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2012年9月2日日曜日

タケプロンを1年近く飲み続けていますが大丈夫でしょうか





循環器内科ではアスピリンとプロトンポンプ阻害薬(PPI)がよくセットで処方されています。血栓の予防でアスピリンが投与される患者さんの、アスピリンによる胃潰瘍の予防のためにPPIが使われています。



PPI長期投与で留意する点


ビタミンB12の吸収には胃液が必要です。そのためPPIは食物中からのビタミンB12吸収を低下することになり、貧血や神経障害の原因となることが予想できますが、臨床上問題となるという報告はありません。




PPIによる胃酸分泌抑制は、炭酸カルシウムの腸管からの吸収を低下させます。食物中のカルシウムの吸収も同様に低下させる可能性があります。骨粗鬆症や骨折リスクの高い患者さんでは注意が必要です。




PPIの胃酸分泌低下により胃の中の酸性度も低下します。酸で殺菌されていた菌が生き残り下部食道や胃の中で増加する可能性があります。PPIは腸管感染症のリスクを高めることになります。サルモネラ、カンピロバクター、クロストリジウム、ビブリオは酸に弱い菌です。これらの感染リスクが高まるものと考えられます。下痢を生じることがあればPPIの中止が望ましいかもしれません。



薬物相互作用


PPIは胃の中の酸性度を低下させるため、アタザナビル、イトラコナゾール、ゲフィチニブ、エルロチニブ等の溶解性が低下してしまい吸収が低下します。反対にジゴキシンやメチルジゴキシンは分解が抑制され、吸収が上昇してしまいます。




PPIはCYP2C19で代謝されます。CYP2C19で代謝される他の薬と競合することで、ジアゼパム、フェニトイン、シロスタゾール、ワルファリン等の効果を増強してしまう可能性があります。一方で、CYP2C19で活性化される必要のあるクロピドグレルの活性化を低下させ、血小板凝集抑制作用を低下させる可能性があります。




2012年6月16日土曜日

血圧を下げる薬は一度飲み始めると、一生飲み続けなければならないのでしょうか。





薬を使用して血圧をコントロールしている高血圧患者さんでは、薬をやめてしまえば多くの場合血圧が上昇します。そのため、血圧を下げる治療を続けることが原則です。

しかし、
一部の患者さんでは、お薬を中止することが出来る人もいらっしゃいます。さらに、薬を減らすことが出来る人もかなりの患者さんにいらっしゃいます。

ただし、血圧が極端に低い場合を除いては患者さん自身の判断で薬を勝手に中止、減量してはいけません。また、お薬を中止、減量した場合には血圧の経過観察を行い、血圧の再上昇に注意をはらいます。


では、どのような場合にお医者さんはお薬を減らすことを考慮するのでしょうか。

薬の減量は、家での血圧、家庭血圧が十分に低ければ積極的に試みられます。特に、立ちくらみやめまい、脱力感など血圧が下がり過ぎることで起こるような症状が出た場合は速やかな減量を考慮します。

夏場は血圧が下がりやすい季節なので、薬の量を減らすことがあります。単剤で治療を行っている場合は、半量に減らしたり、2種類の薬を併用している場合は、1種類に減らすなどします。夏場は、汗をかくことが多く体液量が減少するので、利尿薬などは夏場には減量、中止がよく検討されます。


お薬を中止できる条件は?

まず、心臓や腎臓の合併症がないことが前提となります。血圧を下げる薬は、心臓や腎臓の病気の治療のために用いることがしばしばあります。その場合、血圧が下がっていても継続しなくてはなりません。

心臓や腎臓の合併症がなければ、少量の薬で家庭血圧が十分に低ければ、薬の中止が考慮されます。夏場に血圧が下がった場合や、生活習慣の改善で血圧が下がった場合も、中止は可能です。

2012年4月13日金曜日

αグルコシダーゼ阻害薬の特徴と使い分け



糖尿病治療において日本では3種類のαグルコシダーゼ阻害薬が存在します。アカルボース、ボグリボース、ミグリトールです。

αグルコシダーゼ阻害薬は、小腸で二糖類を分解する酵素のαグルコシダーゼと結合し、競合的に糖の分解を阻害します。それによって糖分の吸収が遅れ、食後の血糖の上がりを穏やかにします。

毎食直前に服用します。なぜかというと、食物と同時に小腸内に存在していないと意味が無いからです。

未分解の糖類が大腸へ到達すると腸内細菌の作用によりガスの発生、腹部膨満感、便秘あるいは下痢などの副作用を生じることがあります。


【アカルボース:グルコバイ】
アカルボースは日本で最初に実用化されたαグルコシダーゼ阻害薬です。そのため、実績がありデータも豊富にあります。

境界型耐糖能異常の患者さんを対象としたプラセボ対象二重盲検試験では糖尿病新規発症の減少や高血圧新規発症・心血管イベントの減少が示されています。

Chiasson JL, et al. (2002) Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus: the STOP-NIDDM randomised trial.:Lancet 359 : 2072-7,
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(02)08905-5/fulltext

Chiasson JL, et al. (2003) Acarbose Treatment and the Risk of Cardiovascular Disease and Hypertension in Patients With Impaired Glucose ToleranceThe STOP-NIDDM Trial :JAMA 290: 486-94
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=196993


2型糖尿病患者さんを対象としたプラセボ対象二重盲検試験のメタ解析でも心血管イベントの減少が示されています。

Hanefeld M, et al :  (2004) Acarbose reduces the risk for myocardial infarction in type 2 diabetic patients: meta-analysis of seven long-term studies . Eur Heart J25 (1): 10-16.


アカルボースにはαグルコシダーゼのほかにアミラーゼの阻害作用もあります。そのため、多糖類が分解されず、残って大腸に行く場合があり、他の2剤に比べて便秘が多く、ガスの発生が多くなる傾向にあります。


【ボグリボース:ベイスン】
ボグリボースはアカルボースよりも腹部症状の少ない用量設定になっています。使用しやすいのですが、その分効果も穏やかです。アミラーゼの阻害作用はないのでガスの発生は少なめです。便秘よりも軟便傾向が多いようです。日本人の境界型耐糖能異常の患者さんに投与され糖尿病新規発症の減少が認められました。

Kawamori R, et al : (2009) Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance. Lancet 373 : 1607-14
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)60222-1/abstract

そのため、日本において境界型耐糖能異常患者さんに対する糖尿病発症予防のために投与することが認可されています。


【ミグリトール:セイブル】
ミグリトールは他の2剤と異なり、薬剤自体かなり吸収されます。この特性により小腸の初めのほうで薬が多く、下部では薬量が少なくなります。そのため、食後早期のブドウ糖吸収を強く抑制できます。結果として食後1時間の血糖上昇を強く抑えることができます。そして食後血糖の上昇も抑えることができます。

Arakawa M, et al. (2008)Miglitol suppresses the postprandial increase in interleukin 6 and enhances active glucagon-like peptide 1 secretion in viscerally obese subjects. Metabolism 57 : 1299-1306



アミラーゼの阻害作用はないのでガスの発生は少なく、便秘よりも軟便傾向が多いようです。特に高用量では下痢が出やすいので注意がい必要です。


使い分け
糖尿病初期の患者さんでは食後1時間付近に血糖のピークがあることが多いです。そのため、ミグリトールがいい感じです。
境界型耐糖能異常の人にはベンスン錠0.2mgが投与を認められています。

糖尿病が進行した患者さんでは食後2時間付近に血糖のピークがあることが多いです。そのため、アカルボース、ボグリボースが良い適応となります。しかし、投与可能量の関係からミグリトールのほうが血糖値のピークが低くなることがあります。

αグルコシダーゼ阻害薬の作用はインスリン分泌能に依存しないため、インスリン分泌が少ない患者さんにおける食後血糖上昇の抑制効果は多剤よりも確実かつ強力です。DPP-4阻害薬も食後血糖を低下させることが知られていますが、HbA1cが8.0を超える患者さんや多剤併用が必要な患者さんではやや下がる程度でαグルコシダーゼ阻害薬とは比べ物になりません。

αグルコシダーゼ阻害薬にはGLP-1分泌促進作用が認められています。DPP-4阻害薬との併用には相乗効果が期待されています。この効果はどのαグルコシダーゼ阻害薬でも認められています。

αグルコシダーゼ阻害薬は腹部症状で中断してしまう患者さんが多く見られます。残念ですが腹部症状はαグルコシダーゼ阻害薬の作用そのもの一部なので完全に避けることはできません。しかし、投与初期に強く現れ、それを乗り越えれば次第に緩和してくる傾向があります。低用量から開始して徐々に増やしていくとよいでしょう。また、整腸剤の併用が有効な場合もあります。

最も重要な事は、「腹部症状が出ること」「次第に緩和すること」を服薬説明の時にあらかじめ説明しておくことで患者さんの不安を取り除いてあげることです。





2012年4月5日木曜日

アスピリン喘息患者さんに安全な解熱鎮痛薬は何?



(2018.11更新)

アスピリン喘息はアスピリンに限らず、すべての非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)でも誘発されます。この仕組は通常のアレルギー反応ではありません。アラキドン酸代謝カスケードの中でNSIDsによるシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害の結果、COXとは別の経路のリポキシゲナーゼによる代謝経路に流れることによってロイコトリエン産生が増加するために発作が誘導されると考えられています。

アセトアミノフェンは歴史の長い解熱鎮痛薬ですが、その作用機序はあまりよくわかっていません。2011年変形性関節症と4000mg/日までの増量が保険適応になりました。これで、慢性疼痛の治療薬として改めて注目されるようになりました。海外において,アセトアミノフェンは鎮痛剤の標準薬として広く活用されています。例えば、WHO はアセトアミノフェンをエッセンシャルドラッグとし、各国の様々なガイドラインも鎮痛の薬物療法の第一選択薬としています。

アセトアミノフェンはCOXの阻害活性はわずかで、NSAIDsほど強くはありません。詳細は明らかになっていませんが、中枢性に鎮痛作用がはたらいているものと考えられています。そのため、論理的にはアスピリン喘息を引き起こすとは考えにくいです。しかし、アセトアミノフェンの添付文書には禁忌とされています。

アセトアミノフェンがアスピリン喘息患者に喘息を誘発する頻度と重症度はNSAIDsに比べれば低いといえます。しかし、全く誘発しないかとは言えないようです。

Szczeklik A, Gryglewski RJ, Czerniawska-Mysik G. Clinical patterns of hypersensitivity to nonsteroidal anti-inflammatory drugs and their pathogenesis. J Allergy Clin Immunol. 1977 Nov;60(5):276–284.


つまり、アスピリン喘息歴のある患者さんが解熱鎮痛薬を必要とする場合、

2012年3月14日水曜日

予防接種の後は揉む?揉まない?



予防接種の注射箇所を揉む必要はありません。

ほとんどのワクチンが1回接種量1mLで行われていた時代がありました。皮下注射で1mL接種すると当然皮膚の盛り上がりが発生します。その盛り上がりを散らす目的で局所を強く揉んでいました。

最近ではワクチンの接種量は0.25~0.5mLに改められました。また、ワクチンの品質が格段に向上している現在において注射局所を揉みほぐす必要はなくなりました。特に沈降ワクチンは、接種箇所の組織にとどまっておかなければならず、揉むことで抗原が拡散してしまいます。遅延型アレルギー反応が起きた場合発赤や腫れなどの炎症反応が拡大することになります。

また、赤ちゃんは皮膚や筋肉組織が大人ほどしっかりしていないため脆く、揉むという乱暴な物理的刺激によって障害が起きる恐れがあります。そのため注射箇所を揉むことは百害あって一利なしです。




2012年3月13日火曜日

なぜ、予防接種は筋肉注射しないのか



筋肉は、免疫を担当する遊走細胞であるリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、アレルギーを誘発する様々な細胞の分布が他の部位に比べて極端に少ないのが特徴です。したがって、抗原がそれらの細胞に接触するには一定の時間を要することになります。この特性を利用したのが筋肉注射です。安全性と有効性を併せ持っています。注射部位は腕の上、太もも、おしりです。ワクチンの種類により接種部位が選ばれます。炎症反応が強いワクチンの場合は、太ももやおしりが安全に接種できます。

筋肉注射に適したワクチンはB型肝炎ワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス:子宮頸がん予防ワクチン)、H5N1インフルエンザ、肺炎球菌ワクチン、4種、5種、6種混合、γグロブリンです。沈降、懸濁、特殊蛋白製剤が該当します。

筋肉注射は乳幼児には最も安全な接種方法です。その理由は、おしりの筋肉は運動に関係しないため、他の運動筋より炎症反応が発生した場合日常生活への影響を最小限に抑えることができるからです。

日本ではかつて筋肉注射により筋萎縮症という副反応が多発して社会現象になりました。当時は、熱が出たらすぐクロラムフェニコールとスルピリンを混ぜて筋肉注射をしていました。時代のツケがワクチンの筋肉注射を敬遠する流れにしています。しかし、前出のクロラムフェニコールやスルピリンは化学物質、ワクチンは生物製剤であり同列に語ることはできません。化学物質と生物製剤では筋肉に与える障害に違いがあります。海外において3種混合ワクチンを皮下に接種している国は多くありません。

乳児の皮下組織は薄く、「皮下深く」接種するなど無理です。極めて非科学的な医療行為と言わざるを得ません。ワクチンは基本的に微生物を材料にして製造されています。人体も細胞の集まりであり、ワクチンは人体組織と基本的にpHや浸透圧など生物学的な環境に差はなく安全性を考慮して製造されています。つまり、ワクチンが筋肉組織を破壊することはありえないのです。

A型肝炎、B型肝炎ワクチンは筋肉注射のほうが皮下注射よりも抗体産生が良好であるというデータも有ります。



【参考】
堺 春美:日本医師会雑誌 123 :837,2000.
ワクチン接種のリスクマネージメント―ワクチンの安全性と皮下注射の手技―
http://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/12306/pdf/23060837.pdf



2012年3月12日月曜日

ワクチンの皮下注射



皮下注射


よく利用される接種方法です。ワクチンの種類、年齢で接種する箇所を選びます。接種する箇所は腕の上側の外、三頭筋の外側が比較的安全だと言われています。

皮下注射に適しているワクチンは生ワクチン(麻しん、風疹、おたふくかぜ、水痘)と不活化ワクチン(インフルエンザ、日本脳炎、A型肝炎、ポリオ)です。

生ワクチンの感染標的細胞は主にリンパ球、樹状突起細胞、マクロファージなどの遊走細胞なので、抗原が局所に留まる必要がなく局所反応もほとんど発生しません。

不活化ワクチンは感染性が無いため、受動的に樹状突起細胞、マクロファージに取り込まれるまでに時間がかかります。けれど、安全性は高いです。ウイルスに対する免疫を十分獲得するためには複数回接種をしなくてはなりません。

接種の痛みを減らすために注射針は26G以上のものを使います。
液量が0.25mLの場合は正確な液量を接種するためにツベルクリン用のシリンジを使います。


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2012年2月18日土曜日

プラザキサ(ダビガトラン)と抗血小板薬の併用



狭心症や脳梗塞で抗血小板薬が処方されている患者さんにダビガトランの追加投与は通常用量でいいのでしょうか。


ダビガトラン第三相試験の結果によれば、ダビガトラン150mg1日2回投与と110mg1日2回投与における大出血の年間発現率は、抗血小板薬を併用しない場合と比較して、アスピリン併用時やアスピリンとクロピドグレル併用時に上昇していました。

Eikelboom J W et al. Circulation 2011;123:2363-2372.
https://circ.ahajournals.org/content/123/21/2363.full.pdf
ダビガトランの市販直後調査の結果でも重篤な出血性合併症を発症した139例中38例が抗血小板薬を併用していたという報告があります。

プラザキサカプセル市販直後調査最終報告2011年11月
http://www.bij-kusuri.jp/information/attach/pdf/pxa_cap_info_201111.pdf


やはり
抗凝固薬と抗血小板薬の併用は出血性合併症を増加させるみたいです。
この場合の対応を考えてみましょう。

1.用量を選択を考えてみましょう。
ダビガトランには2用量が準備されています。ガイドラインによれば、まず通常用量を考慮して
・年齢70歳以上、
・消化管出血の病気にかかったことがあるひと
・中等度腎機能障害の人
・ベラパミルやアミオダロン(P糖タンパク阻害薬)を併用している人
この4つのうちいずれか一つに当てはまる人は低用量が推奨されます。

2.抗血小板薬を減らすか中止するのはどうか。
アスピリンとワルファリンの脳梗塞予防効果を調べた研究(WARSS研究、WASID研究)では、脳梗塞予防効果に差はないようです。この研究結果は抗血小板薬の代わりを抗凝固療法で代替できる
可能性を示しています。

Mohr Jp, et al : N Engl J Med. 2001 Nov 15;345(20):1444-51.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa011258

Chimowitz Ml, et al : N Engl J Med 2005; 352:1305-1316
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa043033

冠動脈ステント装着例で心房細動に対する抗凝固療法を行う場合、抗血小板薬を永続的に使う方法に代えて、症例のリスクごとに2~1年間併用し、以降は抗凝固療法のみで管理する方法もヨーロッパ心臓病学会から提案されています。

3.ダビガトランを使わないのもひとつの方法かもしれない。
低用量のダビガトランでも出血性合併症を避けられない場合は、用量調節が可能なワルファリンにしてもらうのもいいかもしれない。




2012年1月26日木曜日

乳児へのタミフル投与




タミフルの添付文書には

「1歳未満の患児(低出生体重児、新生児、乳児)にたいする安全性は確立していない)」
とされています。


乳児がインフルエンザにかかってしまった場合、


タミフルを投与してもよいのでしょうか。



日本小児科学会によれば2009-10シーズンに日本でタミフルを投与された生後3ヶ月未満の乳児・新生児39例の報告がされています。



この日本小児科学会からの報告で注目すべきなのは、生後3ヶ月未満の乳児・新生児でタミフルの短期的な副作用がほとんどなかったことです。


過去の日本における1歳未満の乳児へのタミフル投与の報告も同様に重篤な副作用はなく適切な用量での使用であれば、安全性は高い可能性はあります。


一方、長期的な影響については明らかではなく、長期的な安全性が未確立ということが問題点といえます。




2012年1月25日水曜日

咳止めの使い方




風邪のあとで咳が続くことはよくあることです。


慢性の咳が強く出ている場合、安易に咳止めとしてコデインが処方されているのを目にすることがあります。


L-カルボシステイン、アンブロキソールと一緒に処方されていたりします。


しかし、中枢性麻薬鎮咳薬のコデインは痰の排出を悪くするので、結果的に咳の改善を遅くするように思うのですがどうなのでしょうか。


咳の基本的なことをまず確認してみましょう。


咳は身体の防御反射です。

つまり、咳は気道に入ってきた異物を排除し、気道感染の広がりを抑制するはたらきをします。

咳には痰が出るもの(湿性咳嗽)と出ないもの(乾性咳嗽)があります。

痰は、気道の粘液が多く分泌されたもので感染の徴候と考えられます。


正常な場合の気道粘液の量は、約10~100mL/日です。

気道粘液はⅡ型肺上皮細胞、クララ細胞、杯細胞、気管支腺などの分泌物からなります。

気道上皮の線毛運動によって分泌物は絶えず上気道の方へ送り出されます。

そして、無意識に食道に飲み込まれてしまいます。

分泌物が過剰になると、咳が出て痰として排出されます。


咳の原因には2つあるといわれています。


咳受容体感受性亢進と気管支平滑筋の収縮です。

つまり、咳を抑えるには、咳受容体感受性亢進を抑制する薬物、気管支平滑筋の収縮を抑制する薬物そして、咳中枢を抑える薬物(中枢性鎮咳薬)を用います。

咳受容体に影響して鎮咳作用を発揮するのは漢方薬の麦門冬湯、ヒスタミンH1受容体拮抗薬があります。


ステロイドは気管支炎症を抑制して鎮咳効果を発揮します。

気管支喘息に伴う咳では、気管支拡張薬により咳が軽減します。


中枢性鎮咳薬は咳反射を抑えます。

麻薬性と非麻薬性に分かれます。

中枢性鎮咳薬の咳抑制効果は強力ですが、痰の排泄も抑えてしまうことになり、肺炎を悪化させる場合もあります。

そのため、かぜによる咳には中枢性鎮咳薬の使用は控えたほうが良いでしょう。

かぜの9割は上気道のウイルス感染です。

咳はウイルスが肺の中に広がらないようにする生体防御反応です。

これを抑制するとかえって病態を悪化させてしまうしまうことになるのです。


湿性咳嗽では、咳を止めることよりも、その原因に対する治療が重要です。


肺がんでは、手術療法、放射線療法、化学療法を単独または組み合わせて行います。

細菌感染を合併する場合には、抗菌薬を使用します。


気管支拡張症による咳や痰には、細菌感染の合併症を考え、抗菌薬を使用する。

少量の14員環マクロライドも併せて使用します。


副鼻腔気管支症候群では、少量の14員環マクロライドの長期投与が有効と考えられています。


肺炎、肺化膿症では抗菌薬を使用します。


肺結核では抗結核薬を使用します。


急性気管支炎による咳には細菌性の場合は抗菌薬を、ウイルス性では対処療法を考えます。



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