ページ

2012年3月14日水曜日

予防接種の後は揉む?揉まない?



予防接種の注射箇所を揉む必要はありません。

ほとんどのワクチンが1回接種量1mLで行われていた時代がありました。皮下注射で1mL接種すると当然皮膚の盛り上がりが発生します。その盛り上がりを散らす目的で局所を強く揉んでいました。

最近ではワクチンの接種量は0.25~0.5mLに改められました。また、ワクチンの品質が格段に向上している現在において注射局所を揉みほぐす必要はなくなりました。特に沈降ワクチンは、接種箇所の組織にとどまっておかなければならず、揉むことで抗原が拡散してしまいます。遅延型アレルギー反応が起きた場合発赤や腫れなどの炎症反応が拡大することになります。

また、赤ちゃんは皮膚や筋肉組織が大人ほどしっかりしていないため脆く、揉むという乱暴な物理的刺激によって障害が起きる恐れがあります。そのため注射箇所を揉むことは百害あって一利なしです。




2012年3月13日火曜日

なぜ、予防接種は筋肉注射しないのか



筋肉は、免疫を担当する遊走細胞であるリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、アレルギーを誘発する様々な細胞の分布が他の部位に比べて極端に少ないのが特徴です。したがって、抗原がそれらの細胞に接触するには一定の時間を要することになります。この特性を利用したのが筋肉注射です。安全性と有効性を併せ持っています。注射部位は腕の上、太もも、おしりです。ワクチンの種類により接種部位が選ばれます。炎症反応が強いワクチンの場合は、太ももやおしりが安全に接種できます。

筋肉注射に適したワクチンはB型肝炎ワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス:子宮頸がん予防ワクチン)、H5N1インフルエンザ、肺炎球菌ワクチン、4種、5種、6種混合、γグロブリンです。沈降、懸濁、特殊蛋白製剤が該当します。

筋肉注射は乳幼児には最も安全な接種方法です。その理由は、おしりの筋肉は運動に関係しないため、他の運動筋より炎症反応が発生した場合日常生活への影響を最小限に抑えることができるからです。

日本ではかつて筋肉注射により筋萎縮症という副反応が多発して社会現象になりました。当時は、熱が出たらすぐクロラムフェニコールとスルピリンを混ぜて筋肉注射をしていました。時代のツケがワクチンの筋肉注射を敬遠する流れにしています。しかし、前出のクロラムフェニコールやスルピリンは化学物質、ワクチンは生物製剤であり同列に語ることはできません。化学物質と生物製剤では筋肉に与える障害に違いがあります。海外において3種混合ワクチンを皮下に接種している国は多くありません。

乳児の皮下組織は薄く、「皮下深く」接種するなど無理です。極めて非科学的な医療行為と言わざるを得ません。ワクチンは基本的に微生物を材料にして製造されています。人体も細胞の集まりであり、ワクチンは人体組織と基本的にpHや浸透圧など生物学的な環境に差はなく安全性を考慮して製造されています。つまり、ワクチンが筋肉組織を破壊することはありえないのです。

A型肝炎、B型肝炎ワクチンは筋肉注射のほうが皮下注射よりも抗体産生が良好であるというデータも有ります。



【参考】
堺 春美:日本医師会雑誌 123 :837,2000.
ワクチン接種のリスクマネージメント―ワクチンの安全性と皮下注射の手技―
http://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/12306/pdf/23060837.pdf



2012年3月12日月曜日

ワクチンの皮下注射



皮下注射


よく利用される接種方法です。ワクチンの種類、年齢で接種する箇所を選びます。接種する箇所は腕の上側の外、三頭筋の外側が比較的安全だと言われています。

皮下注射に適しているワクチンは生ワクチン(麻しん、風疹、おたふくかぜ、水痘)と不活化ワクチン(インフルエンザ、日本脳炎、A型肝炎、ポリオ)です。

生ワクチンの感染標的細胞は主にリンパ球、樹状突起細胞、マクロファージなどの遊走細胞なので、抗原が局所に留まる必要がなく局所反応もほとんど発生しません。

不活化ワクチンは感染性が無いため、受動的に樹状突起細胞、マクロファージに取り込まれるまでに時間がかかります。けれど、安全性は高いです。ウイルスに対する免疫を十分獲得するためには複数回接種をしなくてはなりません。

接種の痛みを減らすために注射針は26G以上のものを使います。
液量が0.25mLの場合は正確な液量を接種するためにツベルクリン用のシリンジを使います。


はじめての注射と採血 (はじめてのシリーズ)
大阪労災病院看護部
メディカ出版
売り上げランキング: 113,934