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2011年6月14日火曜日

国内未承認ワクチンの使用は法的に問題があるか



日本は諸外国に比べるとワクチン後進国といわざるを得ません。

経鼻インフルエンザワクチンなど、海外では普通に使用されているワクチンが日本では認可されていないために流通していません。

入手するには外国からの個人輸入しかありません。


医師による個人輸入によって得られたワクチンを接種することの法的な問題はあるのでしょうか。

医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器は人の健康や身体等に直接影響をおよぼすものであることから、その品質、有効性および安全性について科学的データ等に基づいて確認がなされた製品だけが国内で流通するよう薬事法によって厳しく規制されています。

しかし、憲法第13条における幸福追求権・自己決定権により公共の福祉に反しない範囲で輸入医薬品も厳しい管理の上で例外的に利用できるような規定が置かれています。

関税法第70条1項では医薬品の輸入について扱いが定められています。

1)
一般の個人が輸入することができるのは自分自身で使用する場合に限られています。

外国で受けた薬物治療を継続する必要がある場合や、海外からの旅行者が常備薬として携行する場合などへの配慮によるものです。

個人輸入には、原則として、地方厚生局に必要書類を提出し、薬事法に違反する医薬品でないことの証明を受ける必要があります。

例外的に「税関限りの確認」で通関することができるようになっています。

自己判断で使用すると重大な健康被害を生じるおそれがある医薬品は、数量にかかわらず医師による処方が確認できない限り、一般の個人による輸入は認められません。


2)
医師または歯科医師が患者の診断治療のために医薬品を輸入する場合、または臨床研究のために輸入する場合。

輸入された医薬品が営業目的ではないこと。

薬事法に違反しないこと。

これらを地方厚生局薬事監視専門官が確認し「厚生労働省確認済み」の印を押印した厚生労働省確認済み輸入報告書である「薬監証明」の提示が必要とされています。

薬監証明の取得のためには、「輸入報告書」「念書」「商品説明書」「医師の証明書(処方箋等)」「医師または歯科医師免許症のコピー」「必要理由書」「試験計画研究計画書」等の書類の提出を求められます。

正当な手続きで、入手したワクチンを正当な方法で接種する限りにおいては、何ら違法性はないといえます。


しかし、問題なのは法的な問題ではなく、副作用救済についてでしょう。

個人輸入された医薬品を用いて行われた診療については、健康被害救済制度による保証を受けることができません。

リスクを十分に理解した上で利用しなくてはなりません。



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2011年6月9日木曜日

メタボリックシンドローム、糖尿病の効果的な生活指導



メタボリックシンドロームの患者さんや糖尿病の患者さんで生活指導などアドバイスをしても聞く耳を持たず、いったん聞き入れても長続きしない方が多くいらっしゃいます。

何か効果的な指導方法などあるのでしょうか。


「やって見せて 言って聞かせて やらせてみて ほめてやらねば 人は動かず」


山本五十六の有名な言葉に込められた「モデリング」という手法が1つのヒントになるかもしれません。

モデルは、うまく行動変容された職場の同僚や友人、家族がよいでしょう。やる気が無い人でも上司や同僚など周りの変貌には影響されてしまいます。

「あいつにできておれにできないわけがない」理論です。

だれか、メタボや糖尿病を克服したひとが近くの人に言って聞かせて、やらせてみて、褒めてもらうのが一番の解決方法かも知れません。


そんな都合のいい人は見つからないので、もう少し考えてみます。。。


まず、運動療法や食事療法が長続きしない原因は何なのでしょうか。

1.自分自身がやりたいことをやっていない。
2.続けるべきと納得していない。
3.技術的にも能力的にも無理がある。

これらのうち一つでも当てはまると長続きは難しいでしょう。

逆に考えるとやりたいことをやってみて、うまくいくことを確認し、更にやり続けることを納得し、技術的に最適化されたものを考えればうまくいくということです。

”やる気”=目標の魅力✕危機感✕達成可能性

上の式が成り立ちます。

さらに”やる気”につながる3つの欲求は
①人に支配されたくない
②結果がわかる・褒められる
③人と関わっていたい
というものです。

Deci El, et al.,  Penguin, USA, 1996.
Why We Do What We Do: Understanding Self-Motivation


”やる気”を醸成させるために
①自分で決める・多くの中から選ぶ
②結果がわかる・褒められる
③周りから応援される・支えられる
という工夫を盛り込んで生活習慣の改善を指導してみたい。

しかし、”やる気”を促進する工夫を盛り込んでも、やみくもにやらせるのではうまくいかないでしょう。

そこで「ステージ別アプローチ」を考えてみる。

ステージ別アプローチとは

(1)前熟考期(始めるつもりはない)
(2)熟考期(始めるつもりだが迷っている)
(3)準備期(すぐ始めるつもり)
(4)行動期
(5)維持期

の5つのステージに分けて対応する考え方です。

Prochaska, J. O., W. F. Velicer, et al. (1988). "Measuring processes of change: Applications to the cessation of smoking." Journal of Consulting and Clinical Psychology 56(4): 520-528.

ポイントは、前熟考期、熟考期レベルの段階ではあせらず、指導しないことです。

寄り添い、強固な人間関係を構築するために注力することです。

否定的な言葉は避ける。

そして、問題を患者さん自身で引き取れるまでじっと待ち続けることです。

準備期まで待ち、はじめて生活習慣の改善について触れ、決断を患者本人に委ねます。

その際、小さな現実的な行動変化を目標に立て、実行期には段階的に達成感を味わえるようにします。


最後にオススメの本を紹介します。
「他者の気持ちは”動かす”ものではなく、身体とこころの診療を通じて、それが”動き出す”のを見守り続け、付き合い続けること」


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2011年6月1日水曜日

子どもを守るワクチン



VPDという言葉を知っていますか?

毎年、世界では約一億人の子どもが誕生しています。
その70%は必要な予防接種を受け、約200万人が、
破傷風、百日咳、麻しんなどの病気によってなくなるのを防いでいます。

しかし、その一方で世界の5歳未満の子どものうち、
毎年250万人がワクチンで予防できる病気で亡くなっているというデータも有ります。

最近では、
日本でも「VPD(vaccine preventable diseases)」という言葉がきかれるようになってきました。
つまり、ワクチンの接種を受けることで避けられる病気が注目され、
新しいワクチンが使用されるようになっています。


1948年に予防接種法が制定された当時は、
予防接種法で定められたワクチンを接種することは国民の義務とされ、
罰則付きの義務接種でした。


その後、ワクチン接種後の有害事象はほとんどワクチンによる副反応だと考えられました。
訴訟などの紛争を繰り返し、予防接種に対する国民の不信感が増大しました。

しかし、実はワクチンが原因ではなかったことが後になってわかったものがあります。

けれども、その不信感は払拭せず国は1976年に罰則を廃止し、
1994年には義務接種を廃止しました。
そして、接種対象者の努力規定とそれに対応した市町村等の行政による
積極的な勧奨扱いとしました。

現在の予防接種法では「受けるよう努めなければならない」という努力義務となっています。
最終的には個人の判断で決める時点で任意接種と変わりはありません。
違いといえば金銭的負担が自治体等から補助が出る点です。


また、予防接種の副反応に対する世間の関心は高く、繰り返しマスコミで報道されます。
その結果、あたかもそのワクチンが危険であるかのようなイメージを持たれ、
混乱を招いています。


お子さんをお持ちのお母さんへ

●ワクチンで防ぐことができる病気があります。ワクチンの存在を両親や家族が知らなかったために、ワクチンを接種されず、病気にかかってしまい命を落としたり思い後遺障害が残ったりする子どもたちが、日本では後を絶ちません。
●国民一人ひとりがワクチンの効果と副半のをよく知った上で、ワクチン接種に積極的になれるように理解する必要があります。
●定期接種は市町村などが費用を負担し無料(一部負担がある場合あり)で受けられます。任意接種は接種費用を全額自己負担しなければなりません。そのため、任意接種は「受けなくてもいい」という考になりがちですが、それは危険な思い込みです。
●乳幼児期に接種するワクチンのうち、定期接種は母子手帳に書かれています。任意接種は行政からは十分に情報提供がなされないことも多いです。しかし、受け身にならず子どもを守るために自分から調べることも必要です。小児科の先生に尋ねたり、「VPDを知って、子どもをまもろう会」のホームページで調べましょう。
http://www.know-vpd.jp/index.php