 60%RH
保存形態 ペトリ皿
保存期間 12ヶ月

【結果】安定



多剤との一包化のデータはありません。

高温多湿を避け、短期間なら一包化できそうですね。


粉砕に関しては、データはありませんでした。

2014年5月20日火曜日

メディパルHDの「プレサス(PRESUS)」



プレサス(PRESUS)とは、ファーマシー・リアルタイム・サポート・システムという医薬品卸大手のメディパルHDが調剤薬局向けに販売提供している医薬品の自動発注システムのことです。



薬局の在庫管理の現状は、薬剤師が経験というか勘で発注を行っています。

ともすると、薬剤師も人ですから忘れることや勘が鈍ることもあります。

欠品をして患者さんを困らせることもあります。

足りなかった薬を宅配便で配送するコストも掛かります。



しかし、システム導入により発注精度が高まることで欠品をほぼゼロにできるらしいです。

品切れで患者さんを困らせることなく、配送コストも減らせる。

薬局にとっても顧客の囲い込みにつながります。


プレサス(PRESUS)はドラッグストア等の小売業では一般的なPOS(販売時点情報管理システム)と似た仕組みです。


今までは薬の在庫情報とレセプトの入力システムを別々に管理していましたが、これらを統合したものがプレサス(PRESUS)です。


調剤情報と在庫情報から需要を予測して自動発注します。

勧告リストが出力され、そのリストを確認するだけです。

煩雑な発注業務に時間を咲かれることはなくなります。

空いた時間を薬歴に割けるのです。


ピッキングはバーコードを専用端末で読み取って行うので薬の取り違えのリスクが軽減されます。


レセコンと在庫システムが連動しているので、患者さんが来店された時に、すぐお薬を用意できるか、お勧めできるジェネリックがあるかどうかがわかるようになります。


でも、お高いんでしょ?

導入の初期費用は1店舗あたり約400万円システム利用料は5万円程度月額です。

これならレセコンと同等か割安ですね。


プレサス(PRESUS)は2012年ころから調剤薬局の薬樹(神奈川県)へ試験的に導入され、自動発注などの精度を試験してこられたそうです。

その、薬樹では入荷行数は約20%減り、欠品行数は1.8%から0.3%へ減少したそうです。
すごいですね。


薬樹株式会社と株式会社メディパルホールディングスによる「資本・業務提携基本合意書」締結に関するお知らせ
http://www.medipal.co.jp/news/pdf/2014/140520.pdf


2014年5月17日土曜日

牛乳アレルギーの患者さんにタンナルビンの処方






牛乳アレルギーがある患者さんに以下の処方出されていました。

Rp.タンニン酸アルブミン 3g 1日3回 毎食後 7日分


タンニン酸アルブミンは服用すると口の中では溶けず、主に十二指腸で膵液により分解されてタンニン酸を遊離します。タンニン酸は渋みのもとになるものです。組織のタンパク質と水に溶けない沈殿を作ります。つまり、口の中や胃では作用は現れません。腸に届いて初めて徐々にタンニン酸を遊離して作用を示すのです。現在タンニン酸アルブミンは下痢止めとして小児科や内科で広く使われています。


しかし、牛乳アレルギーのある患者さんがタンニン酸アルブミン(タンナルビンなど)を服用すると、ショックやアナフィラキシー様症状を起こすことがあるので投与しないこととなっています。

タンニン酸アルブミンに含まれるタンパク質は牛乳に含まれるカゼインです。タンニン酸アルブミンは乳製品そのものです。牛乳アレルギーを有する患者さんには十分注意が必要な薬剤です。



今回は、患者さんがお医者さんにアレルギーについて告げていなかったそうです。
疑義照会で、タンニン酸アルブミンと同じ収斂薬のアドソルビンを提案。処方変更となりました。
(教科書的には次硝酸ビスマスなのでしょうが、在庫がないので)


タンニン酸アルブミンが処方されている場合は、過去に食品、特に乳製品に対するアレルギーやアナフィラキシーショックがあったかどうかを聞き取ることが重要です。

患者さんは、牛乳や乳製品によるアレルギー、アナフィラキシー様症状の経験がある場合は、診察時に医師や薬剤師にそのことを必ず告げましょう。



2014年5月16日金曜日

新規経口抗凝固薬(NOAC)





これまで抗凝固薬といえば、ワルファリンでしたが
納豆やクロレラ、青汁の摂取禁止や、他の薬との飲み合わせや定期的な検査の必要性など
問題もありました。

これら問題を解決するために新規経口抗凝固薬は開発されました。

新規経口抗凝固薬は

Novel
Oral
Anti-
Coagulant

の頭文字をとってNOACと呼ばれています。

2011年にダビガトラン(プラザキサ)が発売され
2012年にリバーロキサバン(イグザレルト)
2013年にアピキサバン(エリキュース)が発売されました。

最近は、もう「新規」ではなくなっているという点から

Non vitaminK antagonist
Oral
Anti-
Coagulant

という意味のNOACでいいんじゃなかという意見もあります。


NOACの適応は
「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性閉塞症の発症抑制」です。

この非弁膜症性心房細動とはなんでしょうか。
これは「人工弁置換とリウマチ性僧帽弁膜症を有さない心房細動」
のことです。
つまり、人工弁を入れている患者さんや、リウマチ性僧帽弁膜症の方は
NOACの使用は出来ず、ワルファリン一択ということになります。

同様の考え方で、NOAC禁忌例では、ワルファリンを選択しなくてはなりません。


心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)


NOACの減量基準
臨床の現場ではNOACの減量をどうするかが問題になっているように感じます。
一般内科や循環器内科では安全性を重視され低用量を好み、
脳卒中専門医は効果重視で標準用量を好む傾向にあるきらいがあります。

しかし、NOACは標準用量と低用量を好みで選択するような薬剤ではありません。
減量にはルールが定められています。
もちろんルールを逸脱して減量することがあれば問題となります。

ダビガトラン
用法・用量 
通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。 

用法・用量に関連する使用上の注意 
1. 以下の患者では、ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。  
・中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者  
・P-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者  
2. 以下のような出血の危険性が高いと判断される患者では、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。  
・70歳以上の患者  
・消化管出血の既往を有する患者

このように、ダビガトランの添付文書には記載があります。
減量については考慮する基準はありますが、
「減量をしなければならない」ルールは記載されていません。


リバーロキサバン
用法・用量 
通常、成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する.なお、腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する. 

用法及び用量に関連する使用上の注意 
1. クレアチニンクリアランス30~49mL/minの患者には、10mgを1日1回投与する. 
 2. クレアチニンクリアランス15~29mL/minの患者では、本剤の血中濃度が上昇することが示唆されており、これらの患者における有効性及び安全性は確立していないので、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する. 

このように、リバーロキサバンの添付文書には記載があります。
腎障害の程度によって減量をします。「適宜増減」ではありませんので、
減量基準に合致すれば。減量しなくてはなりません。
また、食後投与が規定されている唯一のNOACです。


アピキサバン
用法・用量 
通常、成人にはアピキサバンとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg1日2回投与へ減量する。  

用法及び用量に関連する使用上の注意 
次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する。 
・80歳以上 
・体重60kg以下  
・血清クレアチニン1.5mg/dL以上 

このように、アピキサバンの添付文書には記載があります。
「適宜増減」ではありませんので、減量基準に合致すれば。
減量しなくてはなりません。


添付文書上の減量の基準に合致しないにも関わらず、医師の判断で減量し、
その患者さんが脳梗塞を発症した場合、問題となります。無論、訴訟リスクを伴います。

減量の基準に合致しないが出血リスクを回避するために減量する場合は、
その旨を患者さんやそのご家族に説明と同意を得てカルテに記載しておくほうが無難だと思われます。

レボチロキシン(チラーヂンS)服用時に注意したい飲み合わせ




甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシン(チラーヂンSなど)は甲状腺機能低下症や甲状腺腫などに用いられる薬です。

鉄剤やアルミニウム含有胃薬やカルシウム製剤などの金属含有製剤、胆汁酸を吸着するコレスチラミンやコレスチミド、セベラマーリン酸塩などととの併用により、吸収が阻害され薬効薬理が低下することが知られています。

医薬品以外にも、鉄、カルシウムやアルミニウム等は市販のOTC医薬品やサプリメントにも含まれています。

知らないうちにこれらとレボチロキシンとの同時投与がされているケースが有ります。注意が必要です。

効果減弱のメカニズム

金属含有製剤の併用(同時投与)によりレボチロキシンの吸収が低下するメカニズムは、レボチロキシンと金属が消化管内でキレートという複合体を形成し、吸収されにくくなることが考えられています。

コレスチミドやコレスチラミンやセベラマーリン酸塩、球形吸着炭については特定の分子を吸着結合させる性質を有するため、レボチロキシンを吸着し、吸収を阻害すると考えられています。


以上に上がっている薬は、レボチロキシンに特別ではなく抗生物質やワルファリンなどにも結合して効果を減弱させる恐れがあるので注意が必要です。


では、どう対処したらよいでしょうか。


レボチロキシと金属含有製剤などとの相互作用を回避するには、処方の中止や代替薬への変更により両薬剤を併用しないことの他に、投与時間をずらすことで相互作用の影響を回避、もしくは軽減する方法が考えられます。

スクラルファートとレボチロキシンを併用した臨床試験や併用症例では、スクラルファートの投与8時間後にレボチロキシンを投与した場合や、逆にレボチロキシン投与の4.5時間後にスクラルファートを投与した場合では、相互作用によるレボチロキシンの吸収低下作用が小さくなったという報告があります。

Havrankova J, Lahaie R.(1992) Levothyroxine binding by sucralfate. Ann Intern Med;117:445-446.

カルシウム製剤とレボチロキシンとの相互作用では両剤投与時間を4時間以上あけることにより吸収低下を回避できると報告されています。

Schneyer CR.(1998)Calcium carbonate and reduction of levothyroxine efficacy.JAMA. Mar 11;279(10):750.


しかし、レボチロキシンの吸収低下と投与間隔の関係や製剤ごとの相互作用の強さの違いは十分な検討がなされていません。

今後の検討が必要です。

両剤の投与時間をずらして併用する場合には、レボチロキシンの薬理効果低下に十分注意する必要があります。

相互作用については服用間隔や個人差によるところが大きいことが知られています。

血清TSH濃度や遊離T4などの測定を行い、レボチロキシンの投与量を調整することが必要です。





HbA1cから平均血糖値を推測するには





HbA1cは1~2ヶ月の平均血糖値を示す指標です。
糖尿病の治療をされている方ですと
HbA1cの値が7%以下になるように
と、お医者さんから言われたりすると思います。

HbA1cで7%を目標にしろと言われても、ピンとくるでしょうか。

血糖値は簡易自己血糖測定器で自宅でも測ることができますが、
HbA1cは測定できません。
毎日血糖値を測定されている方もおられると思います。

HbA1cの値から、身近な血糖値が推測できるとしたら便利だと思いませんか。

HbA1cと平均血糖値の関係を示したものが下のとおりです。

HbA1c(%):平均血糖値(mg/dL)
6 :126
7 :154
8 :183
9 :212
10:240
11:269
12:298

Nathan DM, et al.(2008)Translating the A1C Assay Into Estimated Average Glucose Values. Diabetes Care. 31: 1473-1478.


これを見ると、HbA1cの値が7%というのは、
平均血糖値で150mg/dL程度だということがわかると思います。
もちろん、平均です。
血糖値は1日のうちに変動を繰り返します。
空腹時だと110~130mg/dL、食後は200mg/dL近くになることもある
ということは理解しておかなくてはいけません。

ただ、上の表を覚えるのは少し骨が折れますね。
そこで概算ですが、以下の式を使うと簡単に求めることができます。。

(HbA1c-2)×30=だいたいの平均血糖値

HbA1cが7%ですと・・・
(7-2)×30=150mg/dLになります。


もちろんHbA1cから平均血糖値を求めるのとは逆に、
血糖値からHbA1cの予測もできます。

HbA1cと平均血糖値の関係を理解して、活用してみてください。

2014年5月15日木曜日

タペンタ錠の廃棄方法



タペンタ錠は、改変防止技術(TRF:Tamper Resistant Formulation)が施された製剤です。これは、誤用や乱用などを防止する目的で施されています。

誤用:誤って噛んでしまい製剤の徐放性をなくす。 
乱用:粉砕して鼻からすったり、水に溶かして自己注射したり、 噛んで即効性やその他の効果を期待すること。


TRF製剤(改変防止技術)により、水やエタノールに溶かそうとしても粘性のゲルになってしまうそうです。

TRF製剤(改変防止技術)により、錠剤がとても硬くなっていてミキサーで粉砕しようとすると刃が傷んでしまうほどらしいです。

麻薬の錠剤を医療機関で廃棄するときには、再使用不可能な状態にするために粉砕後水に溶かし放流したりします。
これができないタペンタはどのようにしたらよいのでしょうか。

メーカーに聞いてみました。

錠剤を焼却するか、粘着力の強いガムテープ等で錠剤を包み、錠剤が見えない状態にして、通常の医薬品と同様に廃棄するそうです。




がん疼痛治療剤 タペンタドール
http://yakuza-14.blogspot.jp/2014/02/blog-post_25.html

2014年5月14日水曜日

脂肪肝から肝癌になりやすい人とそうでない人





脂肪肝には肝硬変、肝細胞がんに進展しやすい人とそうでない人がいます。
見分け方はあるのでしょうか。


非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、2つに分けることができます。
  • 病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL)
  • 肝硬変や肝がんに進展しうる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)


NASHは肝生検により肝細胞内の大脂肪滴と
肝細胞の風船様変性を認めることにより診断されます。

しかし、NAFLDの患者さん全員に
肝生検を実施することは現実的ではありません。

さらに肝生検にはサンプリングエラーや合併症もあります。



NASH患者さんの30~50%に肝線維化が進展することが知られています。

以上から、肝線維化の予測式が病気進展を推測できる目安になることが考えられます。

肝線維化の予測式の1つにFIB-4 indexがありあます。

これは日本人NAFLD患者さんに適した日常診療で評価可能な予測式です。


FIB-4index
=(年齢×AST)/(血小板数×ALT^1/2)


1.45以下で肝線維化非進展例
2.67以上で肝線維化進展例


Sumida Y et al.(2012) Validation of the FIB4 index in a Japanese nonalcoholic fatty liver disease population. BMC Gastroenterol : 12:2





NAFLD/NASH診療ガイドライン〈2014〉

南江堂
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治療抵抗性高血圧 4剤目の降圧薬




カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、チアジド系利尿薬の3剤併用を行っている患者さん。
血圧のコントロールがうまくいかないとき、薬を増やすならばどの降圧剤がよいでしょうか。


利尿剤を含む適切な用量の3剤の降圧薬を投与しても目標血圧まで下がらない状態を「治療抵抗性高血圧」といいます。
どうやって治療抵抗性高血圧かどうか鑑別するかというと

・白衣高血圧ではないかどうか・服薬アドヒアランスは良好か・生活習慣は是正されているか(食塩摂取、肥満、飲酒)・睡眠時無呼吸症候群・降圧薬の不適切な選択や用量、薬効持続不十分・腎機能低下や体液量増加、利尿薬未使用・多剤薬、食品による昇圧や降圧薬減弱

以上、これらの関与がないにもかかわらず、血圧コントロールが不十分であれば治療抵抗性を疑い、4剤目投与を考えます。

4つ目の降圧薬としては、
アルドステロン拮抗薬(アルダクトンA、セララ)追加の有効性が報告されています。
ついで、交感神経抑制薬(α・β遮断薬、β遮断薬、α遮断薬)、さらにはαメチルドパなどの中枢性交感神経抑制薬、血管拡張薬が候補になります。また、原則として同じクラスの薬剤の重複は避けます。例外として、ジヒドロピリジンと非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の併用、レニン-アンギオテンシン系阻害薬の2種類併用、チアジド系とループ利尿薬の併用も行われることがあります。


Calhoun DA,et al,(2008)Resistant hypertension: diagnosis, evaluation, and treatment. A scientific statement from the American
Heart Association Professional Education Committee of the Council for High Blood Pressure Research. Hypertension.; 51: 1403 19.

Nishizaka MK, et al(2003) Efficacy of low dose spironolactone in subjects with resistant hypertension. Am J Hypertens. 2003; 16: 925 30

認知症のワクチン




アルツハイマー型認知症に対するアミロイドワクチンの治験が行われていました。残念ながら、副作用としての脳炎が起こったため中止となってしまったそうです。


老人斑アミロイドを除去してもあまり意味はない

アミロイドワクチンを使うことで老人斑は消えるそうですが、臨床的有効性は認められませんでした。アミロイド抗体を用いて脳のアミロイド蓄積を減少させても有効性は認められませんでした。

しかし、一部の抗体では軽症者に限ってみれば若干の有効性が認められ、アミロイドを標的にする妥当性はあると考えられています。


最近の研究では、認知症発症の20年も前から脳にアミロイドが溜まり始め、10年遅れてタウが溜まり始めることがわかっています。
認知症を発症してからアミロイドやタウを除去しても、遅いのではないかと考えられるようになりました。

そこで、認知症の症状が出る前だが、脳にアミロイドの沈着が見られる段階のものを診断し、その時点で治療を開始すれば認知症の発症を遅らすことができるのではないかと考えられます。

欧米では、認知症発症前に対するアミロイド抗体を用いた治験が行われています。2017~2020年ころに結果が出る予定です。これがうまく行けば、50歳代、60歳代で脳の検査を行い、アミロイドが陽性であれば治療を行うという時代が来るかもしれません。認知症を発症していなくても、バイオマーカーで検査し、治療を開始するのです。



Vaccination Therapy for Alzheimer’s disease, updated(第125回日本医学会シンポジウム)


Takeshi Tabira(2009)Vaccination therapy for Alzheimer’s disease;Clin Neurol, 49: 848―850

アルツハイマー病の免疫療法 −最近の話題(老年期認知症研究会誌)

2014年5月13日火曜日

硝酸イソソルビドと一硝酸イソソルビド



沢井製薬からお知らせが出ています(2014年3月)
硝酸イソソルビド徐放錠20mg「サワイ」と一硝酸イソソルビド錠20mg「サワイ」の 販売名類似について
http://med.sawai.co.jp/file/so_150.pdf

一般名処方が増えている中、調剤ミスを増長するような名称ですね。注意してみないと間違えてしまいそうです。

硝酸イソソルビド(フランドル錠)と一硝酸イソソルビド(アイロクール)の違いは何でしょうか。



日本で使える硝酸薬には、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビドがあります。硝酸薬は細胞の中で一酸化窒素を発生し、血管を拡張させます。狭心症の治療薬として使用されます。

硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビドは内服で使用されます。錠剤です。

通常、内服薬は腸管から吸収されて、門脈を経由した際に肝臓で分解されてしまいます、これを初回通過効果(First pass effect)といいます。
硝酸イソソルビドは代謝されて一硝酸イソソルビドになり効果をしめします。

一硝酸イソソルビド自体は肝初回通過効果を受けません。
そのため、投与後の血中濃度は硝酸イソソルビド投与時と比べ安定します。

また、一硝酸イソソルビドは硝酸イソソルビドに比べて作用が長く持続します。



2014年5月12日月曜日

肺高血圧症の治療





肺高血圧症は、予後があまり良くない病気の一つです。

心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の内膜と中膜が厚くなり、血液が通りにくくなってしまい肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。

1991年発症後の平均生存期間は未治療の場合2.8年と報告されていました。


日本においては1999年のプロスタグランジンI2(静注用フローラン)持続静注療法の認可によって、肺高血圧治療に画期的成果が得られるようになりました。

フローランは最も肺高血圧の状態を改善させる薬剤となっています。


しかし、フローランの持続静注療法は中心静脈から持続投与しないといけません。高温条件下では不安定になるといった問題点もあります。そこで、内服薬の開発が期待されていました。


1999年のプロスタグランジンI2誘導体のベラプロストが原発性肺高血圧症に対して適応となったのを皮切りに、
2005年にエンドセリン拮抗薬ボセンタン(トラクリア)が、
2008年にはホスホジエステラーゼ5阻害薬シルデナフィル(レバチオ)が登場しました。

その後も続き、
長時間作用型のプロスタグランジンI2誘導体ベラプロスト徐放薬(ケアロードLA)、
ホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィル(アドシルカ)、
エンドセリン拮抗薬アンブリセンタン(ヴォリブリス)
も発売されました。

これら内服薬は、3剤併用療法(プロスタグランジンI2誘導体、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、エンドセリン拮抗薬)がスタンダードとなっています。フローランの持続静注療法には及びませんが、平均肺動脈圧をかなり改善させることができるようになりQOLも格段に良くなってきています。

2014年5月7日水曜日

ボスミンは抗精神病薬と併用禁忌




精神科ドクターから問い合わせ。
「抗精神病薬とボスミン(アドレナリン、エピネフリン)は併用禁忌だけど、救急用医薬品として何を準備したらよいか」


アドレナリンは一般的には静注で強心剤として使われることが多い薬です。救急蘇生時の国際標準プロトコルACLSでも、心停止時に使われる第一選択薬としてあげられています。

アドレナリンはほとんどの抗精神病薬と併用禁忌なのですが、なぜでしょうか。

アドレナリンはα受容体とβ受容体に作用します。通常はα優位に作用して、血圧をあげます
しかし、抗精神病薬にはα遮断作用があります。
そのため、アドレナリンと抗精神病薬を併用するとノルアドレナリンがβ受容体優位に作用して血圧を下げてしまう危険性があります。

したがって、アドレナリンの代用としてはβ作用の弱いノルアドレナリンがよいでしょう。


■アドレナリンとの併用が禁忌ではない抗精神病薬。
・スルトプリド(バルネチール)
・スルピリド(ドグマチール)
・チアプリド(グラマリール)
・ネモナプリド(エミレース)



エネーボとエンシュアの違い





2014年3月27日、経腸栄養剤エネーボ配合経腸用液(アボット)が承認されました。

同剤は、国内で15年ぶりの経腸栄養剤の新製品となります。

2014年5月発売を予定しています。


近年、栄養に対する考え方は大きく変わってきました。
エネーボは新しい栄養基準に対応しているようです。

エンシュアの後継改良版という位置づけのエネーボですが、
どこがどう違うのかまとめてみました。


効果・効能は同じです。
「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給」。



1缶あたりのエネルギーが異なります。
エンシュアは1缶250mL:250kcalですが、
エネーボは250mL:300kcalです。


エネルギー構成比も変わっています(下図)
脂質を減らし必須アミノ酸(BCAA)の量を増やしたようです。
 

 

 




抗酸化作用のあるセレンや脂質代謝に関与するL-カルニチンを中心に整腸作用が期待できるフラクトオリゴ糖、糖代謝に関連するクロム、酵素の構成要素であるモリブデン、脂質の消化・吸収に関与するタウリンなどの栄養成分が、医薬品経腸栄養剤として初めて配合されています。

 
 






関連:
エネーボ配合経腸用液の特徴

ラコールNF配合経腸用半固形剤



2014年5月6日火曜日

エネーボ配合経腸用液の特徴




医療における栄養管理は、病気に対する治療効果を左右するといわれています。

すなわち、栄養管理も基本的な治療の一部であり、特に手術などのカラダに大きな負担をかける時には必須です。

一般的に、栄養管理には2種類あるとされています。

経静脈的投与と経腸的投与です。

手術をした後、患者さんへ経腸的投与が可能であれば、できるだけ絶食期間を設けずに、経腸・経管栄養投与を行うことが、早期回復、合併症の減少、入院期間の短縮に貢献すると考えられています。

ラコールやエンシュアなどの経腸栄養剤、特に半消化態経腸栄養剤に分類される栄養剤は、いずれも発売後10年以上経過しています。

 
10年以上の間に、栄養学は進歩し、また日本人の栄養環境も変化してきているので、それらに対応した栄養剤の登場が期待されていました。。

そこで、最新の日本人の推奨栄養所要量や臨床栄養学を反映した栄養剤であるエネーボ配合経腸溶液が開発されたのです。


エネーボの特徴

エネーボは、近年、推奨栄養所要量として設定されたクロム、モリブデン、セレンなどのミネラル類を含有しているのが特徴です。

これらミネラルを含有する医療用医薬品の半消化態経腸栄養剤ニーズは高かったのですが、日本では存在していませんでした。


また投与液量と投与時間を短縮するため、カロリーを高濃度(1.2 kcal/mL)に配合しています。

配合成分のバランスをとることで、タンパク質・エネルギー低栄養状態を予防・改善できるようになっています。



エンシュアと比較して新たに配合された成分について


セレン、クロム、モリブデン、タウリン、カルニチン及びフラクトオリゴ糖が新たに配合されました。。

セレンは、エネーボ2000 kcal中134 μg配合されています。
これは、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」における耐容上限量(成人男女において210~300 μg)を下回る量です。
セレンは、ヒトにとって必須な微量元素です。
セレンは、酸化障害に対する生体防御に重要なグルタチオンペルオキシダーゼ類の活性中心であり、抗酸化反応において重要な役割を担っています。

 
クロムは、エネーボ2000 kcal中208 μg配合されています。
これは、WHOが許容上限の目安として定めている摂取量(250 μg)より少ない量です。
なお、クロムの過剰摂取による有害事象は600~1000 μg/日で報告されています。
クロムは、正常な糖代謝、脂質代謝を維持するのに重要かつ必須な元素です。
特に血糖値の調節に対する作用が注目されています。

 
モリブデンは、エネーボ2000 kcal中226.7 μg配合されています。
これは、一般的な日本人での摂取量(225~300 μg/日)と同じ量です。
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」における耐容上限量(9 μg/kg/日)よりも低い量です。
モリブデンは酸化還元反応を触媒するモリブデン酵素の構成成分としてはたらきます。
モリブデン不足になると、頻脈、多呼吸、夜盲症などを引き起こすことがあります。

 
タウリンは、エネーボ2000 kcal中に300 mg配合されています。
参考として、普通の食事からのタウリン摂取量は、40~400 mg/日といわれています。
また、一般的に普及している栄養補給ドリンクのタウリン含有量は300~4000 mg/Lです。

EFSA Scientific Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food: SCIENTIFIC OPINION

タウリンには心機能を改善したり、肝機能改善したりするという報告があります。

 
カルニチンは、エネーボ2000 kcal中214 mg配合されています。
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」において摂取量の基準や耐容上限量は設定されていません。
一方、アメリカでの許容一日摂取量は20 mg/kg/日。スイスでの摂取上限は1000 mg/日となっています。


食安基発第0817001号、平成19年8月17日「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の食品衛生法上の取扱いの改正について」

カルニチンは脂質代謝に必須の成分です。

 
フラクトオリゴ糖はエネーボ標準量使用時に、一日摂取量の目安を上回る量が配合されています。
有害事象の発現はショ糖と比較して特に差はないという報告があります。
フラクトオリゴ糖は「ビフィズス菌の栄養となり、菌を増殖させる」などといわれています。
「おなかの調子を整える食品」、「ミネラルの吸収を助ける食品」として、フラクトオリゴ糖を関与成分とした特定保健用食品が許可されています。


ワルファリン併用には注意

エネーボにはビタミンKが含まれています。

ビタミンKはワルファリンと相互作用があるため、ワルファリンを服用している患者はビタミンKを多く含む食品の接種は禁止されています。

エネーボの標準量(2000 kcal)に含有するビタミンKは194.3 μgです。

モロヘイヤ及び青汁に含まれるビタミンKの量は可食部100 gあたり450~1970 μgです。
納豆については600~930 μgです。

エネーボの標準量に含有するビタミンK量はモロヘイヤや納豆よりも少ないとはいえ、相互作用が絶対起きないとはいえないので注意する必要があります。


エネーボ配合経腸用液
[効能・効果]
一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

[用法・用量] 
通常、標準量として成人には 1 日 1,000~1,667 mL(1,200~2,000 kcal)を経管又は経口投与する。経管投与では本剤を 1 時間に 62.5~104 mL(75~125 kcal)の速度で持続的又は 1 日数回に分けて投与する。経口摂取可能な場合は 1 日 1 回又は数回に分けて経口投与することもできる。ただし、通常、初期量は 333 mL/日(400 kcal/日)を目安とし、低速度(約 41.7 mL/時間(50 kcal/時間)以下)で投与する。以後は患者の状態により徐々に増量し標準量とする。なお、年齢、体重、症状により投与量、投与濃度、投与速度を適宜増減する。特に投与初期は、水で希釈して投与することも考慮する。




2014年5月5日月曜日

尿路結石予防するには、摂取する水分に注意する。





尿路結石の患者さんからの質問
「先生には水分を多く摂れといわれたが、どの程度とればいいのか?水分なら何を飲んでもいいのか?」


おしっこの量、尿量が低下していると尿路結石になりやすいと言われています。
尿量を増加させることによって、結石成分や発生原因にかかわらず予防となることが示されています。

どの程度、水分を摂ればいいのでしょうか。

予防に必要な1日のおしっこの量は2000mL以上。シスチン尿症では2500mL 以上とされています。
これだけのおしっこをするには相当の水分を取らなくてはなりません。
目安は、食事以外に1日2~2.5Lの水分を取る必要があります。

また、摂る水分の種類にも注意が必要です。



飲み物の種類によっては結石の素となる成分を多く含んでいます。

コーヒー、緑茶、紅茶はシュウ酸。

炭酸飲料やソフトドリンクは高濃度のリン酸。

アルコール類はリン酸、シュウ酸、プリン体を含み、
さらに尿を濃縮してしまうので推奨できません。



推奨されるのは、
お茶類ではシュウ酸が少ないので麦茶やほうじ茶。

そして、水。
カルシウムなどを含むミネラルウォーターについては、
影響はそれほどないと言われています。



日本尿路結石症学会 編 尿路結石症のすべて(医学書院)

図説 新しい尿路結石症の診断・治療



では、頻尿でお困りの患者さんで
尿路結石予防のために水分を摂取しなければならない場合どうすればいいのでしょうか。

頻尿の原因に多尿があります。多尿の定義は24時間尿量が40mL/kgです。
体重50kgの人で1日のおしっこの量が2000mLを超えると多尿となります。
尿路結石の予防に有効な尿量と多尿となる尿量はほぼ同じであるので、
予防のための水分摂取によって引き起こされる頻尿は避けられない場合があります。

対策はとしては、
頻尿の原因が多尿のためなのかどうかを確認する必要があります。
原因となる他の病気、
(尿崩症、中枢神経疾患、心不全、腎機能障害、糖尿病、高血圧、薬剤性)などがなく、
水分摂取による多尿が原因と考えられる場合は、

目標を1日2Lに留めて、夜間トイレにいくことがないように
就寝2時間前からは水分摂取を控えるとよいでしょう。

尿路結石の成分、原因に対して食事や原因病態の治療が適切にされていて、
さらに現時点で結石を有していなければ、1500mL程度にしてもよいでしょう。

しかし、1000mL以下にすることは、結石形成の危険度が増えるので、やってはいけません。

頻尿の原因が膀胱蓄尿障害による場合は、
原因として考えられる過活動性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎が
あればそれぞれの治療を行う必要があります。




夜間頻尿診療ガイドライン
日本排尿機能学会
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お薬と果物の飲み合わせ




口から入った薬は小腸から吸収されて門脈血中に入り、肝臓を経由して全身に行き渡ります。
小腸には薬物代謝酵素CYPや、吸収された薬を腸管の中に逆輸送するP糖蛋白という異物(薬も含む)に対するバリア機構が発達しています。
また、小腸には薬物の吸収を促進する薬物輸送担体OATPというものも存在しています。


グレープフルーツが薬の代謝に影響を及ぼすことはよく知られています。
グレープフルーツはCYPやP糖蛋白のはたらきを阻害するために、阻害率の大きい薬物の血中濃度を上昇させます。そのために有害反応が出現する危険性が指摘されています。
けれども、血中薬物濃度に影響を及ぼす果物はグレープフルーツだけではないのです。


グレープフルーツ、オレンジおよびりんごがOATPを阻害すること明らかになっています。これらの果物は腸管からの薬物吸収を抑制する可能性があると考えられています。例えば、これらの果物がレニン阻害薬のアリスキレンの血中濃度を60%、β遮断薬のセリプロロールの血中濃度を80%そして抗アレルギー薬フェキソフェナジンの血中濃度を70%低下させることが報告されています。上記3つの薬物は代謝率が小さいためグレープフルーツなどでCYPが阻害されてもその影響は少ないものと考えられます。


グレープフルーツのみならず、オレンジやりんごでも治療効果に影響があるという認識を持つほうがよいでしょう。



Rodríguez-Fragoso L,et al,(2011)Potential risks resulting from fruit/vegetable-drug interactions: effects on drug-metabolizing enzymes and drug transporters.J Food Sci. May;76(4):R112-24.

Dolton MJ, et al,(2012)Fruit juices as perpetrators of drug interactions: the role of organic anion-transporting polypeptides.Clin Pharmacol Ther.Nov;92(5):622-30.

2014年5月4日日曜日

妊婦に禁忌の薬は本当に投与してはいけないのか






2014年4月産婦人科診療ガイドラインが改訂されました。



妊娠中の薬物投与について、産婦人科診療ガイドラインでは「添付文書上いわゆる禁忌の医薬品のうち、特定の状況下では妊娠中であっても投与が必須か、もしくは推奨される代表的医薬品は?」というクエスチョンを載せています。

添付文書は医薬品に関する唯一の公的な文書であり、保険医はその記載に従うことが義務付けられています。添付文書の「使用上の注意」の項の中には「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」という項目が設けられています。妊婦、産婦、授乳婦等への医薬品の投与にあたっては、その記載に留意する必要があるのです。この「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項目の記載内容が、添付文書における「妊娠と薬」に関する情報のすべてです。

添付文書は「妊娠と薬」に関する重要な情報源ではあるのですが、その内容に対しては様々な問題が指摘されています。

添付文書上妊婦に対して使用禁忌と読み取れる医薬品の多くは、以下を含んでいます。
・胎児への有害作用がヒトで証明されている医薬品ではない。・動物実験で示唆されるもののヒトでは胎児有害作用が否定的な医薬品。・より安全性が高いと確認されている代替医薬品の選択枝がある医薬品。・製造業者又は輸入業者が妊婦に投与してもらう必要がないと判断しただけの医薬品。

添付文書の記載が残念ながら必ずしも正確ではないのが現状です。
(国も万が一が起きた時、責任を取りたくないのでしょう)

こういった問題に加え、日本では「妊娠中に投与しないこと」と記載されている薬物が欧米と比較してかなり多いことが挙げられます。

添付文書通り杓子定規に従うと、妊婦禁忌の薬剤を飲み続けて治療をしなければならない病気にかかっている女性は妊娠自体が難しいということになります。

例えば、アザチオプリンやシクロスポリン、タクロリムス水和物といった免疫抑制薬が挙げられます。臓器移植後の患者さんにおいては移植臓器の拒絶反応を抑えるために、これらの免疫抑制薬を継続的に飲み続ける必要があります。
これら3剤については、明らかな催奇形性や胎児毒性は指摘されていません。ガイドラインにおいては臓器移植後、またはステロイド単独では効果が不十分な膠原病に対し、て妊娠中であっても投与が必須かもしくは推奨されるとしています。


最近では、インターネット経由で患者も実際の添付文書を目にすることができます。また、当研究会のようなブログでも、妊婦と薬に関する情報を手にすることができます。その際、「妊娠中は投与しないこと」と言う記載は、患者さんの混乱をきたすことも起こりえます。


妊娠中の投与については個々の症例において慎重に判断することが求められています。


妊婦と薬についてのお問い合せは・・・
■国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
厚生労働省事業として妊娠と医薬品に関する内外のデータを網羅的に集積しています。患者である女性自身が相談を申し込むことができます。妊娠後のみならず妊娠前からの相談も受け付けているので。
相談の具体的手順についてはホームページ参照してください。

あるいは、お電話でも可能です。

■虎の門病院「妊娠と薬相談外来」(完全予約制)
患者である女性自身に電話で予約してください。妊娠後のみならず妊娠前からの相談も受け付けています。