アスピリン喘息はアスピリンに限らず、すべての非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)でも誘発されます。この仕組は通常のアレルギー反応ではありません。アラキドン酸代謝カスケードの中でNSIDsによるシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害の結果、COXとは別の経路のリポキシゲナーゼによる代謝経路に流れることによってロイコトリエン産生が増加するために発作が誘導されると考えられています。
アセトアミノフェンは歴史の長い解熱鎮痛薬ですが、その作用機序はあまりよくわかっていません。2011年変形性関節症と4000mg/日までの増量が保険適応になりました。これで、慢性疼痛の治療薬として改めて注目されるようになりました。海外において,アセトアミノフェンは鎮痛剤の標準薬として広く活用されています。例えば、WHO はアセトアミノフェンをエッセンシャルドラッグとし、各国の様々なガイドラインも鎮痛の薬物療法の第一選択薬としています。
アセトアミノフェンはCOXの阻害活性はわずかで、NSAIDsほど強くはありません。詳細は明らかになっていませんが、中枢性に鎮痛作用がはたらいているものと考えられています。そのため、論理的にはアスピリン喘息を引き起こすとは考えにくいです。しかし、アセトアミノフェンの添付文書には禁忌とされています。
アセトアミノフェンがアスピリン喘息患者に喘息を誘発する頻度と重症度はNSAIDsに比べれば低いといえます。しかし、全く誘発しないかとは言えないようです。
Szczeklik A, Gryglewski RJ, Czerniawska-Mysik G. Clinical patterns of hypersensitivity to nonsteroidal anti-inflammatory drugs and their pathogenesis. J Allergy Clin Immunol. 1977 Nov;60(5):276–284.
つまり、アスピリン喘息歴のある患者さんが解熱鎮痛薬を必要とする場合、
たとえアセトアミノフェンであってもまずは少量から試みるなどの慎重な対応が必要になるでしょう。また、アセトアミノフェンをなんの目的で使うかについても考える必要があります。
例えば、鎮痛目的の場合、
最近では慢性疼痛に対する薬剤は非麻薬性のオピオイドなどを含めてアラキドン酸カスケードに関係しない鎮痛薬が使えるようになってきて、以前よりは薬剤選択の幅は広がっています。
アスピリン喘息患者さんに対する解熱を目的とする場合、
本来の原因療法を前提とするのは言うまでもありませんが、どうしても解熱が必要な場合にはアセトアミノフェンの少量投与から試みるべきでしょう。
選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブはアスピリン喘息患者の喘息誘発を起こしにくいとされる研究報告があります。
Woessner KM, Simon RA, Stevenson DD. The safety of celecoxib in patients with aspirin-sensitive asthma. Arthritis Rheum 2002;46:2201–2206.
もちろん、セレコキシブもアセトアミノフェン同様に添付文書にはアスピリン喘息患者に対して禁忌となっています。アセトアミノフェン同様慎重な対応が必要となります。
セレコキシブとアセトアミノフェンのどちらがアスピリン喘息患者さんに対して安全に使用できるかについては明らかになってはいません。
【参考】喘息予防・管理ガイドライン 2018
例えば、鎮痛目的の場合、
最近では慢性疼痛に対する薬剤は非麻薬性のオピオイドなどを含めてアラキドン酸カスケードに関係しない鎮痛薬が使えるようになってきて、以前よりは薬剤選択の幅は広がっています。
- ヨシピリン (吉田製薬)
- ソセゴン錠 25mg (丸石)
- ペルタゾン錠 25 (日本化薬)
- キョーリン AP2 配合顆粒(杏林)
- トラマールOD錠25mg、50mg(日本新薬)
- ワントラム錠 100mg (日本新薬)
- ノイロトロピン錠 4 単位(日本臓器)
- ノルスパンテープ (久光)
- レペタン坐剤(大塚)
アスピリン喘息患者さんに対する解熱を目的とする場合、
本来の原因療法を前提とするのは言うまでもありませんが、どうしても解熱が必要な場合にはアセトアミノフェンの少量投与から試みるべきでしょう。
選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブはアスピリン喘息患者の喘息誘発を起こしにくいとされる研究報告があります。
Woessner KM, Simon RA, Stevenson DD. The safety of celecoxib in patients with aspirin-sensitive asthma. Arthritis Rheum 2002;46:2201–2206.
もちろん、セレコキシブもアセトアミノフェン同様に添付文書にはアスピリン喘息患者に対して禁忌となっています。アセトアミノフェン同様慎重な対応が必要となります。
セレコキシブとアセトアミノフェンのどちらがアスピリン喘息患者さんに対して安全に使用できるかについては明らかになってはいません。
【参考】喘息予防・管理ガイドライン 2018
アセトアミノフェンは安全とされていたが、米国において 1,000~1,500mg/回負荷で 34%が呼吸機能低下を示した報告があり、欧米でも 500mg/回が推奨され、日本人は 300mg/回以下にすべきである。漢方薬の葛根湯や地竜などは安全である。選択的 COX-2 阻害薬セレコキシブは倍量投与でも AERD で発作が起きないことが確認されているが、重症かつ不安定例で稀に増悪し得る。
・アスピリン喘息(NSAIDs 過敏喘息,AERD)に対する使用可能な薬剤
・アスピリン喘息(NSAIDs 過敏喘息,AERD)に対する使用可能な薬剤
1.多くの AERD で投与可能
ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることがある(わずかな COX-1 阻害)
特に④~⑥は安全性が高い
①PL 顆粒*(アセトアミノフェン*などを含有)
②アセトアミノフェン*1 回 300mg 以下
③NSAIDs を含まずサリチル酸を主成分とした湿布(MS 冷シップ)
④選択性の高い COX-2 阻害薬 エトドラク*、メロキシカム*(高用量で COX-1 阻害あり)
⑤選択的 COX-2 阻害薬(セレコキシブ*、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
⑥塩基性消炎薬(チアラミド塩酸塩*など、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
2.安全
喘息の悪化は認めない(COX-1 阻害作用なし)
①モルフィン、ペンタゾシン
②非エステル型ステロイド薬(内服ステロイド薬)
③漢方薬(地竜、葛根湯など)
④その他、鎮痙薬、抗菌薬、局所麻酔薬など、添加物のない一般薬はすべて使用可能
*:添付文書では、アスピリン喘息において禁忌とされている薬剤。ただし、禁忌とされた薬剤でも医学的根拠に乏しい場合もある(例:セレコキシブ)
ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることがある(わずかな COX-1 阻害)
特に④~⑥は安全性が高い
①PL 顆粒*(アセトアミノフェン*などを含有)
②アセトアミノフェン*1 回 300mg 以下
③NSAIDs を含まずサリチル酸を主成分とした湿布(MS 冷シップ)
④選択性の高い COX-2 阻害薬 エトドラク*、メロキシカム*(高用量で COX-1 阻害あり)
⑤選択的 COX-2 阻害薬(セレコキシブ*、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
⑥塩基性消炎薬(チアラミド塩酸塩*など、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
2.安全
喘息の悪化は認めない(COX-1 阻害作用なし)
①モルフィン、ペンタゾシン
②非エステル型ステロイド薬(内服ステロイド薬)
③漢方薬(地竜、葛根湯など)
④その他、鎮痙薬、抗菌薬、局所麻酔薬など、添加物のない一般薬はすべて使用可能
*:添付文書では、アスピリン喘息において禁忌とされている薬剤。ただし、禁忌とされた薬剤でも医学的根拠に乏しい場合もある(例:セレコキシブ)