医薬品の製剤添加物の定義は、日本薬局方に以下のように記載されています。
製剤に含まれる有効成分以外の物質で、医薬品の有効性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定性を図る、又は外観を良くするためなどの目的で用いられるものである。
使用される添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害でなければならない。
つまり、医薬品の添加物は、
・体内で吸収されるが人体にほとんど害がないもの
・飲んでも体内には吸収されず、排泄されるもの
です。
添加剤の代表例
医薬品の多くは1gにも満たない少量で薬理作用を示すものです。錠剤のうち医薬品成分の含量はわずかであることが多く、構成しているもののうち大部分は添加物です。
乳糖水和物
賦形剤として代表的な乳糖水和物はチーズを作るときの副産物が原料です。そのため、牛乳アレルギーがある人にとっては、乳糖水和物に微量に含まれるカゼイン、乳清タンパクなどでアレルギーを起こす可能性があります。
ジェネリック医薬品の中には、先発品と添加物を変えているものもあり、乳糖水和物を含まない、別の賦形剤を使用している製品もあります。
●●セルロース
添加物には「なんとかセルロース」という名のものが多くあります。
セルロースは、いわゆる食物繊維のことです。
水にもエタノールにも溶けにくい性質を持っています。
なぜ、セルロースが多く添加剤として使われているのかというと、人間がセルロースを分解して吸収することができないからです。
添加物の条件である、体内に吸収されず、安定して排泄されるものだからです。
しかし、水に溶けない高分子は製剤を作るのには使い勝手が悪いので、セルロースの水酸基を他の何かで置き換えたセルロース素材が添加剤として利用されています。これらをセルロース誘導体といいます。
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースなどがあります。
これらは、水と混ぜると糊のような粘性をもつので、この性質を利用して結合剤として利用したり、点鼻剤が鼻粘膜に長く留まるようにしたり、点眼剤の粘性をあげて眼に長く留まるようにしています。
ヒプロメロースなどのよく伸びて成形性の良いものは錠剤のフィルムコーティングやカプセルの素材などとしても利用されています。
ヒプロメロースフタル酸エステルや酢酸フタル酸セルロースは、酸性条件下では溶けにくく中性領域では溶けやすい性質を持つので、腸溶錠の基材として使用されています。
医薬品の歴史は添加剤の歴史でもあります。たまには、薬の名脇役である添加剤に目を向けるのも面白いですよ。