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2014年3月19日水曜日

脳アミロイド血管症とアルツハイマー型認知症





アルツハイマー型認知症は、
アミロイドβが脳組織に貯まることによって起こると考えられています。
アミロイドβは脳の血管壁にも蓄積します。
この状態を「脳アミロイド血管症」といいます。
アルツハイマー型認知症の90%以上が合併しているといわれています。
この脳アミロイド血管症は、脳の血管に対し悪さをして、
3つの悪影響をもたらすと考えられています。


アミロイドβは脳内の老廃物排出力を低下させる
体内の老廃物は、血管やリンパ管を通って肝臓や腎臓に運ばれていき、
分解されたり、尿と一緒に排泄されます。
小さな老廃物は血管内に入り込み、血流によって肝臓や腎臓に運ばれます。
アミロイドβは固まってしまうと水に溶けにくく、
また大きいので、血管の中に入りません。
そのため他の経路も経由して、最終的に肝臓や腎臓に運ばれていきます。

脳にはリンパ管がないため、アミロイドβなどの老廃物は、
血管壁を形作る平滑筋の中を通って出ていかなければなりません。
そこで、老廃物を運ぶ駆動力となるのが血管の拍動です。
しかし、血管壁にアミロイドβがたまっているとこの拍動は弱まってしまいます。
その結果、老廃物を排出する機能が低下します。


アミロイドβは血管をもろくさせる
アミロイドβが脳の血管壁にたまるにつれて、血管の平滑筋が弱くなってきます。
血管そのものをもろくしているのです。
そのため、脳アミロイド血管症では、脳の血管が破れて、
微小出血とよばれる極めて小さな出血が起こりやすくなります。

脳アミロイド血管症が重症になるほど、脳の血管のあちらこちらで、微小出血が発生します。

微小出血は脳のMRI画像を撮影すれば発見することができます。
微小出血が多発してしまうと神経細胞にも悪影響を及ぼします。


アミロイドβは脳血流量を低下させる
脳の血管壁にアミロイドβがたまると、血液を押し出す血管の拍動が低下します。
そのため血液の流れが悪くなります。
動物実験では、脳の血流の低下が認知機能の低下につながることが知られています。



認知症に対するシロスタゾールの効果
シロスタゾールには、脳の血液循環改善と、
老廃物の排出を改善する2つの効果が期待されています。
シロスタゾールには、血小板のはたらきを抑える以外に、血管の平滑筋にも作用します。
血管の拍動を高める作用があるのです。
この作用ため、シロスタゾールの服用によって頭痛が起こることがあるのです。
しかし、脳の血管の拍動が高めれば、アミロイドβなどの老廃物も排出されやすくなるのです。
これが、脳アミロイド血管症の改善に役立ち、
アルツハイマー病の進行を抑えることにつながると考えられています。

アルツハイマー型認知症のモデルマウスを使った研究では、
シロスタゾールを投与しなかった場合は、アミロイドβが海馬に大量に蓄積していました。
一方、シロスタゾールを投与した場合では、アミロイドβが減少していたことがわかっています。


シロスタゾールは、商品名プレタールという脳梗塞の再発予防などに使われる一般的な薬です。認知症にも使われるようにするためには、
治験を行い多くの患者さんで効果と安全性を確認することが必要です。

これまでの研究では早期にシロスタゾールを使うほど
認知症の進行を抑える効果が期待できるとされています。
しかし、認知症が進んだ状態で投与しても効果が無いことがわかっています。
そのため認知症予防の観点から、「MCI(軽度認知障害)」という、
認知機能が正常よりも低下している認知症予備軍に当たる人を対象に治験が想定されています。

治験は2014年秋以降に国立循環器病研究センターをはじめ東京、三重、京都、大阪、岡山(倉敷)などの医療機関で開始される予定です。


シロスタゾールは認知症に対する新たな治療となるのか
http://yakuza-14.blogspot.jp/2014/03/blog-post_19.html



【2014.07.22追記】

シロスタゾールと認知症の関係についての患者さん説明用パンフレットを作りました。(土橋内科医院 院長ブログ -心房細動な日々-)