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2012年3月13日火曜日

なぜ、予防接種は筋肉注射しないのか



筋肉は、免疫を担当する遊走細胞であるリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、アレルギーを誘発する様々な細胞の分布が他の部位に比べて極端に少ないのが特徴です。したがって、抗原がそれらの細胞に接触するには一定の時間を要することになります。この特性を利用したのが筋肉注射です。安全性と有効性を併せ持っています。注射部位は腕の上、太もも、おしりです。ワクチンの種類により接種部位が選ばれます。炎症反応が強いワクチンの場合は、太ももやおしりが安全に接種できます。

筋肉注射に適したワクチンはB型肝炎ワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス:子宮頸がん予防ワクチン)、H5N1インフルエンザ、肺炎球菌ワクチン、4種、5種、6種混合、γグロブリンです。沈降、懸濁、特殊蛋白製剤が該当します。

筋肉注射は乳幼児には最も安全な接種方法です。その理由は、おしりの筋肉は運動に関係しないため、他の運動筋より炎症反応が発生した場合日常生活への影響を最小限に抑えることができるからです。

日本ではかつて筋肉注射により筋萎縮症という副反応が多発して社会現象になりました。当時は、熱が出たらすぐクロラムフェニコールとスルピリンを混ぜて筋肉注射をしていました。時代のツケがワクチンの筋肉注射を敬遠する流れにしています。しかし、前出のクロラムフェニコールやスルピリンは化学物質、ワクチンは生物製剤であり同列に語ることはできません。化学物質と生物製剤では筋肉に与える障害に違いがあります。海外において3種混合ワクチンを皮下に接種している国は多くありません。

乳児の皮下組織は薄く、「皮下深く」接種するなど無理です。極めて非科学的な医療行為と言わざるを得ません。ワクチンは基本的に微生物を材料にして製造されています。人体も細胞の集まりであり、ワクチンは人体組織と基本的にpHや浸透圧など生物学的な環境に差はなく安全性を考慮して製造されています。つまり、ワクチンが筋肉組織を破壊することはありえないのです。

A型肝炎、B型肝炎ワクチンは筋肉注射のほうが皮下注射よりも抗体産生が良好であるというデータも有ります。



【参考】
堺 春美:日本医師会雑誌 123 :837,2000.
ワクチン接種のリスクマネージメント―ワクチンの安全性と皮下注射の手技―
http://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/12306/pdf/23060837.pdf