ページ

2014年2月3日月曜日

23価肺炎球菌ワクチンの再接種は5年空けなければならないのか




23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)の再接種については、日本感染症学会から出された肺炎球菌ワクチン再接種に関するガイドラインに記載があります。

肺炎球菌ワクチン再接種に関するガイドライン(日本感染症学会)

 初回接種から5年以上経過した次に示すような肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険性が極めて高い者及び肺炎球菌特異抗体濃度が急激に低下する可能性のある者を対象とする。
1)65歳以上の高齢者
2)機能的または解剖学的無脾症(例 鎌状赤血球症、脾摘出)の患者
3)HIV感染、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性悪性腫瘍、慢性腎不全、またはネフローゼ症候群の患者、免疫抑制化学療法(副腎皮質ステロイドの長期全身投与を含む)を受けている患者、臓器移植または骨髄移植を受けたことのある者


よく誤解されているのですが、再接種を初回接種から5年経過後に行う、とされているのは、副反応が強いためではありません。

5年以内に接種するよりも5年経過がのほうが医療経済的に効率が良いからです。

初回接種から5年を経過する頃になると抗体価の低下が目立ちます。
接種4年後には抗体価が接種直後の90%でしたが、5年後には76%に低下していたという報告もあります。

Mufson MA, et al.(1983)Long-term persistence of antibody following immunization with pneumococcal polysaccharide vaccine. Proc Soc Exp Biol Med.173(2): 270 -275.

そのため5年経過後の再接種が勧められています。


肺炎球菌ワクチンの再接種は副反応が強く出てしまうのか?

昔、実用化されていた14価肺炎球菌ワクチンでは、2年以内の再接種でアルサス反応が出ていたことから再接種は行ってはならないとされていました。

現行の23価肺炎球菌ワクチンは安全であり、重大な副反応の報告はされていません。また、再接種時に全身性の副反応が起こる可能性がゼロとはいえませんが、これまでそのような報告はありません。報告されている副反応は局所の反応です。しかも予防接種一般にみられるもので経過観察で消失します。

23価ワクチンを5年以上経過後再接種した際の副反応について調査したものによると、痛み、腫脹、腕の圧痛、といった局所反応が初回接種と比べ増加していました。全身性の副反応は差がありませんでした。

Jackson LA, et al.(1999)Safety of revaccination with pneumococcal polysaccharide vaccine.JAMA.;281(3):243-248

ニューモバックスNPの添付文書には「本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行うこと」の記述がされています。


2014年10月より成人肺炎球菌ワクチンの定期接種化が行われます。
必ず1回は接種することになりますが、上記のように実際に免疫抗体価が低下する5年を目安に再接種するのがよいでしょう。