ダビガトラン第三相試験の結果によれば、ダビガトラン150mg1日2回投与と110mg1日2回投与における大出血の年間発現率は、抗血小板薬を併用しない場合と比較して、アスピリン併用時やアスピリンとクロピドグレル併用時に上昇していました。
Eikelboom J W et al. Circulation 2011;123:2363-2372.
https://circ.ahajournals.org/content/123/21/2363.full.pdf
ダビガトランの市販直後調査の結果でも重篤な出血性合併症を発症した139例中38例が抗血小板薬を併用していたという報告があります。
プラザキサカプセル市販直後調査最終報告2011年11月
http://www.bij-kusuri.jp/information/attach/pdf/pxa_cap_info_201111.pdf
やはり
抗凝固薬と抗血小板薬の併用は出血性合併症を増加させるみたいです。
この場合の対応を考えてみましょう。
1.用量を選択を考えてみましょう。
ダビガトランには2用量が準備されています。ガイドラインによれば、まず通常用量を考慮して
・年齢70歳以上、
・消化管出血の病気にかかったことがあるひと
・中等度腎機能障害の人
・ベラパミルやアミオダロン(P糖タンパク阻害薬)を併用している人
この4つのうちいずれか一つに当てはまる人は低用量が推奨されます。
2.抗血小板薬を減らすか中止するのはどうか。
アスピリンとワルファリンの脳梗塞予防効果を調べた研究(WARSS研究、WASID研究)では、脳梗塞予防効果に差はないようです。この研究結果は抗血小板薬の代わりを抗凝固療法で代替できる
可能性を示しています。
Mohr Jp, et al : N Engl J Med. 2001 Nov 15;345(20):1444-51.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa011258
Chimowitz Ml, et al : N Engl J Med 2005; 352:1305-1316
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa043033
冠動脈ステント装着例で心房細動に対する抗凝固療法を行う場合、抗血小板薬を永続的に使う方法に代えて、症例のリスクごとに2~1年間併用し、以降は抗凝固療法のみで管理する方法もヨーロッパ心臓病学会から提案されています。
3.ダビガトランを使わないのもひとつの方法かもしれない。
低用量のダビガトランでも出血性合併症を避けられない場合は、用量調節が可能なワルファリンにしてもらうのもいいかもしれない。
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