厚生労働省医薬食品局は2014年4月30日、「医薬品・医療機器等安全性情報・第312号」において、非ステロイド性消炎鎮痛剤ケトプロフェンの外皮用剤(製品名「モーラステープ20mg」など)について使用上の注意を改訂し、妊娠後期の女性への使用を禁忌にしたことなどを周知しました。
2014年4月30日「医薬品・医療機器等安全性情報」No.312
ケトプロフェン製剤の坐剤と注射剤は、すでに妊娠後期の女性への使用が禁忌とされています。
今回、妊婦がケトプロフェンのテープ剤を使用して胎児動脈管収縮などが起きた症例が集積されました。テープ剤を含む外皮用剤も妊娠後期の女性への使用を禁忌としました。
厚労省は2014年3月25日付で使用上の注意の改訂を指示しています。妊娠中期の女性への使用も羊水過少症の報告があるため、必要最小限の使用にとどめるなど慎重に使用することを追記しました。
また、ケトプロフェン以外の非ステロイド性消炎鎮痛剤の外皮用剤において、胎児に動脈管収縮が起きた症例は報告されていませんが、薬剤の作用機序からは妊娠後期の女性に使用した場合、ケトプロフェンのテープ剤と同様に胎児に動脈管収縮が起こる可能性があります。
市販されているシップ剤も妊娠後期の方は使わないようにしましょう。
バファリンなどのNSAIDsの内服剤も飲まないようにしましょう。
では、どうすればよいのか。
妊婦に安心して使える痛み止めの第一選択薬はアセトアミノフェンです。
アセトアミノフェンは、胎盤を通過します。けれども、通常量の短期使用では、安全であることが知られています。長期大量投与では、母体の肝障害・腎障害、新生児の腎障害の報告があるので注意は必要です。
胎児の動脈管収縮症例が集積されていますが、その根拠となっている症例は、アセトアミノフェンの内服歴はあるけれど、胎児動脈管早期閉鎖との時間的な因果関係を考慮すると関連があるとは考えにくい症例でした。
ラットの動物実験では、「弱い胎仔の動脈管収縮」が報告されていますが、動脈管の内径が半分になるED50は、300mg/kg(ヒトの50倍) と臨床量からほど遠い量なのです。
したがって、今でも、妊娠中の女性に使用する解熱鎮痛薬としては、アセトアミノフェンが選択されます。
【参考】
あいち小児保健医療総合センター:妊娠・授乳と薬対応基本手引き