2013年4月9日火曜日

C型肝炎患者が知っておくべき基礎知識



C型肝炎患者数は日本に約150~200万人いると推定されています。肝臓がんの約7~8割はC型肝炎ウイルス感染によるものです。C型肝炎ウイルスは主に、ウイルスに汚染された血液を輸血したり、刺青や医療従事者の針刺し事故などの行為を介して感染します。C型肝炎ウイルスに感染し急性肝炎を発症しても約3割は本来持つ体の免疫によってウイルスが退治され治癒します。しかし、約7割は慢性肝炎となってしまします。

慢性肝炎になってしまうと肝細胞の破壊が繰り返されます。細胞の破壊のペースが再生を上回ると、とりあえず穴を埋めようとするため、本来の細胞ではない線維性の細胞が増殖していきます。30年から40年かけて増殖していき肝硬変の状態を形作るのです。

慢性肝炎のときの血液検査ではAST、ALTの上昇などの肝機能異常が見られます。自覚症状は人によっては軽いだるさを訴える程度です。初期の肝硬変でも症状がほとんどなく、そのような時期を代償性肝硬変(だいしょうせいかんこうへん)といいます。肝硬変が進むと幹細胞の現象による肝機能不全により黄疸、腹水、肝性脳症などといった症状が出現します。

また、肝臓内の血流の流れが悪くなります。その結果、肝臓に流れ込めない血液を逃がすために、食道静脈や胃静脈に形成された奇静脈を介して心臓に戻したり、臍傍静脈から腹壁静脈を通すためメデューサの頭と言われるお腹に血管が浮き出た状態が観察されます。これら、奇静脈への逆流は静脈瘤を形成させるため注意が必要です。このような状態になってしまった肝硬変を非代償性肝硬変と呼びます。

肝細胞の線維化が進行するほど肝細胞がんになる確率は上がっていきます。肝硬変では年間8%で肝細胞がんを発症します。肝細胞がんを発症してしまうと、仮に切除できたとしても、5年生存率は54%、10年生存率は約30%です。肝硬変になってしまう前に早い段階でウイルスを排除してしまうのが重要となります。

日本肝癌研究会 編(2010)第18回全国原発性肝癌追跡調査報告(2004~2005),肝臓 51(8), 460-484


C型肝炎の治療薬の効果はウイルスのタイプとウイルス量によって変わってきます。日本人のC型肝炎患者さんの肝炎ウイルスには遺伝子型としてジェノタイプ1b、2a、2bの3つのタイプがあり、それぞれ70%、20%、10%存在しています。血清型で分けるとセロタイプ1型(ジェノタイプの1bに相当)とセロタイプ2型(ジェノタイプの2a、2bに相当)の二種類に分類されます。セロタイプ1型はインターフェロンに対する反応がよくありません、一方2型はよく効きます。ウイルス量は血液1ccあたりに100000個(5logIU/mL)以上存在すると高ウイルス量とされます。高ウイルス量の患者さんはインターフェロンが効きにくくなります。したがって、1型で高ウイルス量のC型肝炎は難治症例と考えられます。


インターフェロンの効きの良し悪しはあらかじめ患者さんの生まれつきの体質によって決められています。19番染色体にある遺伝子IL-28B領域の違いによって決まります。IL-28Bのメジャー型の人はインターフェロンが効きやすいです。日本人の25%を占めるマイナー型の人はインターフェロンが効きにくい人です。

Tanaka Y, et al(2009)Genome-wide association of IL28B with responce to pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C.Nature Genetics ,41:1105-1109.